講義に使う資料についての想い入れ
「このテキストですが、ここはもう分かっているはずのことなので、削除して頂けないでしょうか。」
「同じ資料が出てきます。どちらかひとつにしてください。」
「ボリュームがありすぎて覚えきれないので、減らしてください。」
講師という仕事をしていると、研修の担当者からこのようなご依頼を頂くことがある。こういうご依頼を頂くことになるのは、多くが研修会社などの仲介者を介した場合で、研修のご担当者と直接のやり取りがないままに話しがすすんでしまったケースだ。
当然のことだと思う。何処の誰だか分からない人間に仕事を任すのだから、いろいろと心配になるのは当然だ。しかし、そうなってしまったらば仕方がないので、次のように答えている。
人材開発部 ○○様
ネットマースの斎藤です。
この度は、講義の機会を頂きありがとうございます。
さて、講義資料の訂正につきましてのご依頼ですが、こちらの事前の説明が行き届かず、無用なご心配をかけてしまい、お詫び申し上げます。
ご懸念はよく分かるのですが、以下の理由からご心配は無用ですので、ご安心ください。
講義の目的は物語を伝えることであるため
言葉やその意味を覚えるのであれば、書籍やネットの情報に頼ることもできます。しかし、講義で話しを聞くというのは、そういう書物やネットにはなかなか書かれていない「物語」を伝えることに意味があると考えています。物語とはテクノロジーの様々なキーワード、そしてそれぞれの役割がどのように関係し、全体としての仕組みがどうなっているかです。
限られた時間の中で、講義の資料に書かれた言葉や意味を記憶することなどできません。だから、その全体に連なる大きな脈絡を物語として伝えることが講義の目的であると考えています。
物語が頭の中にあると、知識を習得し仕事に活かしてゆく上でのインデックスやフィルターになり、役に立つ情報を見つけやすくなります。学ぶことへの好奇心を引き出してくれます。
研修教材はそのような物語を構成する要素として配置したものであり、その用語や意味を覚えてもらうためではありません。そういう意味で、削除はご容赦いだきたいのです。
講義は対話であるため
受講される皆様の知識のレベルや興味の対象はそれぞれに違います。講義はそういう様々な皆さんにできるだけきめ細かく対応できなくてはなりません。そのために講義は「対話」でなくてはなりません。
対話といっても、質疑応答やディスカッションという意味ではなく、顔色や目つき、ノートへの書き込みのペースなどを講師が見ながら、受講者ひとり一人や場の状態を把握し、それに合わせて内容やスピードを変化させてゆくことです。
また、前提知識が異なる方もいらっしゃいますので、そういう方にも対応しなければなりません。
また、内容の冗長度がある程度高いほうが理解しやすいという研究成果もあります。内容が同じ、あるいは似たような内容があるのは、それを繰り返し、表現を変えて説明することで、学習効果を高めることが狙いです。ただ、無意味に同じような内容が入っているわけではありません。そのようなことを配慮しての構成となっています。
資料を全て説明することはありません
資料は相当のページ数です。これは、説明するためだけではなく、後で読み返してもらうことをも考慮しています。物語が頭に入れば、あとは読み返すことで、学びを補足できます。
限られた時間の中で、全ての資料を説明することはできませんし、「資料を説明し尽くす」ことは講義の目的ではありません。
また、上記の対話を通じて、説明の仕方を変え、他の資料を使って説明することもあります。大切なことは、講義に参加された方がそれぞれに「役に立った」や「満足できた」を実感してもらうことであり、講師が「話しきったこと」で自己満足するためではありません。
以上の理由から、訂正は不要であることをご理解頂けますとありがたく存じます。
「メモをとりたいので印刷物も欲しい。」
時にはこのようなご依頼を頂くこともある。私は、普段印刷物を配布せず、全てをオリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供している。受講者があとでいろいろと使い勝手がいいと考えからだ。また、講義の演出として、資料に向きあうのではなく、講師と向きあって対話して欲しいからだ。そのような主旨をお伝えしていても、このようなご依頼を頂くのは、とても残念だ。うまく伝わっていない自分の説明力の不足を反省もするのだが、「形式」として、「資料は印刷物として配布する」という固定観念を変えられない人が居ることも1つの理由となっている。ただ、メモ帳代わりに高いコストをかけて印刷するという考え方も、いかがなものかとおもう。
会場が広くて後ろからスクリーンが見えない、視力の弱い方がいるのでということなら、それも理解できる。しかし、年間150回近い講義や講演を行っているが、資料をお配りしない方が、受講者との対話が円滑であると実感している。また印刷が必ずしも学習効果を高めることもない。
講義中にPCやスマホを使わせないという「しきたり」を未だ頑なに守り続けているところもあるが、これもいかがなものだろう。資料をダウンロードしていだき、ノートとして講義の気付きを書き込んでいけば、その場で自分のパッケージにできる。また、分からなければその場で検索し、それでも分からなければ質問することの方が理解もすすむ。プレゼンをメモ代わりに写真に撮るのは効率がいい。内職させないためにスマホをしまわせると言うのだが、もう大人なので本人に任せればいい。内職が増えるのは、講師の話がつまらないからだ。スマホのせいではない。
講義の目的は受講者の学びの意欲を引き出し、仕事に活かしてゆこうというモチベーションを引き出す事だ。その観点から、研修教材は作成していることをご理解いただければありがたい。
【募集開始】ビジネス・リーダーのためのデジタル戦略塾
- 8月2日(木) 第1回 最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略
- 8月29日(水) 第2回 ビジネスを戦略的に動かす実践データサイエンス
