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ここ数年の新入社員に見られる3つの顕著な特徴

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ここ数年、新入社員の資質が変わってきたような気がしている。

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毎年、10数社の新入社員研修でITのトレンドや営業プロセスについての講師を務めている。時代の変化に応じて、新しい知見や考え方を取り入れ研修内容を刷新はしているが、原理原則、学ぶことの大切さ、仕事をすることの意義を問い掛けながら、ITに関わる仕事をすることの楽しさと未来への夢を伝えるように心がけている。幸いにもアンケートを見ると講義内容や講師については一貫して高い評価をもらえていたが、最近はネガティブな評価が散見されるようになった。

自分の講義内容を劣化させたとは思わない。むしろブラッシュアップして、わかりやすさとビジネスでの有用性を高めてきたつもりだ。しかし、どうも彼らが研修に求めていることと、こちらが提供しようとしていることとの間にギャップが拡がってきたように感じでいる。例えば、アンケートに次のようなコメントがあり、メンタルはそれなりに鍛えてきた私でも少し凹んでしまった。

「講師の本は学生時代に読んでいたので、講義の内容に目新しさはなく役に立たなかった。」

「理想論ばかりで、これでは仕事で役に立たない。」

「話はうまいが、中身がない。」

これ以上書くと、私のメンタルが崩壊するので、このあたりでやめておく。

講義の場では、真剣に聞いている(ように見える)。いろいろと問い掛けながら、意見引き出すようには心がけているが、みんなの前では自分の本音を語ることはない。私は、講義での反応を見ながら臨機応変に内容を変えることを厭わない。しかし、それもできない状況だ。

あえて昨今の特徴的な変化をあげれば、次の3つくらいに整理できるだろう。

操作マニュアルを求める

「お客様から高いと言われたとき、どのように切り返せばいいのでしょうか?」

「どんな本を読むと効率よく学べますか?」

「お客様からクレームがあったとき、どのような言葉で応対すれば、うまく切り抜けられるでしょう?」

そんなこと知らんよ!と叫んでしまい衝動を抑え、お客様と真摯に向き合うことの大切や何を学ぶかではなく学ぶ習慣をまずは身につけることの大切さを説明すると、その場では「分かりました!」と言うのだが、アンケートの評価は「役に立たない」となる。

原理原則や基本を学ぶこと、あるいはそれを学ぶ習慣をどうすれば獲得できるかのほうが、彼らのこれからの人生を考えれば、遥かに価値があると思っている。しかし、それがうまく伝わらないのは、なんとも残念だ。どうつたえればいいのだろう。

評論家を気取る

「役立たない、少々綺麗事・理想が多く、現場の認識と乖離している。」

「あまり実践的ではない。事業部門で仕事の内容が違うから。」

「先輩の話を聞き、かれらが失敗しても前向きに頑張れるようなタイプであるように感じた。だれもがそういうわけではない。もっと多くの人に共感する話をすべきだ。」

まるで神様のようだ。かれらは何でも知っている。そう感じてしまう。大学時代、教師を評価するという制度が広く普及したことが、そのような目線を育ててしまったのかもしれない。あるいは、自分を客観的に評価することができないのかもしれないし、そういう機会が与えられてこなかったのかもしれない。SNSにみる勧善懲悪的なコメント、多様な価値観を受け入れられず自分の知っている偏った価値基準のみで評価する傾向があるのと大きく変わらない。

批判的に評価することは奨励すべきことだ。しかし、それは同時に自分への批判的な姿勢があってこそ、信頼に値する。

その原因として、自己肯定感の低さがあるのかも知れない。「自分には価値がある」と思いたい願望が強く、それを証明しようと躍起になる。そこで、人と比較して自分が優れていると感じることで埋め合わせようとする。時に攻撃的で自信満々のように見える。それがこのようなコメントに現れるのかもしれない。しかし、本当のところは自信が無い。さて、どうしたものか。

理不尽が許せない

「希望していた部署に配属されなかった。自分はこの部門よりも希望部署で働く方が役に立てる。」

社会が理不尽であることはデフォルトだ。思い通りにゆかないことの方が遥かに多い。だからこそ、それを克服することで人間は成長の機会を与えられるのだと言うことを分からないようだ。いや頭では分かっている。しかし、納得できない。自分は特別なのだと考えているかもしれない。

私はSE志望でIBMに入社したが、配属は営業だった。ええっとは思ったが、まあいいかと直ぐに気を取り直し、営業って何すりゃいいんだと俄然興味がわいてきた。優柔不断というか、こだわりがないというか、その器質はいまも変わらない。しかし、そのことで沢山の得をしてきたことも事実だ。もちろん失敗もあるが、プライスもマイナスもあっただろうが、結果はプラスだったような気がする。

人生は長い、いまの配属なんて人生の時間から見れば小さなことなのだが、それは新人の頃にはなかなか理解できないのかもしれない。たぶんこれまでは全て思い通りが、与えられてきたのかもしれない。

人生が理不尽と不条理に満ちていることを早く気付けるいい機会なのだが、なかなか受け入れられないのだ。可哀想に思う。

もちろん、このような反応は、絶対数から見ればまだまだ少数派だ。例えば、次のようなコメントをもらって、大いに勇気づけられることもある。

「学生時代に先生の本を読んでいたので、本当に良かったと思います。講義を聴いて、疑問に思っていたことやもっと深いところが理解できました。」

しかし、ネガティブ評価は確実に増えている。それは一部の人間だと割り切って、いままでのやり方を続けてゆくことできるかもしれない。しかし、それがいいとは思わない。こんな時代の流れにどう対処し、彼らに自信を持たせ、夢を持たせるためにどうすればいいのかを考えるのが、講師の務めだ。さあ、どうするかは、これから考えようと思う。

最新版【3月版】を更改しました。

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  • 新入社員のためのITの基礎知識を最新版に更新しました。
  • 「ビジネスエグゼクティブのためのIT戦略塾」で使用した最新トレンドについての講義資料を公開しました。
  • その他、新しい資料を公開しています。

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プラットフォーム&インフラ編
【新規】従来システムとハイパーコンバージド・システムとの違い p.136
【新規】ハイパーコンバージド・システムのメリット p.137

ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.18
【新規】ITをビジネスの成果に結びつける考え方 p.48
【新規】事業会社の担うべき責任 p.49
【新規】注意すべきITベンダー・SI事業者の行動特性 p.50

サービス&アプリケーション・先端技術編/AI
【新規】人間は何を作ってきたのか p.10
【新規】知的介助: amazonの戦略 p.32
【新規】学習データと結果の関係 p.93

サービス&アプリケーション・先端技術編/IoT
【新規】デジタル・コピー/デジタルツイン p.25
【新規】amazonのデータ収集戦略 p.26
【新規】IoTビジネスはモノをつなげるのではなく物語をつなげる取り組み p.42
【新規】様々な産業に変革を促すデジタル・トランスフォーメーション p.95

運用と開発編
【新規】変わる情報システムのかたち p.6
【改訂】アジャイル開発の基本構造 p.17
【改訂】スクラム:自律型の組織で変化への柔軟性を担保する p.25

テクノロジー・トピックス編
【新規・改訂】armについての解説を新しい内容に置き換えました p.19-35

ITの歴史と最新トレンド編
【新規】量子コンピュータとは何か p.4

クラウド・コンピューティング編
*変更はありません

サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません

その他
【新入社員】最新のトレンドを知るためのITの基礎知識 を最新版に変更
【一般社員】ビジネス・エグゼクティブのための最新ITトレンド を新規に追加

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