新入社員に教えるべき過去・現在・未来とはなにか
今日、7月17日(火)と8月20日(月)の2回に分けて、新入社員のための 「最新ITトレンド・1日研修」を開催する。去年からはじめたこの取り組みだが、今日は定員一杯の86名となり、2回目へのご参加をお願いしなければならなくなった方も少なくない。大変ありがたく思う。同時に、それだけ新入社員に「最新のトレンド」を教えることの大切さを実感されている方が、増えているのだろうとも思う。
デジタル・トランスフォーメーションやサイバーフィジカルシステム、AIやIoTなど、ITを取り巻く環境は新しいステージへと大きく移りはじめている。それは、単に新しいテクニカル・スキルを身につければ、対応できるというものではない。ITとビジネス、あるいは社会や価値観との関係が、いま大きく変わりはじめていて、その本質を理解し、適切に対処しなければ、時代の波に押しつぶされるかもしれないという現実が待ち構えている。
新入社員に過去のしがらみなど微塵もない。しかもデジタル・ネイティブだ。そういう彼らに最新のトレンドは何の違和感もなく受け入れられる。そして未来の姿を伝えると、もはや当たり前だという顔をされる。その感性を押さえつけてはいけないと私は感じている。
「ITを使うことを難しいと感じている大人たちが沢山います。そういう人たちを変えてゆくことは大変なことですし、そう簡単にできるようには思えません。どうすればいいのでしょうか。」
先日、ある新入社員研修で、こんな質問をうけた。きっと、この会社の雰囲気が、彼女をそんな思いにさせたのだろう。私は、次のように答えた。
「まずは、基本的なスタンスとして、頭の固い大人たちを変えることは無理だと言うことを忘れないことだ。彼らは新しいことを理解しようとせず、チャレンジもしない。そんな彼らがITの未来を作ることなどできない。だから、君たちがやらなきゃいけないという覚悟を持って欲しい。彼らに迎合しちゃいけない、彼らの価値観に染められちゃいけない。自分の中にある感性を信じて欲しい。」
「AIのところで話したけど、AIとは人に寄り添うテクノロジーだ。難しい、あるいは手間のかかる機械の操作を、キーボードを叩かなくても、音声でできるようにしてくれるし、いろいろなことを自動化してくれる。彼らを変えるのではなく、テクノロジーを使って、仕組みを変えてゆけばいい。それが、君たちの使命だと思う。」
多くのSI事業者やITベンダーが新入社員研修でやることと言えば、40年前から変わらないバッチやオンライン、5大機能などの基本の基本を学ぶことだ。Javaを使ってウォーターフォール型の開発やネットワークの構築を演習で学ぶことだ。
基礎や基本を学ぶことに意味がないというつもりは毛頭ない。新入社員研修が、そこで終わってしまうことに問題があると思っている。なぜなら、実際のビジネスの現場では、AIやIoTが当たり前に会話されているではないか。だからこの研修を始めることにした。
「うちのお客様からAIやIoTについて相談をうけることはありませんよ。」
こんなことをさらっと言う人もいるだろうが、それは、「相談しても無理だろう」と思われているからであることを気付いて欲しい。そんな現実に未来があるとは思えない。だからこそ、新人たちにその担い手を期待すべきなのだと思う。
過去のしがらみがなく、未来が白紙の彼らに、未来を託すべきなのだ。私は、この研修で、そんなメッセージを伝えようと思っている。
私は、この講義で伝えようとしているのは、過去と現在と未来についてだ。
過去
過去とは歴史だ。コンピュータはなぜ登場したのかを数の概念と石器時代に遡っていまに至る歴史として話している。なぜコンピュータが登場したのか、それはどのような課題を解決するために登場したのかがわかれば、コンピュータの本質が見えてくる。石や小枝、算盤、アンティキティラ島の機械、バベッジの解析機関、チューリング、EDSAC、ENIAC、ノイマン、UNIVAC1、System/360、AppleⅠ、IBM PC5150などに続く一連の歴史は、ITがなぜ社会に受け入れられてきたかの理由を教えてくれる。いま自分たちが手にしているコンピュータやスマホの本質に触れITに関わることの意義を実感できる。
現在
受講者の大半はSI事業者だ。彼らの過去の栄光は、必ずしもいまの現実につながっていない。同じままなら未来は厳しい。そんな現実を包み隠さず伝えることも大切だと思っている。そうやって、自分の立ち位置を冷静に理解することが大切だと思うからだ。
同時にITの現実と社会に及ぼす影響の大きさ、そんな仕事に関わることの意義を考えてもらう。彼らがこの仕事に就いたことを誇りに思ってもらいたい。
そして、現実と理想とのギャップについても考えてもらう。それを埋めることが彼らの役割だと信じるからだ。
未来
未来は楽しい、夢がある、いろいろなチャンスが拡がっている。オヤジごときがそれを語るには限界はあるが、できる限り、感じる限り伝えようと思う。
それはテクノロジーの解説ではない。テクノロジーとビジネス、社会や日常がどうなるかをできる限りの想像力を働かせて伝えることだと思っている。
テクノロジーの本質と可能性、その限界をも合わせて伝え、人間にしかできないことは何か、その能力を磨いてゆくためにどのように学び、ITプロフェッショナルとして力量を育ててゆけばいいのかということを伝えてゆく。
プログラム・コードを書くこと、インフラを構築すること、運用管理の仕組みを作ることなど、ITの適用範囲が拡がる中で、その需要は確実に増えてゆく。しかし、それは工数としての労働力を提供することではなく、テクノロジーの本質を見抜く力、それを活かす知識と感性によって、ビジネスの変革や社会課題の解決を実現することだと彼らに伝えたいと思っている。
今日、まもなく講義が始まる。そこに臨む心構えを文章にすることで、いま自分に言い聞かせておきたいと思う。
【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。まだ8月20日(月)の講義にはご参加頂けます。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
【募集開始】ビジネス・リーダーのためのデジタル戦略塾