- 9月14日(金) 第3回 未来創造デザインによる新規事業の創出
- 10月3日(水) 第4回 デジタルサービスの機敏な提供ーVeriSM
対象者は次のような方です。
SI事業者やITベンダーではない事業会社のリーダーや管理職、部門長、経営者(ITやデジタル・テクノロジーについての前提知識は不要)
- 事業企画や経営企画にかかわっている
- 新規事業開発にかかわっている
- 情報システム部門で企画や戦略に関わっている
次のような課題をお持ちの皆さん
- 最新のIT知識や実践で活かすためのノウハウを手に入れたい。
- デジタル戦略の実践でリーダーシップを発揮したい。
- 事業計画にデジタル戦略を織り込みたい。
もはやデジタルを味方にしなければ生き残れない時代です。しかし、加速度を増すテクノロジーの進化についてゆくことは大変なことです。また、それを実践に活かすとなるさらに高いハードルが待ち受けています。
そんな課題を克服し、自分たちのデジタル戦略を前進させたいと考えている方に、テクノロジーについての最新の知識をわかりやすく伝え、実践のためのノウハウを学んで頂きます。
SI事業者やITベンダーの皆さんへ
お客様のITに関わる予算の7割は、情シス部門以外の部門が意志決定に関与しています。ここに営業力を直接的に行使できれば、営業目標の達成にも大いに貢献できます。「デジタル戦略塾」は、この取り組みを支援するものです。
いま、お客様の事業部門は、自らの事業の差別化を図り競争力を強化するためにITを積極的に活用していこうとしています。「攻めのIT」や「ビジネスのデジタル化」、あるいは、「デジタル・トランスフォーメーション」といった言葉が、注目されているのはそのような背景があるからです。一方で、彼らはITについての知識は乏しく、それを活かす方法を知りません。
ITを活用して事業の競争力を高めたいが、それを実践に活かす知識もノウハウもない
このギャップを埋めることに積極的に貢献できれば、事業部門との信頼関係を強固にすることができます。そうすればその先にビジネスのきっかけを見つけることができるようになるはずです。
情報システム部門の皆さんへ
情報システム部門の中には、このような事業部門の取り組みの蚊帳の外に置かれているところもあるようです。「攻めのIT」は事業部門の主導の下で行われ、自らの存在意義を問われています。
「デジタル戦略塾」を事業部門にご紹介いただくことは、「攻めのIT」への取り組みにおける自分たちの存在意義を、事業部門や経営者にアピールする有効な手立てとなります。また、ご自身も一緒にご参加いただき、「攻めのIT」への取り組みを二人三脚で取り組むための知識とノウハウを共有して頂くこともできます。
- AIやIoT、クラウドやアジャイル開発などの最新のテクノロジー
- ビジネスをデータで理解するためのデータサイエンス
- ビジネスにイノベーションをもたらすデザイン思考
- 新しいビジネスをいち早く実践の現場に展開するためのVeriSM
ご参加ならびにご紹介をいただければ幸いです。
【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 7月度版リリース====================
ITソリューション塾・第28期の最新教材を掲載
メモリー・ストレージ関連のチャートを拡充
AI専用プロセッサーについてのチャートを追加
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ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.22
インフラとプラットフォーム編
【新規】メモリーとストレージの関係 p.216
【新規】速度と容量の違い p.217
【新規】ストレージ構成の変遷 p.217
【新規】新章追加・不揮発性メモリ p.238-242
メモリ階層
コンピュータの5大機能
記憶装置の進化
外部記憶装置が不要に!?
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTビジネスとはどういうことか p.43
【新規】IoTビジネス戦略 p.45
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】AIやロボットに置き換えられるものと残るもの p.111
【新規】皆さんへの質問 p.131
【新規】求められる人間力の形成 p.132
【新規】新章の追加・AI用プロセッサーの動向 p.133-146
急増するAI 専用プロセッサ
人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係
深層学習の計算処理に関する基礎知識
AI = 膨大な計算が必要、しかし計算は単純
学習と推論
GPUはなぜディープラーニングに使われるか
データセンター向けGPU
GoogleがAI 処理専用プロセッサ「TPU」を発表
TPUの進化
クライアント側でのAI処理
Apple A11 Bionic
ARMのAIアーキテクチャ
開発と運用編
【新規】VeriSM p.6
【新規】早期の仕様確定がムダを減らすという迷信 p.13
【新規】クラウド・バイ・デフォルト原則 p.17
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
テクノロジー・トピックス編
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
*変更はありません
【ITソリューション塾】最新教材ライブラリ
第28期の内容に更新しました。
・CPSとクラウド・コンピューティング
・ソフトウェア化するインフラと仮想化
・クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
・IoT(モノのインターネット)
・AI(人工知能)
・データベースとストレージ
・これからのアプリケーション開発と運用