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新入社員研修でこれだけは教えるべき3つのこと

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「即戦力に育てたいというお気持ちは分かります。でもコンテナやサーバーレス、IoTやAIについて何も教えず、それでお客様との話題についてゆけるのでしょうか?」

新入社員がはじまり研修担当の皆さんは奔走されているだろうが、こういう最新のトレンドについては、ぽっこりと穴が空いている企業が少なくない。特に、営業職採用の新入社員については、ほとんどがこのようなテーマに触れる機会がないままに現場に送り出されている。

「そんなことは、現場に出て自分で勉強すればいいんですよ。」

確かに、テクノロジーの変遷は、留まることはない。当然、自助努力は必要だが、ゼロから100を自助努力に期待するというのは、いかがなものか。また、どうやって「自助努力」すれば良いかを伝え、道筋を示すことも大切だ。

「情報処理の基礎は教えている。」

コンピューターを構成する五大装置、処理の流れ、コンピューターの結合と処理方式、データベースの仕組みなど、新しいことを学ぶにしても基礎知識は大切だ。しかし、多くがここで終わっている。40年前の常識といまの最新テクノロジートとのギャップがあまりにも大きく、それを「自助努力」だけで埋めろというのは、少々無理がある。

「現場で先輩達から教えさせています。」

自分の担当する仕事の範疇ならうまくいくかもしれない。しかし、ITビジネスの実相は、いま大きく変わり始めている。担当している商材や彼らのやり方だけで、新しいビジネスを切り開いて行けるとはとても思えない。むしろ過去の成功のバイアスに新人達が翻弄され、自助努力の道筋を見誤ることも危惧される。

なにも先輩達に期待しても無駄だというのではなく、誰の下で働くによるばらつきが出てしまうことが問題だ。本来、新入社員研修とは、現場実践に必要な基礎的な知識や能力の一定の底上げを図ることのはずだ。「先輩に任せる」とはその大切な部分を放棄するということになる。また、先輩達も新しいトレンドについて行けず、教えることができない。

では、どうすればいいのだろう。

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トレンドを学ぶことの意義や価値を理解させる

「営業は、お客様の3年後に責任を持たなければなりません。」

新入社員に、私が必ず伝えるメッセージだ。

「あなたが提案し採用されれば、そのシステムは、最低でも3年は使い続けられるでしょう。そのときにもちゃんと役割を果たし、時代に取り残されていないシステムを提供しなければなりません。あなたたちがこの仕事に就く以上、その責任を負うことになるのです。」

目先の利益や時代遅れのシステムを提案すれば、いずれはお客様にそっぽを向かれる。そうならないためには、テクノロジーのトレンドを理解しておかなくてはならない。

「トレンド(trend)」という英語には、「時流」という日本語がふさわしい。ディスプレイに並ぶITのキーワードを脳みそにコピペして並べることではない。なぜそのキーワードが生まれ、注目され、どのようにつながり、どこへ向かうのかといった「流れ」が「トレンド」だ。この流れが分かれば、いまと未来が見えてくる。それを分かって提案するかしないかは大違いだ。

こういう知識の土台が、お客様の信頼を育てる。「すぐにやる」、「何でもやる」、「正確に間違えなくやる」ことも大切だが、それだけしかできない営業など「ただの良い営業」に過ぎない。

「あのひとは良い人なんだけど、未来を託す相談なんてできないよ。」

そんなことをお客様に言われてしまっては、大きな仕事など任せてもらえない。大きな仕事は、大きなプライドだが、それは同時に大きな責任をともなう。それを成功させる努力も並大抵なことではない。だからこそ、成長のチャンスだ。トレンドを理解できていなければ、そのきっかけさえつかめない。

体系的な最新トレンド研修を実施する

五大装置や処理の流れ、処理方式など、基礎を学ばせることは大切なことだが、その一連の基礎的要素が、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスにどのように実装されているのか。POS端末、ATM端末、彼らが普段使っているノートPCにどのように実装されているのか。その先にある量子コンピュータやニューロモーフィックとの関係についてもそろそろ知っておくべきだろう。

Gmail、Amazonや楽天のECサービス、チケットやホテルの予約システム、InstagramやTikTokを使うのは彼らの日常だ。こんな日常に結びつけてクラウドの話をすれば、彼らは実感として理解できるはずだ。

「実感」のない提案に説得力はない。例えば、運転免許も持たず、運転できない自動車ディラーの営業が、お客様に「是非、買いたい」と言わせることができないように、ITもまた「実感」がなければ、自分達のこれからやろうという仕事に「実感」や「期待」を持つことはできない。

