シンギュラリティってほんとうにくるのでしょうか?
「シンギュラリティってほんとうにくるのでしょうか?」
ITソリューション塾の後に開かれた昨日の定例アルコール消毒会に於いて、こんな質問があった。
「もう、シンギュラリティは来ているのかもしれませんね。」
そして、つぎのように話をした。
「人間は鳥のように飛びたいと思って、試行錯誤を繰り返しながら飛行機を作り上げました。もはや飛ぶ能力に於いては、人間は鳥の能力を遥かに超えています。だからといって、人間は鳥そのものを作ることができたのでしょうか?同じように、人間は馬より速く走りたいと自動車を作りましたが、馬を作ったわけではありません。つまり、鳥や馬の能力の一部を超越できたからと言って、その全てを作ったわけではありません。いまの人工知能もそれと同じです。」
「GoogleのAlpha Goが囲碁の世界チャンピオンを打ち負かし、IBMのWatsonが癌の診断で人間より的確な判断を下し、音声や画像の認識能力でAIが人間の能力を超えたとしても、それで人間の知性の全てが模倣されたわけではありません。特定の知的作業においては、人間の能力を超えるに至った人工知能も、その全てを超越したわけではなく、人間の知的能力の一部を個別に超越したに過ぎないと言ってもいいでしょう。いうなれば、人間の能力の一部を拡張したということができます。」
「AIが人間の知能と決定的に違うのは、意志が無いということかもしれません。GoogleのAlpha Goが、自分の意志で囲碁の世界チャンピオンに挑戦しようと考えて、行動を起こしたわけではないからです。それは、人間の意志によって決定されました。」
「人間は自らの意志の力で、様々な知性を使い分け、組み合わせて、何らかの成果をあげようとします。しかし、意志とは何か、それを支える意識とは何かは未だ解明されたとは言えません。解明されていないものは理論化できていないので、アルゴリズムは描けずプログラムは作れませんから、それらをAIとして実現できないのです。意志も知能の一部だとすれば、人間の知能を代替できるAIは存在しないことになります。」
「そもそも、AI=人工知能の"知能"とは何ですか?とても曖昧であり、解釈は多岐にわたります。それらは未だ全て解明されたわけではなく、将来にわたっても解明され尽くすことは難しいでしょう。だとすれば、自発的に人間を支配するようなAIも実現しないのではないかというのが専門家たちの見立てです。」
「ならば、人間の未来は安泰であると考えるのもまた早計な気がします。例えば、ゴールドマンサックスは600人いたトレーダーを2人残し、新たに200人のAI技術者を雇用しました。自動運転が普及すればタクシーやトラックの運転手は不要になるでしょう。つまり、特定の知的作業領域に於いては、人間の能力を超えてしまうわけで、その範囲は拡がってゆけば、その分野の経験値を積み上げてきた人たちの仕事は失われます。システム開発でもコーディングやテストなども近い将来AIに置き換わるかもしれません。そうなると、いまの仕事がなくなることは避けられないと思います。」
「だからといって、人間が不要になることはありません。例えば、効率よく地面に穴を掘るために作られたパワーショベルは人間よりも遥かに効率よく自分の仕事をこなしますが、それを操作するのは人間です。また、そういう機械を駆使して、以前にはできなかった建設工事を考案し、実行する意志を持つのも人間です。」
「先日、ある大手SIerの研究所長の話しを聞きましたが、人間のプログラミング能力を代替できるシステムは5年くらいのうちには実現できるだろうという話しを聞きました。しかし、プログラミングの現実は、いろいろと泥臭いこともありますから、全てをすっかり置き換えることなどできないはずです。しかし、相当部分が置き換わるとすれば、その"泥臭い"部分をどうやって自動化すればいいのかというテーマが生まれます。それができるのは"泥臭い"ことを知っている人間であって、そういうひとが今度はそのシステムを鍛え、育ててゆくのでしょう。そして、全体としてシステム開発の生産性を飛躍的に高めてゆくことができるのです。つまり、頼大きな目的を実現するために、人間は機械を使いこなしてゆくようになるのです。」
「労働塊の誤謬(ろうどうかいのごびゅう、lump of labor fallacy)という経済学の用語がありますが、これは世の中における仕事は一定量しかないという考え方、または、その一定量の仕事を労働者が取り合うしかないという見方を意味する言葉です。経済学者の間では、これは誤りとされています。つまり、ある仕事がなくなっても、新しい仕事が生まれるので、仕事量が固定化されることはないと言うことです。ただ、仕事が変わることを拒み、この変化に適応することができないとすれば、ミクロに見ればその人個人の仕事を奪うことになります。しかし、それは社会全体から見れば、局所的な副作用であって、本質ではないように思います。」
「シンギュラリティって本当に来るのでしょうか?という最初の問いに答えるとすれば、もう来ているとも言えますし、そのことが人間の仕事を奪うことになるでしょう。しかし、人間は自らの役割をシフトさせ、新たな仕事を生みだすので、人間が不要になることはありません。あるいは、人間がAIに支配されるというのは、妄想に近いのではないかと思います。」
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第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。
SI事業者の皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
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古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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・デジタル・トランスフォーメーションについて大幅に解説を増やしました。
・【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。
・量子コンピュータについて、チャートの他に解説文を作りました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。
プラットフォーム&インフラ編
【改訂】サーバー仮想化とコンテナ p.94
【新規】ビジネスとしてのランサムウェア p.113
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.4
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは何か p.5
【新規】「限界費用ゼロ社会」の実現を支えるデジタル・トランスフォーメーションp.6
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの全体像 p.7
【新規】デジタルトランスフォーメーションとCPS p.8
【新規】デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー p.9
【新規】デジタル・トランスフォーメーション実現のための取り組み p.10
【新規】デジタル・トランスフォーメーションをとは p.11
【新規】デザイン思考・リーン・アジャイル・DevOpsの関係 p.16
【新規】SIビジネスとして注力すべきテクノロジー(解説付き) p.17
【新規】デジタルトランスフォーメーション時代に求められる能力 p.20
サービス&アプリケーション・先端技術編/IoT
【新規】機能階層のシフト p.46
サービス&アプリケーション・先端技術編/人工知能とロボット
【新規】手順が決まった仕事は機械に置き換わる p.18
【新規】深層学習の学習と推論 p.52
【新規】「AIカント君」の可能性について p.92
開発と運用編
【新規】DockerとKubernetesの関係 p.45
【新規】システム開発のこれから p.62
テクノロジー・トピックス編
【新規】スマート・コントラクト p.53
【新規】量子コンピュータについての解説文 p.67-68
ITの歴史と最新トレンド編
*変更はありません
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。