【図解】コレ1枚で分かる産業革命の区分
ドイツの産業政策である「インダストリー4.0(第4次産業革命)」に対して、アメリカでは「第3次産業革命」が提唱されています。両者にどのような区分の違いがあるのでしょうか。
まず、インダストリー4.0(第4次産業革命)について見てゆくことにしましょう。
産業革命以前、もの作りは手作業が主体で、水車や馬力などの自然力が一部で使われていました。生産者は、それぞれに仕様を決め、注文生産でもの作りを行っていました。
1764年、イギリスでジェニー紡績機が発明され紡績の生産性が飛躍的向上する。同時期、ジェームズワットによって蒸気機関に改良が加えられ、高効率な動力源としての普及が始まります。このイギリスに端を発する大量生産の時代を第1次産業革命と呼んでいます。
大量生産は、その効率を追求する過程で標準化や規格化を推し進めました。これによって工業化が進み、農業を中心とする社会から工業を中心とする社会へと変貌を遂げてゆきます。この需要を満たすために、労働力は田園地帯から都市部へと移動し、企業化による生産資本の集中、資本家と労働者という役割区分の明確化がすすんでゆきました。
その後、19世紀後半より、石油の普及もあり、内燃機関(エンジン)も動力源として使われるようになりました。さらに、電力が普及し大量生産を支える動力源として広く使われるようになってゆきます。また、標準化や規格化と共に、統計的手法を用いた科学的な管理手法も定着し、生産性や品質の向上に貢献するようになりました。T型フォードに代表される効率化を追求した量産システムの登場や化学産業の台頭など、軽工業から重工業へ大量生産への取り組みが広がりはじめた時代でもあります。これを第2次産業革命と呼んでいます。
1950年代から1960年代にかけて、商用コンピューターの普及が始まります。当初は、事務作業を機械化することが主な用途でしたが、1970年代に入り、もの作りの現場にコンピューターが使われるようになりました。産業用ロボットの普及と相まって生産の自動化がすすめられてゆきます。この時代を第3次産業革命と呼んでいます。その後、コンピューターの利用技術の発展と共に他品種少量生産に対応したフレキシブル・マニファクチャリング・システム(FMS)へと適用が拡がってゆきます。
さらに、インターネットの普及によりネットワーク接続が、低コストで容易になりました。その結果、地域や企業を越える情報の共有と調整、生産に関わるモノの流れの全体最適をめざす、SCM(Supply Chain Management)の適用が拡大します。
その後、自動化や自律化技術の進展を背景に、顧客ごとに異なる個別仕様の注文を量産品と同様のコストと短納期で提供できるもの作りを実現し、競争力を高めようという取り組みが、ドイツで始まりました。これが、第4次産業革命、すなわちインダリストリー4.0です。
これに対し、米国で提唱される第3次産業革命は、上記の第2次と第3次をひとまとめにして第2次産業革命と区分しているようです。第3次産業革命は、時間軸で見れば、ドイツの第4次産業革命と重なっており、同様に標準化・大量生産から個別仕様・個別生産に対応する取り組み「マス・カスタマイゼーション」でもあります。
「マス・カスタマイゼーション」が時代の要請となっているのは、新興国の経済発展とグローバル化が背景にあります。生活水準の向上は消費を拡大させますが、地域によって文化や嗜好は異なり全てを一律同じ商品で対応することはできません。また、市場はグローバル化し、多様なニーズに応えてゆかなければ、ビジネスを成り立たせることができないからです。
これに加えて、消費者自らが、もの作りに関わる「もの作りの民主化」、あるいは個人やコミュニティが、消費の現場で設計し、3Dプリンターを使って「もの作りの個人化・個別化」を実現するという「パーソナル・ファブリケーション」の動きも拡がっています。インターネット、Web、AI、3D(3次元)CAD、3Dプリンターといったデジタル・テクノロジーが支えるこのような取り組みは「デジタル・ファブリケーション」とも呼ばれています。これらを含めて、米国では第3次産業革命と位置付けているようです。
区分の仕方や定義の違いはありますが、デジタル技術を活かし、低コスト、短納期で、もの作りの個人化や個別化に対応し、もの作りの変革を進めようという取り組みであることに変わりはありません。これは、第1次産業革命以前の個別仕様・個別生産という個人に最適化されたもの作りへの回帰とも言えるのかもしれません。
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