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【図解】コレ1枚でわかるポストSIビジネスの2つのステージ

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昨日の記事で、AIの発展と普及がSIビジネスの崩壊を使っての招くことについて述べましたが、この状況にITベンダー/SI事業者は、どう対処すればいいのでしょうか。

ITベンダー/SI事業者の戦略:ステージ1

移行期における状況です。これまで、外注に依存してきたユーザー企業は、容易に外注を辞めることはできません。しかし、元請には、コスト削減の圧力はかかり続けます。また、開発テーマも増え続けます。この両者を取り込んで、ユーザーの期待に応えようとすると、元請の事業者は、下請けへの工数を減らすしかありません。そのためのツールとして、AI開発ツールは使われるようになるでしょう。結果として、SES(工数提供サービス)の仕事は減少します。

しかし、ここに大きな課題があります。それは、元請に「プログラムを書けるエンジニアがいない」という現実です。そうなると、これまで下請けに甘んじていた事業者は、その経験値を活かし、積極的にAIツールを使って開発生産性を高めれば、低コスト、高品質、高速開発をウリにして、直接ユーザー企業を顧客に取り込むチャンスとなるかも知れません。

生成AIツールを使えば、開発の生産性は高まりますが、あくまで「支援者」の役割であり、いまの段階で使いこなすには、「プログラムを書ける」人間がいることが前提です。この前提を満たすことができない元請は、ユーザー企業の期待に応えられず、チャンスを逃してしまうことも考えられます。ここに、下請けが元請になれる下剋上のチャンスがあるかも知れません。

ただし、顧客であるユーザー企業のニーズを的確に掴み、事業戦略に踏み込んだ提案ができるスキルが求められます。これまでは、このような業務を元請に任せていたわけで、これを自らできる能力を磨く必要があり、そのための人材の育成やマーケティング/営業の施策を考え直す必要があるでしょう。

しかし、これは初期段階であり、次のステージ2では、ユーザー企業の内製化の拡大を前提に、根本的な事業の変革が求められることになるはずです。

ITベンダー/SI事業者の戦略:ステージ2

「事業目的を達成するための手段であるITシステムの構築をなくす」

生成AIを搭載したシステム開発ツールは、この「あるべき姿」を目指して、機能の進化を続けていくでしょう。

GitHub Copilot Workspaceの発表でも述べられていることですが、「こんなことをしたい」と言えば(つまりIssueを設定すれば)、システムが自動生成される時代を迎えつつあります。

これは、システム開発の生産が高まるとか、人手によるコード生成が不要になるという話しに留まりません。もっと根本的な変化をもたらすことになります。それは、「長期継続的に使うことを前提にシステムを作り、そのシステムを維持するためにメンテナンスを必要とする」という、これまでの常識の崩壊です。

「その時々に必要なシステムを作り、変更や新たなニーズが生じたなら、既存のシステムを捨てて、新しく作り直す」

物理的実態ないソフトウエアです。コード(記号)の集合体であるプログラムは、作っては壊しを繰り返しても産業廃棄物が増えるわけではありません。しかし、これまでであれば、ソフトウエアを作るのには、相応の時間も、手間も、コストもかかるため、「作っては壊しを繰り返す」ことは現実的ではなく、会計上も無形固定資産として資産計上され、手間を掛けてメンテナンスすることが当たり前と考えられています。

しかし、生成AIの登場により、この常識が変わります。具体的には、次のような手順です。

  • マイクロサービス・アーキテクチャーを前提に、自分たちの業務に特化したサービス(システムを構成する機能部品)を予め用意しておく。
  • マイクロ・サービスは、品質保証され、コンプライアンス規程にも準拠したサービスとして用意される。
  • これらを生成AIによって、Issueに従って組合せ、構成すれば、業務に必要なITサービスを容易に実装できる。ここで言うサービスとは、必ずしも自分たちが作ったものばかりではなく、クラウド・サービスで提供されるAPIもまた対象となる。

ユーザーが求めているのは、「ITシステムを作る」ことではありません。自分たちの事業課題を解決する「ITサービスを使う」ことです。

事業課題とその解決策を一番よく知っているのは、ユーザー自身であるとすれば、ユーザーが自らIsseuを設定するのが一番良いわけです。それができる仕組みが登場したのです。

ユーザーが自分で、ITサービスを思い通りに実装でき、いらなくなったらそれを捨てて、直ぐに作り変えることができるようになろうとしています。それができるのなら、ITシステムを専門家に任せて作ってもらう必要はなくなります。まさに「ITシステムを作る」という、ITベンダーやSI事業者の事業の前提が、なくなるわけです。

このような仕組みを実現するには、マイロサービスに長けたエンジニアが必要です。すなわち、DDD(ドメイン駆動設計)CICD(継続的インテーグレーション・継続的デリバリー)、インフラ仮想化、自動化、アジャイル開発プロセス、といったさまざまな分野の技術や方法論を組み合わせるスキルが必要です。

ただ、大人数である必要はありません。それができる一握りの精鋭さえいれば、事足ります。そういう精鋭チームをユーザー企業が持ち、ユーザーのニーズに応えられる環境を整備すればいいのです。これまでの「ITシステムを作る」ビジネスの前提となっていた人海戦術の必要はなくなります。つまり、工数需要が、消滅するということです。

行き着くところ、「普通にそこそこできる大勢のプログラマー」は必要なくなり、上記スキルを駆使できる「モダンITに長けた高いスキルを持つ少数精鋭のプログラマー」以外、生き残ることができないということになるでしょう。これは同時に、人月積算を増やすことが、事業目的となっている企業の存在意義がなくなることを意味します。

【募集開始】次期・ITソリューション塾・第46期(2024年5月15日[水]開講)

ChatGPTをはじめとした生成AIの登場から、わずか1年半で、IT界隈の常識が一気に変わってしまいました。インターネットやスマートフォンの登場により、私たちの日常が大きく変わってしまったことに匹敵する、大きな変化です。いま社会は大きな転換点を迎えています。

システムの開発や運用、さらには様々なシスカテム案件が、「AI前提」となりつつあります。これに対処できるかどうかが、企業や個人を問わず、格差につながっていくことは、紛れもない現実です。ITベンダー/SI事業者の皆さんにとっては、これまでのビジネスの前提が失われ、既存の延長線上で事業を継続することは、難しくなるでしょう。また、ユーザー企業の皆さんにとっては、内製化を加速させるチャンスが到来したとも言えるでしょう。

ITに関わる仕事をしている人たちは、この変化の背景にあるテクノロジーの進化を正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。

ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
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今年で8年目を迎える恒例の"新入社員のための「1日研修/1万円」"の募集を始めました。

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これからの営業の役割や仕事の進め方を学び、磨くべきスキルを考える

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AIやテクノロジーに任せるべきことはしっかりと任せ、人間の営業として何をすべきか、そのためにいかなる知識やスキルを身につけるべきなのか。そんな、これからの営業の基本を学びます。また、営業という仕事のやり甲斐や醍醐味についても、考えてもらえる機会を提供致します。

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