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講演で"ウケ"を狙うために心がけておくべき3つのこと・昨日の続き

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昨日のブログ「講演で"ウケ"を狙うために心がけておくべき3つのこと」に次のようなコメントが寄せられた。

何で「ウケ」る必要ある?

汗まみれで汗ふきふき、たどたどしくったって、一生懸命、伝えようとすれば、聴衆もヒヤヒヤしながらも、一生懸命聴いてくれるものだと信じます。

逆に、流暢で爆笑だらけでも何もアタマに残らない講演もある。

私は、このコメントに対し、次のように反論した。

ちゃんと内容まで読んでいだけるとありがたいですね。「流暢で爆笑だらけ」がウケることではありません。物事の本質に迫る行為です。汗まみれで、たどたどしくても、その本質をおさえている講演者はウケるんです。ウケるとは、いうなれば聴衆の心を掴むことであって、流暢であることや笑いをとることでは決してありません。

これに対して、また次のような反論を頂いた。

タイトルが良くないということですね。忙しいので読まないとわからない見出しは失格です。

だって、講演会だって、見出し、タイトルで、参加者募集するわけでしょ?

内容聞かないとわからないような講演会に申し込みなんかしないですよ。

まぁ読む人にだけ伝わればいいというのであれば、講演を扱うテーマとして、どうかと思いますが。

なるほど、もっともな話だ。タイトルとは人に関心を持たせ、読もうという気持ちにさせることが目的である。その目的にかなわず、ましてやタイトルで内容を勘違いさせてしまったのは、まったくもってこちらの至らなさである。私は、この方のご指摘に感謝のコメントを返した。

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改めて、「ウケる」とはどういうことかを辞書で引いてみると、まさにご指摘の通りだった。日本語俗語辞典に次のように書かれていた。

芝居などで「(客から)拍手・喝采をうける」というが、うけるはここからきた言葉で「評判である」という意味の楽屋言葉が広まったものである。評判というのは多数の支持や評価を得ることでうけるも同様であったが、1980年代後半辺りから、自分の中で好評なものを対象に「面白い・笑える」といったニュアンスで(個人レベルの)うけるが使われるようになる。

現代的に言えば、「面白い・笑える」であり、昨日のブログのタイトルとはまったく意味を異にしている。私の反論コメントは、まったくもって的を射ていない。改めて、自分の無学を嘆くと共に、ブログが学びの機会を与えてくれること、このようにコメントを頂けたことに感謝している。

ところで、この本来の意味の「ウケる」ことだが。これもまた、私は講演に於いて大切な要素だと思っている。それは、言葉を受け取る心の余裕を相手に作るためだ。伝えたいことを丁寧に、真面目に、理路整然と語っているだけでは、聴衆は疲れてしまう。疲れは聞く耳を閉ざしてしまう。この疲れを取り除き、心に言葉を受け取る余裕を与えてあげるためには、ウケをとることは有効な手段となる。

ウケ=笑いの根底にあるのは何かという問いに対する一つの回答として、「緊張の緩和」理論というものがある。これは、かの天才落語家である、桂枝雀師匠が唱えた理論だ。彼は「緊張」を「緩和」することが、笑いを生みだすと語っている。

例えば、次のような話しだ。

「Amazonは研究開発費で年間2兆4千億円も使っています。」

この説明によって、凄いなぁと聴衆は緊張する。

「この金額は、私の年収と変わりませんよ!」

と言ってみる。どっと笑いをとることができる。

昨日、300名ほどの聴衆を前にパネル・ディスカッションに登壇した。新規事業はROIを明確にするのが難しい。だから稟議書も通すのが難しいという発言があった。会場に重苦しい空気が流れた。私は次のようにコメントした。

「そんなROIなんて、どうせ嘘でしょ。だって、新しいことをはじめようというのに、既存の基準に照らして説明できないわけですから、ROIに根拠なんかありませんよ。作っても意味がない。」

ROI、稟議書と言う言葉が、自分の現実と重なり合って会場は重苦しい緊張感を生みだしていた。そこにこんなコメントをしたので、会場は苦笑いとともに緊張がほぐれていった。

桂枝雀師匠曰く、「緊張」とは、正常ではない状態、おかしな状態を意味している。これを普通の状態に戻してあげる、つまり「緩和」するときに笑いが生まれるという。実際には、なかなか深遠な理論で、数行で書き表すことはできないが、ご興味があればこちらをご覧頂くといいだろう。

こういう笑いを講演の中に挟むことで、緊張が緩む。そうして生まれた心の余裕に、伝えたいことを投げ込むことで、その言葉を記憶に留めていただけるようになる。

ウケばかり狙い、中身がないでは、相手に共感を与えないし、ありがたくも思ってもらえない。だからといって、伝えたいことを粛々と語るだけでは、相手の心に言葉を残すことができない。「ウケる」ことで、このような状況を改善することができる。

ついでながら、「ウケる」とは、公演の演出手法のひとつであって、決して講演の内容を磨いてくれるものではないことも心しておくことが大切だろう。

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