- 8月2日(木) 第1回 最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略
- 8月29日(水) 第2回 ビジネスを戦略的に動かす実践データサイエンス
- 9月14日(金) 第3回 未来創造デザインによる新規事業の創出
- 10月3日(水) 第4回 デジタルサービスの機敏な提供ーVeriSM
対象者は次のような方です。
SI事業者やITベンダーではない事業会社のリーダーや管理職、部門長、経営者(ITやデジタル・テクノロジーについての前提知識は不要)
- 事業企画や経営企画にかかわっている
- 新規事業開発にかかわっている
- 情報システム部門で企画や戦略に関わっている
次のような課題をお持ちの皆さん
- 最新のIT知識や実践で活かすためのノウハウを手に入れたい。
- デジタル戦略の実践でリーダーシップを発揮したい。
- 事業計画にデジタル戦略を織り込みたい。
もはやデジタルを味方にしなければ生き残れない時代です。しかし、加速度を増すテクノロジーの進化についてゆくことは大変なことです。また、それを実践に活かすとなるさらに高いハードルが待ち受けています。
そんな課題を克服し、自分たちのデジタル戦略を前進させたいと考えている方に、テクノロジーについての最新の知識をわかりやすく伝え、実践のためのノウハウを学んで頂きます。
SI事業者やITベンダーの皆さんへ
お客様のITに関わる予算の7割は、情シス部門以外の部門が意志決定に関与しています。ここに営業力を直接的に行使できれば、営業目標の達成にも大いに貢献できます。「デジタル戦略塾」は、この取り組みを支援するものです。
いま、お客様の事業部門は、自らの事業の差別化を図り競争力を強化するためにITを積極的に活用していこうとしています。「攻めのIT」や「ビジネスのデジタル化」、あるいは、「デジタル・トランスフォーメーション」といった言葉が、注目されているのはそのような背景があるからです。一方で、彼らはITについての知識は乏しく、それを活かす方法を知りません。
ITを活用して事業の競争力を高めたいが、それを実践に活かす知識もノウハウもない
このギャップを埋めることに積極的に貢献できれば、事業部門との信頼関係を強固にすることができます。そうすればその先にビジネスのきっかけを見つけることができるようになるはずです。
情報システム部門の皆さんへ
情報システム部門の中には、このような事業部門の取り組みの蚊帳の外に置かれているところもあるようです。「攻めのIT」は事業部門の主導の下で行われ、自らの存在意義を問われています。
「デジタル戦略塾」を事業部門にご紹介いただくことは、「攻めのIT」への取り組みにおける自分たちの存在意義を、事業部門や経営者にアピールする有効な手立てとなります。また、ご自身も一緒にご参加いただき、「攻めのIT」への取り組みを二人三脚で取り組むための知識とノウハウを共有して頂くこともできます。
- AIやIoT、クラウドやアジャイル開発などの最新のテクノロジー
- ビジネスをデータで理解するためのデータサイエンス
- ビジネスにイノベーションをもたらすデザイン思考
- 新しいビジネスをいち早く実践の現場に展開するためのVeriSM
ご参加ならびにご紹介をいただければ幸いです。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 7月度版リリース====================
ITソリューション塾・第28期の最新教材を掲載
メモリー・ストレージ関連のチャートを拡充
AI専用プロセッサーについてのチャートを追加
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ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.22
インフラとプラットフォーム編
【新規】メモリーとストレージの関係 p.216
【新規】速度と容量の違い p.217
【新規】ストレージ構成の変遷 p.217
【新規】新章追加・不揮発性メモリ p.238-242
メモリ階層
コンピュータの5大機能
記憶装置の進化
外部記憶装置が不要に!?
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTビジネスとはどういうことか p.43
【新規】IoTビジネス戦略 p.45
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】AIやロボットに置き換えられるものと残るもの p.111
【新規】皆さんへの質問 p.131
【新規】求められる人間力の形成 p.132
【新規】新章の追加・AI用プロセッサーの動向 p.133-146
急増するAI 専用プロセッサ
人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係
深層学習の計算処理に関する基礎知識
AI = 膨大な計算が必要、しかし計算は単純
学習と推論
GPUはなぜディープラーニングに使われるか
データセンター向けGPU
GoogleがAI 処理専用プロセッサ「TPU」を発表
TPUの進化
クライアント側でのAI処理
Apple A11 Bionic
ARMのAIアーキテクチャ
開発と運用編
【新規】VeriSM p.6
【新規】早期の仕様確定がムダを減らすという迷信 p.13
【新規】クラウド・バイ・デフォルト原則 p.17
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
テクノロジー・トピックス編
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
*変更はありません
【ITソリューション塾】最新教材ライブラリ
第28期の内容に更新しました。
・CPSとクラウド・コンピューティング
・ソフトウェア化するインフラと仮想化
・クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
・IoT(モノのインターネット)
・AI(人工知能)
・データベースとストレージ
・これからのアプリケーション開発と運用