会社に戦略がないのなら自分で戦略を作ればいい
「営業力強化はうちの重要施策のひとつです。」
このような話を伺うことも多いのですが、その実態は、掛け声であり、精神論の域を越えていないことも少なからずあります。
営業力を強化して、どうしたいのでしょうか。それ以前の問題として、自分達のビジネスをどのようにしたいとお考えなのでしょうか。そのために、どのような営業としての役割や能力を期待されているのでしょうか。
その戦略がないままに、営業力強化という思いだけが先走りしているように思えてしまいます。
先日、あるソリューション・ベンダーの人材育成担当者と会話したときのことです。彼は、営業に必要なスキルの一覧を示しながら、「わが社に欠けているのは、このあたりの能力なんですよ」と説明してくれました。
そこで、次のような質問を投げかけてみた。
「御社では、クラウド・ビジネスの強化を進めようと、新しい事業戦略を発表されたようですね。また、いろいろなサービス事業拡大を柱とした事業改革も進められていると聞いています。モノや人月をビジネスの中核に据えられてきた御社にとっては、大きな変革だと思うのですが、これから営業にどのような役割や行動を期待されているのでしょうか?」
そこが描ききれていないというのが、彼の答えでした。
拝見した営業スキルの一覧には、プレゼンテーションやコミュニケーション、業界知識や製品知識などのキーワードが並べられていました。確かにトレをとっても営業として身につけておくべき能力です。しかし、その能力が高まったからと言って、顧客を拡げ、案件を増やし、売上や利益を上げることには、直接的な効果はありません。研修を生業とするものが、自分で自分の首を絞めるようなことを言うようですが、このような研修だけでは、営業力の強化はできません。
大切なことは、成果が上がったという実践での実感です。売れる製品やサービス、それをどのようにお客様に遡及するかのシナリオ、きっかけを生みだすマーケティングなどが、うまく機能し、営業は始めて役割を果たすことができます。「営業の能力」だけでは、成果をあげることは容易なことではありません。
成果があがるという実感は、成長の喜びです。成長の喜びがあればこそ、ますます人はその能力を高めようと、自発的に努力します。この成長のサイクルを作ることが、真の営業力強化であると私は考えています。
研修とは、営業力を強化するための手段のひとつに過ぎません。しかし、手段をいくら積み上げても、その先にある目的や営業としてのあるべき姿が見えなければ、それを学ぶ者にとっては、張り合いはなく、いったい何のためにこんなことをやっているのだろうかと、むしろ意欲を下げてしまいます。
あるべき姿と現実との間にギャップがあるのは仕方がないことです。ただ、向かうべき目標があるからこそ、人は、学ぶことに意味を見いだすことができます。そして、学んだひとつひとつが、成果として実感できれば、ますますその意欲は高まるはずです。
何のためにやるのか、すなわち「戦略」です。どのようにやるのか、すなわち「戦術」です。このふたつを遂行するために手段としての営業力強化が必要になります。この一連の物語を描かぬままに、営業の能力にビジネスの拡大を期待するというのは、経営幹部の怠慢としか言いようがありません。
営業力強化は、目的ではなく手段です。しかし、営業力強化が売上や利益と同一視され、いつの間にか目的となってしまっている。この方の話にもそんな意識があったように思います。
研修の機会をエンターテイメントと捉えるなら、研修に満足させ、高いモチベーションを携えて自分の会社に戻らせることは、プロの講師であれば造作もないことです。しかし、「戦略」も「戦術」もない実践の現場に再び放り出され、さあ、研修を受けたのだからそれを活かし、数字を稼げと期待されても、うまくゆくはずはありません。再び今まで通りの日常に引き戻され、研修という「楽しいひとときの思い出」だけが残るだけです。
この「戦略」や「戦術」を会社に期待できないのなら、自分で描けばいいのです。嘆いて、文句を言い、「だからうちはダメなんだ」などと、自分から思考停止に陥る必要はありません。自分の担当する製品やサービス、お客様を追求し、自分の戦略を組み立ててはどうでしょう。社内に期待できなければ、社外にリソースを求めることもできるはずです。そして、実績を示し、社内に成功の物語を認めさせ、受け入れさせてはどうでしょう。それもまたひとつの「戦略」です。
ビジネス環境が急速に変わり始めています。クラウドや自動化の潮流は、人月ビジネスの機会をどんどんと無くしてゆきます。「まだ大丈夫」が、「もう手遅れ」にならないうちに、時代にふさわしい「営業力」に作り替える必要があります。
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テクノロジー・トピックス (51ページ)
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