また、彼らがすぐに接するであろう「仮想化」とは何か、そして、仮想化とコンテナとクラウドとの関係、IoTとAIの関係を知らないままで、現場でお客様と会話ができるのだろうか。

詳細に説明することはできなくても、「何のことを言っているのか」が分からなければ、お客様と応対することは難しい。それより心配なのは、お客様に会うことを「怖い」と思ってしまうことだ。冗談のような話だが、お客様に行けと言われていってみたものの、何を話しているのか分からないままに、だんだん営業という仕事が怖くなり「社内ひきこもり」になっているという新人に会ったことがある。

不安になり、何とかしようとガンバって自分で勉強しようという人が大半だが、そういう彼らになんの武器も与えず、丸裸で前線に送り込むようでは、即戦力化は到底かなわない。

「俯瞰的」、「体系的」、「歴史的」にトレンドについて伝えることだ。特に歴史は大切だ。新しいテクノロジーが生まれてきた背景には、歴史がある。その歴史の先に未来がある。いまをその中に位置付けてこそ、そのテクノロジーがビジネスにどのような価値を与えるのかが理解できる。

人は知識を断片として記憶にとどめることはできない。「俯瞰的」、「体系的」、「歴史的」に物語を構成して、そこに位置付けることで記憶を作ることができる。トレンドはそういう物語でもある。

「クラウド」や「仮想化」などのキーワードについての辞書のような解説に終始し、物語を伝えない研修でほんとうに受講者は理解できるのだろうか。「やった」という事実だけのために講師料を払っているようでは受講者も可哀想だ。

「学び方」を教える

「朝の1時間、始業前に自分の時間を作りなさい。会社でも良い、近所のカフェでも構いません。誰にも邪魔されず勉強できる場所と時間を作ることです。そこで何を勉強するかを先に考えるのではなく、まずは時間と場をつくること。それが、いずれ大きな自分の財産になることに気付くと思いますよ。だまされたと思って、実行してみて下さい。朝のゴールデンタイムを作って下さい。」

私が、新入社員研修で必ず伝えているメッセージだ。想いからではなくカタチから入れと伝えている。

先日、5年前に新入社員研修を受け持った営業と話をする機会があった。彼は、それをずっと実行してきたそうだ。そして、その意味がいまやっと分かったと話していた。

トレンドを勉強するのにどんな本を読めば良いか、どの雑誌を購読すべきか、どのサイトを見れば良いかといった質問をうけることがあるが、これに応えることは容易なことではない。例えば、GitHubの使い方について詳しく知りたいというのであれば、答えようもある。しかし、漠然と「どの本を読めば良いのか」に答えはない。大切なことは、どうやって学ぶべきテーマを見つけ、どのように学ぶのかのやり方を教えることだ。何を学ぶかではなく、どう学ぶかの術として、私は「朝のゴールデンタイム」を進めている。

「毎朝1時間勉強のために時間を取れば、毎週1日研修を受けているのと同じ。これを4年半続ければ、2年間の大学院に通ったことと変わらない勉強時間が確保できます。」

その時々の正解が数年で陳腐化する時代にあって、「学び方」を若い時代に学べるかどうかが、社会格差を広げてゆく。そのことを彼らに教えることは、大人である私たちの責任だろう。

「無駄なことをしたくありません。効率よく勉強したいので、どうやって学ぶかを教えて欲しい。」

原理原則をしっかりと丁寧に学ぶことだろう。テクノロジーについてもそうだが、真善美について学ぶことも大切だ。新しいことはそういう普遍的な知識の土台の上に築かれる。だから、新しいことが出てきても容易に理解できるようになる。そのためにも時間が必要だ。阿知のゴールデンタイムはその解決策の1つだと思っている。

また、いろいろなコミュニティや勉強会に参加し、経験や知恵のある人とつながることも役に立つ。新しいことに取り組み、時代を先取りする人たちとつながることは、自分の感性を磨き、学びへの意欲を高めてくれる。

いずれにしろ、何を学ぶかではなく、学ぶ習慣や機会の大切さ、そしてその実践のノウハウを伝えることだろう。

いまこの業界は、大きなテクノロジーのパラダイムシフトの只中にある。それは、同時にビジネスのパラダイムシフトと相まって、新しい常識を模索している。そんな業界に飛び込んでくる新人達に古い常識だけを与え、これまでの常識に縛り付けるのはいかがなものだろう。自分達の役割をしっかりと悟らせ、新しいこと学ぶことに興味や喜びを感じ、学び方を学び、自らも自助努力を惜しまない、そんな人材に育ててゆくための取り組みが、新入社員研修には必要ではないだろうか。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

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【新規】リーダーシップの在り方を見直す時代 p.182
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