30年前のテクノロジーを教えるだけの新入社員研修でいいのだろうか?
「30年前のテクノロジー」
SI事業者の新入社員研修で行われている「情報システムの基礎」の類は、総じてそのような内容だ。アジャイルやDevOpsなど教えられることはない。クラウドについても「そういうサービスがある」程度に留まっているテキストを見て唖然とした。ましてやIoTや人工知能などはどこにも触れられることはなく、ハイパーコンバージドやコンテナという言葉すら出てこない。
そんな「情報システムの基礎」でも、やっているところはまだましな方で、それすら教えていないところもあり、与えられた辞書のような解説書を暗記してテストをしているといったところもある。
そんな知識のままで、ビジネスの現場に放り込まれる彼らのことを考えたことがあるのだろうか。かれらは学んだことと現実とのギャップに大いに苦しむことになるだろう。
この事実を裏返して考えれば、
- 「そんなことは知らなくても仕事にはこまらない」
- 「現場で勉強すればいい」
- 「分かっている人がいないからおしえられない」
工数としての従順なコーダーを育てるのに最新のテクノロジーは不要だ。むしろ、真実を知ってしまって自分たちがやっていることが、時代の流れから取り残されていることに気付かれないほうがいいということのなのかもしれない。
コンピューターの5大機能、バッチやリアルタイムといった30年以上前からある「情報システムの基礎」を教えることがいけないのではない。それに留まっていることが問題なのだ。では、どんな講義を行うべきなのか。
正直に過去・現在・未来を教える
自社の未来を託す人たちに今の時代を伝え、ITが拓く夢のある未来と可能性について伝えなくてはならない。
SIビジネスの栄光を自社の歴史と共に伝えることは、そこに入社した人たちに誇りを持たせることになる。しかし、事業価値がテクノロジーの提供能力から工数の提供能力へと変わり、企業としての存在意義が問われていること、そして、自分たちの事業価値を転換してゆかなければならないことにもがいていることを正直に伝えてはどうか。その難しさも伝えることだろう。
一方でITの未来は明るい。「ITと一体化したビジネス」への潮流はますます勢いを増している。その本流にあるクラウドや人工知能、IoTなどがどのような未来をもたらすのか、その価値や可能性について、歴史と共に伝えるだ。
そんな大きく開けた未来に夢や期待を持たせ、そんなこれからの時代を切り拓くのが彼らの役割であることを伝えては如何だろう。
IT業界で働くことの意味を伝える
ITはこれまでの非常識を覆し、新しい常識へと置き換えてきた。いまの勢いは、IBMのメインフレームが登場した1960年代以降のITの歴史の中でも特異とも言えるほど爆発的で多様だ。
不可能が可能になり、かつての常識が崩壊し、ITが新たなビジネスの可能性を切り拓いている。UberやAirbnb、GoogleやAmazonなどが世に問うデジタル・トランスフォーメーションは、人間が手作業で行っていたビジネス・プロセスをプログラムやネットワークのITプロセスに置き換えたものではなく、デジタル・ネイティブなビジネス・プロセスだ。そんな時代の最先端に関われることの意義や価値を考えさせることが大切だ。
過去の仕事の引き継ぎも必要なことかもしれないが、それらはいずれなくなってゆく。そんな仕事は過去を作り上げたおじさんたちに任せておき、新しいデジタル・ネイティブな仕事にどんどん関わらせて行くべきだろう。
もちろん、過去を学び、いまの仕事を知らしめる意味で、現場を経験させることも必要だが、彼らの本来のいまここに居る意義はは「未来にある」ことを合わせて伝えるべきだろう。
彼らから未来を学ぶ謙虚さを持ち正直に向き合う
もはやかれらは異星人だ。表向きはおじさんという地球人に合わせてくれてはいるが、その本質は異なる価値観と感性を備えた人間だ。共通するのは人間としての本源的価値観が共有できることだ。
- 正直であること
- 世のため人のためであること
- 達成の喜び
一方で、デジタル・ネイティブな感性はなかなか理解できない。
それは仕方の無いことで、いつの時代も同じことを繰り返してきた。むしろ、そういう世代間の感性との戦いを通じて、若者たちは社会の現実を知り、社会人とはどう振る舞うべきなのかを学んでいく。
だからこそ、この現実に向き合い、教える側も自らの価値観を正直に伝え、ぶつかることだと思う。その上で、彼らの言葉に耳を傾け、かれらからいまや未来を学ぶ謙虚さが必要だ。そして、お互いを理解し合う公平さも求められる。
経験者だから、世の中を知っているからと偉そうな態度をとることでしか権威を示せないとすれば何とも残念なことだ。確かに世の中を知っているかもしれないが、それはしょせん過去の世の中だ。いまの世の中を、自信を持って知っていると言い切れないのなら、それを素直に受け入れる態度も必要だろう。そして、いまを学び自信を持って彼らに伝える勇気と謙虚さが必要だ。
「若い=安い労働力」として、捉えてはいないだろうか。人月工数のビジネスが先細る中、彼らが新しいこと、イノベーションの源泉であると捉えなくてはならない。そして、高い技術力だけではなく高いモチベーションも併せ持った人材を育ててゆく場が、新入社員研修であるべきだ。
