オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

提案力が身につかないのは経営者や管理者の自覚のなさが原因だ

»

提案力を身につけさせたい

経営者や管理者がよく口にする言葉だ。

business_kaisya_pawahara_man.png

お客様の求めるものが工数や製品からサービスへと変わり、意志決定者も情報システム部門から事業部門へとシフトする。お客様の既に持っている「やって欲しいこと」を確実に自分たちの仕事にすることが営業の仕事だったが、そのほとんどが「安い仕事」であり、頑張った割には儲けが少ない。

このような状況を打開するには、お客様の「やって欲しいこと」を増やさなくちゃいけない。だから、新しいことを提案し、情報システム部門だけではなく、事業部門にもアプローチできる「提案力を身につけさせたい」となる。これは至極まっとうな思考プロセスではあるのだが、その先がいけない。

必要なことは、営業スキルの強化だと考えている人たちが実に多い。しかし、これは間違っている。何よりも大切なことは、業績評価基準を変えることだ。

例えば、AWSやAzureなどをベースに構築や開発、運用の需要を増やそうとすると、短期的には確実に売上や利益の減少が伴う。多くのお客様が未だオンプレの現状であるとすれば、クラウドへの移行は技術的な問題以上に、情報システムの役割や存在意義、あるいは、彼らのアイデンティティにも関わることであり、この感情的課題をも解決しなければならない。言うなれば、土着信仰の原住民をキリスト教に改宗させる必要があるわけで、これは価値観や生き方の問題であって、容易なことではない。

そういうことをも乗り越えて、クラウドへの移行を進めても短期的な売上と利益は減少する。加えて運用は自動化され、開発のための方法もより生産性の高い手段へと移行するので、工数需要も減少する。

一方で、営業の業績評価基準が売上と利益であるとすれば、彼らが頑張れば頑張るほど、業績の評価が下がり、出世から見放され給与やボーナスの査定が下がる。これでは、提案力を身につけたいというモチベーションは生まれない。

「これからはクラウドやサービスのビジネスを伸ばしてゆかなければならない」

経営者は檄を飛ばすが、業績基準は旧態依然のままである。このダブルスタンダードがフレッシャーとなり、さらにモチベーションを下げる。このような状況で提案力など身につくはずがない。

スキルの向上や新たなスキルの獲得は、それがなくては生きてゆけないという生存欲求と不可分だ。つまり、クラウドやサービスを売らなければ、自分は出世できないし、給与やボーナスが減ってしまうと言うので「ヤバイ、なんとか提案力を身につけなくては」という内発的動機付けがあってこそ身につくものだ。そこに取り組まずに、論理的思考力、ドキュメンテーション力、対話力などを身につけさせようとしても、実践で使えば自分の生存が脅かされるわけで、身につくはずがない。

このような研修に唯一価値があるとすれば、「息抜き」だろう。会社のお金で、しかも公認で日常の仕事から離れて、いつもと違う脳みそを使う。そんな頭の遠足を楽しむことができることだ。

提案力を強化するためには、自らの提案力を伸ばさなくては「ヤバイ」という状況を作り出すことがまずはやるべきことだ。それは、経営者の役割であり、営業現場の役割ではない。

「営業の意識が足りない。スキルも不足している。」

そうしているのは自分であるという経営者や管理者の自覚こそが、提案力を伸ばす原動力ではないだろうか。

【締め切りました】ITソリューション塾・第29期

10月から開講予定のITソリューション塾・第29期は定員となりましたので、受付を締め切らせていただきました。多くの皆様のお申し込み、ありがとうございました。

次期は、来年2月スタートを予定しています。どうぞ、改めてのご参加をご検討下さい。

詳しくは、こちらをご覧下さい

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LiBRA 8月度版リリース====================
・ITソリューション塾の最新版(第28期)を全て公開しました。本サービスで提供している全資料のセレクト・要約版として、ご活用下さい。
・ビジネス戦略編を充実させました。
・AIについて、「わかりやすさ」を追求した資料を追加致しました。
==========================================

【ITソリューション塾】最新教材ライブラリ(全資料のセレクト・要約版)
【新規】これからのビジネス戦略
ビジネス戦略編
【新規】業務がITへITが業務へとシームレスに変換される状態 p.25
【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる人材 p.26
【新規】デジタル・トランスフォーメーションへの2つの対応 p.28
【新規】デジタル・トランスフォーメーションへの対応(IT) p.29
【新規】デジタル・トランスフォーメーションへの対応(ビジネス) p.30
【新規】SIビジネスに取り憑く3匹の"お化け" p.51
【新規】ITビジネス・プロフェッショナルの条件 p.128
【新規】社会人における「学び」の3段階 p.129
【新規】学び続ける習慣 p.130
【新規】100年人生を生き抜くための5つの原則 p.131
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【更新】amazonのデータ収集戦略 p.27
【新規】モノのサービス化(トヨタとコマツの取り組み) p.48
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】人工知能とは p.11
【新規】データ・サイエンスとは p.12
【新規】AIと人間の役割分担 p.13
【新規】ベーシック・インカム p.122
開発と運用編
【新規】イノベーションとスピードの融合 p.9
【新規】開発と運用の方向性 p.17
クラウド・コンピューティング編
【新規】SIビジネスの常識を覆す動き p.28
【新規】銀行システムにおけるクラウド活用の動き p.29
【新規】クラウド・バイ・デフォルト原則 p.30
【新規】クラウドの分類と連係 p.40
テクノロジー・トピックス編
【新規】FinTechとは p.37
【新規】銀行APIとは p.38
【新規】FinTechの変遷 p.41
【更新】取引やデータの正当性を保証する手段 p.42
ITインフラとプラットフォーム編
【更新】コレ一枚でわかる第5世代通信 p.245
【新規】5Gの3つの特徴 p.246
【新規】5Gの適用範囲 p.247
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
*変更はありません

Comment(0)