セカンドステージを模索される皆さんへ:人のご縁から学んだ3つの教訓
サラリーマンを卒業して今年で22年になる。成功もあれば失敗もあり、極貧で過ごした時期もあった。それでも、こうやって生き延びてこられたのは、人のご縁である。
いろいろとお願いもした。思わぬ人から仕事がやって来た。数多くの失敗もあったが、概ね「プラス・マイナス=プラス」といった収支報告ができそうだ。
「人のご縁を大切にする」などありふれた言葉であり、そんなことは当然だと思うかもしれないが、これは意識、努力しなければできない。私は、サラリーマンをやめるとき、ある先輩経営者にこう言われた。
「ご紹介があれば、誰とでも会うこと。会わないうちから相手を値踏みするな。」
私は、独立してその教えを忠実に守った。もともと、営業という仕事をしてきたこともあり、人と会うことになんら臆するところはない。図々しくも、普通には会えないようなひとにも「紹介」をこじつけて、会うこともあった。
もちろん、1回会って終わりというひとが圧倒的ではあったが、そんな中からかけがえのない友人たちとの出会いもあった。それが、いまの自分を支えてくれている。
そんな多くの人との出会いで学んだことが3つある。ひとつは、「看板の重み」だ。
サラリーマンを卒業して間もない頃、「元IBM」が武器になると思っていた。しかし、看板が外れてしまえば、それが幻想であることを思い知らされた。まず、住宅ローンを全額一括して返せと銀行が言ってきた。これには困ったが、やはり卒業後知り合った経営者が、自分の使っている信用金庫を紹介してくれて、何とか救われた。また、現役の時以上にいろいろな人とお目にかかったが、実績も看板もない私に仕事を頼もうという人は少なかった。
いまのようにインターネットが普及していなかった時代なので、自分の存在を示せる発表の機会は限れていたし、まだ、大会社を辞めた一匹狼に寛容ではなかったこともある。しかし、それでも、自分はIBMの営業としてそれなりの成果をあげてきた自負があったから、この勢いで何とかなるだろうと高をくくっていた。しかし、そんなことが、全くの思い違いであることを思い知らされた。
会社の看板は大きい。それを理解しておくことだ。そして、自分の「社内ではなく社会において認められる価値」とは何かをしっかりと意識し、それを築いてゆくことが大切だと言うことに気付かされた。
看板は自分で作れるものではない。相手が与えてくれるものだ。だからいい仕事をしなくてはならない。その積み重ねの結果として相手が与えてくるのが自分の看板になると言うことを忘れてはいけない。
ふたつ目は、「相手の幸せに貢献する」ことだ。
独立して間もない頃、自分が生きてゆくためには、自分の名前や会社を目立たせ、ブランドを築いてゆかなければならないという使命感に燃えていた。例えば、ある企業がお客様に出す提案書の作成を依頼されたとき、その会社の名前と私の会社名を併記して提出したことがあった。受け取った相手は、少し渋い顔をして「御社名は消させてもらいますね」と言われ、それ以降仕事の相談が来ることはなかった。
後で聞いた話しではあるが、内容は申し分なかったようである。しかし、ここに自分の会社名を表記してくるセンスが嫌がられたようだ。いま冷静に考えてみれば、当たり前の話しだ。相手の仕事の下請けである。そこに図々しく自社名を入れてくるとはいかがなものかと思ったのだろう。
そんなことが何度かあって、気付いたことは「相手を目立たせてあげよう」あるは「相手が評価されるように努力しよう」、そうすれば、喜んでもらえるということ。こんなことは、営業の一丁目1番地だ。そんな基本が分からなくなるくらいに、なんとかしなければと焦っていたのかもしれない。
そんな考え方に切り替えたとたんに仕事が増え出した。そして、同時に「相手の価値を高めることに貢献できる」ことが、自分の社会的価値なのだということにも気付かされることになった。看板ではなく、こんな実力を磨かなくては生き残れないことを、身をもって体験した。
評価するのは相手だ。評価しようとしてもらうのではなく、相手の幸せに貢献して喜んでもらえれば、相手の評価は高まり、自分や会社のブランドは高まる。そんな当たり前に気付かされた。
みっつ目は、「経験を理論化する」ことだ。
最近、ある大手企業を退職され、個人事業主で生計を立ててゆこう、あるいは、自分の経験を活かして顧問として仕事をしてゆこうという人から相談したいと言われ、話しを聞くことになった。かれは、冒頭、自分はこんなビッグ・プロジェクトに関わってきた、あの会社の何とかシステムは自分が作った。あの有名なビジネスは、私がいたからできた。そんな話ばかりだった。私は彼に、次のようなこと問いかけた。
「ところで、あなたの得意分野はなんでしょうか。あなたはお客様のためにどんなノウハウを提供できますか。そのための方法論を持っていらっしゃいますか。」
かれは、そんなものはあるという。自分は経験があるので、いろいろとアドバイスできるという。ああ、これから苦労されるだろうなぁとしみじみ思った。
私自身もかつては元IBMという看板があること、いくつもの修羅場もくぐり抜けてきた自負もあって、まあ、何とかなると思っていた時期がある。しかし、そんな簡単なことではないことを否応なく思い知らされた。
自分の経験は他人の経験とは違う。自分の経験から教訓を学び、それを他の場合にも当てはめられるように理論化できていなかければ、自分経験などお金を生みだす価値などない。
そして、それを文書やプレゼンテーションにまとめてアウトプットできること。あるいは、研修プログラムやコンサルティング・メソッドとして体系化できること。それがなくてはまともな仕事などできないことを思い知らされた。
もちろん、そんなものに完成などなく、自分のこれまでの経験といま向きあっていることを冷静に客観的に捉え、理論化してゆくこと、アウトプットしてゆくことを続けてゆかなければならない。自分の経験をそういう態度で捉えることができるようになり、始めてお金を稼げるようになる。
時代は変わっても、この辺りのことは大きく変わることはないだろう。ただ、こういうことを理屈として、知識として学ぶだけではなく、体感して身体で覚えてゆくことを心がけなければ、実力にはならない。
そのためには、「人のご縁を大切にする」ことだ。自らすすんで「人のご縁」を作ってゆくことだ。全ては、人との関わりを通して与えられることであり、それが結果として自分という人間を育ててくれるのである。
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最新版(7月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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【新規】自動化と自律化の領域 p.15
【新規】人工知能が奪っていくのは、労働ではなく定年かもしれない p.93
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【更新】ウォーターフォール開発とアジャイル開発(2) p.17
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【新規】クラウド・コンピューティング 3つの誤解 p.24〜28
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トピックス編 60ページ
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ITの歴史と最新トレンド編 15ページ
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