このようなことへの時間や投資を渋るSI事業者は、新製品開発のための研究開発に投資をしない製造業と同じだ。いずれお客様から見放されてしまう。
変化はいつの時代にもあったし、これからも繰り返される。そんな変化の潮流を教え、読み解く力を彼らに学ばせなくてはならない。
30年前のテクノロジーに留まっていていいのだろうか。夢のある未来を伝えるべきではないのか。それができないとすれば、自分たちの未来を彼らに託すことはできない。
【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書
デジタル・トランスフォーメーションとは何か、SI事業者やITベンダーはこの変化にどう向きあえばいいのかを1冊の書籍にまとめました。これが「SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書」です。PDF/A4版・109ページのデジタル出版です。紙の書籍にすると200ページくらいのボリュームにはなると思います。もちろん、前著同様に掲載したチャートは全てロイヤリティ・フリーでダウンロードできるようにしています。
いまと未来を冷静に見つめ、SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーションにどう向きあえばいいのかを考えるきっかけになればと願っています。
内容は以下の通りです。
- デジタル・トランスフォーメーションとは何か
- デジタル・トランスフォーメーションの定義
- デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー
- SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション
- デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる人材
ITビジネスの未来は大いに開けています。ITは私たちの日常や社会活動にこれまでにも増して深く関わり、アンビエント(環境や周囲に溶け込む)になっていくでしょう。そこには新たなビジネスチャンスが待っています。しかし、そのチャンスを見つけるためには、視線を変えなければなりません。もはやこれまでのSIビジネスの視線の向こうには、新しいビジネスチャンスはないのです。
じゃあどうすれば良いのでしょうか。本書で、そのための戦略と施策を考えるきっかけを見つけていただければと願っています。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 5月度版リリース====================
- SI事業者/ITベンダーのための「デジタル・トランスフォーメーションの教科書」をリリース
- 「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツ
- その他、コンテンツを追加
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【新規掲載】SI事業者/ITベンダーのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書
- 教科書 全109ページ
- PDF版
- プレゼンテーション 全38ページ ロイヤリティフリー
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「ITソリューション塾・第27期」の最新コンテンツを追加
メインテーマ
ITトレンドの読み解き方とクラウドの本質
ソフトウェア化するインフラと仮想化
クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
IoT(モノのインターネット)
AI(人工知能)
データベース
ストレージ
これからのアプリケーション開発と運用
これからのビジネス戦略【新規】
知っておきたいトレンド
ブロックチェーン
量子コンピュータ
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サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】伝統的なやり方とIoTの違い p.19
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】人間にしかできないコト・機械にもできること p.100
インフラ&プラットフォーム編
【新規】仮想化とは何か p.68
【新規】仮想化の役割 p.70
【新規】サイバー・セキュリティ対策とは何か p.125
【新規】脆弱性対策 p.127
クラウド・コンピューティング編
【新規】コンピューターの構成と種類 p.6
【新規】「クラウド・コンピューティング」という名前の由来 p.17
【新規】クラウドがもたらすビジネス価値 p.26