これまでのやり方にこだわれば自分たちの存在理由を見いだせなくなる
ユーザーはシステムにビジネスの成果を期待する。エンジニアはどうやってシステムを実現できるかを考える。しかし、「どうやって」であるインフラやプラットフォームは自動化されたサービスへと移行しつつあり、構築や運用にかかわる人間の役割はどんどんとなくなりつつある。
開発もまた機械学習をつかったモデリング手法を取り入れるようになるだろう。アルゴリズムを人間が考えコーディングするのではなく、必要なデータと学習モデルを選択し処理のプロセスを生成しようというアプローチだ。IT活用のテーマが増えビジネス環境の変化に即応する必要性が高まりつつあるいま、経験値×職人技ではもはや需要を満たせないからだ。
当然エンジニアの役割は変わる。運用エンジニアであれば、マニュアルに書かれた定例オペレーションやインシデント対応、あるいはバックアップや監視といった作業は不要になる。それに変わって、様々な運用管理業務を徹底して自動化することや、アプリケーション・エンジニアが開発したコードをアプリケーション・エンジニアがセルフサービスで本番に移行しても、安定稼働が保証される仕組みを作る役割が求められる。このようなエンジニアをSRE(Site Reliability Engineer) ということもある。
また、手段は自動化され、しかもクラウド・サービスとして資産化しなくてもITの機能や性能が使えるようになれば、ITを前提に新しいビジネスを実現することも容易になる。さらには、これまでITを活かせなかった領域にITを活用しようという動きが拡がってゆく。アプリケーション・エンジニアは、お客様のビジネスの成果に貢献するために、どのテクノロジーを採用すればいいのかをお客様と一緒になって考え、その仕組みをデザインすることが求められる。つまり、ビジネスの目線でテクノロジーを目利きし、最適な活用方法を組み立てる力だ。
アーキテクトやコンサルタント、ビジネス・デザイナーとしての能力が必要だ。それを何というかは分からないが、コードを書ければいい、データベースをチューニングできればいいというわけにはゆかない。
営業も見積と契約だけの事務処理営業、製品やサービスの説明だけのカタログ営業、モノやヒトの手配に長けた手配師営業では役割を果たせない。そのような手順の決まった仕事はITサービスに置き換えられてゆく。もっと上流の役割として、お客様のビジネスの成果に貢献するためにはどのようなテクノロジーを組合せればいいのかを説明できなければならない。そのアイデアを構想できなくてはならない。
課題をどう解決すればいいかに応えられるソリューション営業では不十分だ。もっと積極的にお客様の経営や事業にイノベーションを起こすためには何をすればいいのかをお客様と一緒になって考えられるイノベーション営業が求められる。そうなるともはや「営業」と呼ぶべきではないかもしれない。「ビジネス・コンサルタント」のほうがふさわしい。
いずれにしろ、エンジニアも営業もテクノロジーの進化によって、これまでのやり方では、自分たちの存在理由を見いだせなくなるだろう。
テクノロジーの進化が何をもたらし、何を変えてしまうのか。私たちは、その意味を正しく見据え、一歩先んじて手を打ってゆく必要がある。「一歩先んじて」が特に大切だ。やらざるを得なくなってからみんなと一緒にやるでは、自分の市場価値は普通でしかない。しかし、一歩先んじれば市場価値は高まる。
いつの時代も人の役割は変化を求められてきた。しかし、「テクノロジーの進化が自らの進化を加速する」時代のスピードは、過去を凌駕している。この現実に向きあうのもひとつの生き方だと思うし、あえてレガシーを極めるという選択もある。
いずれにしろ、自分の存在理由をはっきりさせる努力だけは怠るべきではないだろう。
2月14日(水)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第27期」の受付を開始致しました。
=====
日程 2018年2月14日(水)~4月25日(水) 18:30~20:30
回数 全11回
定員 80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 ¥90,000- (税込み¥97,200) 全期間の参加費と資料・教材を含む
---
【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
=====
第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。
SI事業者の皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
情報システム部門の皆さんには、自分たちのこれからの役割やどのようなスキルを磨いてゆく必要があるのかを考えるきっかけをご提供します。
講義で使用する500ページを超える最新のプレゼンテーションは、オリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供させて頂きます。お客様への提案、社内の企画資料、イベントでの解説資料、勉強会や研修の教材として、どうぞ自由に活用してください。
古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
「知っているつもりの知識」から「実践で使える知識」に変えてゆく。そんなお手伝いをしたいと思っています。
================================
- 開発と運用について大幅に追加改訂しました。
- デジタル・トランスフォーメーションについての解説を増やしました。
- 量子コンピュータについての記述を追加しました。
================================
追加・更新の詳細は以下の通りです。
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.5
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.11
【改訂】デジタル・トランスフォーメーション実践のステップ p.12
【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる能力 p.14
【改訂】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション p.15
【改訂】共創の3つのタイプ p.82
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】深層学習が前提となったシステム構造 p.68
開発と運用編
【新規】開発と運用:従来の方式とこれからの方式 p.15
【新規】アジャイル開発の基本構造 p.16
【新規】アジャイル開発の目的・理念・手法 p.23
【新規】スクラム:特徴・三本柱・基本的考え方 p.25
【新規】スクラム:スクラム・プロセス p.26
【新規】スクラム:プロダクト・オーナー p.27
【新規】スクラム:スクラム・マスター p.28
【新規】スクラム:開発チーム p.29
【新規】エクストリーム・プログラミング p.30
【新規】これまでのソフトウェア開発 p.58
【新規】これからのソフトウェア開発 p.59
【新規】Microsoft Azureによる予測モデルの開発方法 p.60
インフラ編
【新規】ストレージ・コストの推移 p.215
テクノロジー・トピックス編
【改訂】ソーシャル・グラフ 解説文・追加&改訂 p.4
【改訂】CSIRT解説文・追加&改訂 p.6
【改訂】3Dプリンター 解説文・追加&改訂 p.7
【改訂】RPA 解説文・追加&改訂 p.17
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82
ITの歴史と最新トレンド
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・基本編
*追加・変更はありません。
クラウド・コンピュータ編
*追加・変更はありません。
【講演資料】量子コンピュータ
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82
内容:全3回の講義と演習/受講者と講師のコミュニケーション