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「人間力」と「仕事力」

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「貴社のホームページを拝見した際に、ITソリューション塾を知りまして、途中からではありますが、ぜひ参加させていただきたくメールいたしました。」

彼は今年入社したばかりの新入社員だった。新入社員には少々ハードルが高い内容でもあるので、私はまずは見学に来るように誘った。そして、見学に来た彼に講義終了後、難しかったかどうかを尋ねた。

「難しかったですが、なんとかついてゆけるように頑張ります!」

ノーベル文学賞受賞者でアイルランドの詩人であるウィリアム・バトラー・イェーツは次のように語っている。

「教育とは、バケツを水で一杯にすることではなく、火をつけて、燃やしてやることだ」

教育とは知識を詰め込むことではなく、学びたいという意欲を持たせてあげることだと説いている。

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どんなに知識を学ぶ機会を与えても、本人に探究心や向上心といった「人間力」が備わっていなければ、知識や能力は、「仕事力」には結びつかない。この人間力をどのように高め、引き出してゆくかが、人材育成のカギとなる。

しかし、「人間力」なるものは、抽象的で主観的なものであり、これを評価するのは容易ではない。評価のできないものはコントロールできず、育成の方法論を議論することもできない。このジレンマに行き詰まってしまう。

簡単に出せる答えではないが、それを考えること自体に、私たちは改めて「人間力」とは何かを考える機会を与えられる。

イェーツが語るように「火をつけて、燃やす」ために、いったい何ができるのだろう。それには3つ原則があるように思う。

知らないこと、足りないことに気付かせる

危機感や不足感を満たそうという欲求は、だれにもある。自分に何が足りないのか、このままでは、自分は成長できない。その思いが強ければ強いほど、炎は大きく燃え上がる。

自分の能力を客観的な指標で評価し、他者と比較すること。仕事の手順や業績を見える化し、現状を客観視することなどは、気付きを与える一つの手段となる。また、対話することだ。対話の中で教えるのではなく気付かせるのだ。そうやって自分自身で自分を整理し、客観視する機会を与える。

やらせてみて、体感させる

本人が「このままではまずいぞ」と気付いたとしても、それは限られた知識や経験の中の「想像」でしかない。本当にそうなのかを検証させてみることだ。とにかくやってみる。体感し、「想像」を「実感」に変えることで、初めて人はその知識や能力を手に入れる。失敗もあるが、その失敗から学ぶことも多い。

セーフティ・ネットを用意する

「失敗しても助けともらえる」を前提としてチャレンジさせる。それが成長の原動力になる。もちろん本人は成功のために全力で努力するわけだが、例えそれが失敗しても助けてもらえるセーフティネットを与えてあげることで、本人は全力を出し切ることができる。

最近は、過剰なコンプライアンス意識の高まりの中で、「失敗は許されない。あってはいけない」を前提とした組織もある。確かにコンプライアンスは大切だが、過剰な抑制は成長の芽を摘む。それよりも、何かあったら誰かが助けてくれる、相談できる、そんな風通しの良い組織を作ることのほうが、はるかに能力を高める機会を与えられる。

このセーフティネットがあれば、相談を厭うことはない。そうすれば失敗も小さなうちに表に出てくるので大過に至ることはない。そして、それもまた学びの機会になる。

私たちは、時にして知識やスキルを教えることで個人の能力が高まると考えてしまいがちだ。しかし、教えることは、目的ではなく手段であるということを思い返す必要がある。

教えるという手段を通し、自分に何が足りないのかに気付くこと。その不足感と危機感が、「火をつける」ことになるのだ。そして、自らの意志で学ぶことによって、成長できる実感をよろこびとして感じることが、真の目的あることに気付かなければならない。

冒頭の彼は、誰に言われたわけではなく、自分で自分に火をつけた。その炎を燃やし続け、さらに大きくしてゆくことをお手伝いすることが、私たち大人の役割なのだろうと思う。

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LiBRA 10月度版リリース====================
・新たに【総集編】2018年10月版 を掲載しました。
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【更新】もし、変わることができなければ p.16

人材開発編
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サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】モノのサービス化 p.34
【更新】モノのサービス化 p.37

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【更新】AIと人間の役割分担 p.12
【更新】自動化から自律化への進化 p.24
【更新】知的望遠鏡 p.25
【更新】人に寄り添うIT p.26
【更新】人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係 p.64
【更新】なぜいま人工知能なのか p.65

サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません

サービス&アプリケーション・開発と運用編
【新規】マイクロサービス ・アーキテクチャ p.62
【新規】マイクロサービス・アーキテクチャの6つのメリット p.63
【新規】マイクロサービス・アーキテクチャの3つの課題 p.64
【新規】FaaS(Function as a Service)の位置付け p.68

ITインフラとプラットフォーム編
【更新】Infrastructure as Code p.78
【新規】Infrastructure as Codeとこれまでの手順 p.79
【更新】5Gの3つの特徴 p.235

クラウド・コンピューティング編
【更新】クラウドの定義/サービス・モデル (Service Model) p.41
【更新】5つの必須の特徴 p.55
【新規】クラウドのメリットを活かせる4つのパターン p.57

テクノロジー・トピックス編
*変更はありません。

ITの歴史と最新のトレンド編
*変更ありません

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