講義や講演を依頼をする/されるとはどういうことなのか
「IoTについてわかりやすく話して頂けないでしょうか」
「〜について話をして欲しい」といったご依頼をいだくことがよくあります。私は、このようなカタチでご依頼を頂くと、必ず次のような質問をします。
「どのような方が対象になるのでしょうか。また、私が話すことで、どのような結果を得たいとお考えですか。」
話す相手の前提知識、どのような立場で何をしている人たちなのか、年齢層や関心事は何かによって、話す内容や展開を変えなくてはなりません。例えば、ユーザー企業の経営者や事業部門の人であれば、ITについての前提知識があまりないことを前提に、自分たちのビジネスとITの関係やITの基礎的用語についても触れなくてはなりません。IT業界の人であれば、そのような話しはしないで、業界の話題やテクノロジーの詳細について話をした方がいいでしょう。
また、「結果として何を期待するか」は、話しの展開を組み立てる上で最も重要な情報です。例えば、自社製品の紹介につなげたいのであれば、その製品について理解して、それが必要な世の中のトレンドやビジネス・ニーズを話さなくてはなりません。また、ビジネスを立ち上げるきっかけを持ちたいというのであれば、現状についての危機感を煽り、彼らのビジネスとの関係や成功のための筋道を示すとことが必要になります。
ここを曖昧なままにお引き受けすると、依頼者の期待を裏切ることになってしまいます。
話す相手は決まっているけど、期待する結果が曖昧な場合は、まずは依頼者と議論してゴールを明確にし、それを合意するようにしています。
誰を相手に、どのような結果を出したいのか
これに自分がコミットできるかどうかで、引き受けるかどうかを決めています。ですから、「エンジニアを対象にして、すぐにでも使えるスキルを教えて欲しい」ということになると、残念ながらバックグラウンドが違うので、もっとふさわしい方を紹介するか、お断りしなくてはなりません。
内容や展開については、あまり細かなご指示を頂かなくてもこなせます。正直を言えば、任せて欲しいと思っています。結果にコミットでき、「IoT」や「AI」といった分野を指定してもらえれば、あとは内容や展開はお任せ頂ければ大丈夫です。もちろん、「話して欲しくないこと」については、事前に聞いておくようにしています。例えば、私が基調講演で「トレンド」を話して、続いて自社製品の紹介につなげたい場合は、「競合製品についての言及はしないで欲しい」ということになるでしょう。期待する結果について合意を得る過程で、その点についても触れるようにしています。
「資料ができたら内容を確認しますので事前に見せて下さい」
このようなご依頼にはつい身構えてしまいます。お見せするのは何も問題はありません。しかし、その資料に対して「ここの表現はこうして欲しい」や「ここはこのような絵にして欲しい」といった、本人の主観による依頼には閉口します。「〇〇はこの説明としてはふさわしくないので、他の説明にして欲しい」といった偏った知識や見識不足からくる指摘も、それをいちいち説明しなくてはならず手間のかかる話しです。また、説明を返すと、だいたいの場合、それに対する相手の言い訳が返ってきます。それにも応えなくてはならず、本当に気が滅入ります。
依頼者は、任せたことでその責任を負うことになります。だからこそ、期待する結果について徹底して議論し合意することは是非とも必要です。しかし、内容や展開については、自分たちではできないから外部に任せるわけであり、そこに信頼がなければ、一体何を任すというのでしょうか。自分の思うような資料作りの力仕事を外注するというのであれば、最初からそういっていただければ、他の人を紹介するかお断りしています。
もちろん、任された方も相手の期待に応えなくてはなりません。仕事としてお金を頂く以上は期待以上の結果を出すことは当然のことです。だからこそ、対象者と結果を合意し、そのゴールに導くための筋道をデザインし、内容と展開を組み立てます。いわば作品を作るわけです。これは決して芸術家の創作ではなく、依頼者の意向をデザインした作品です。その前提が違っているというご指摘であれば、これは真摯に受けとめて、ゴールを再設定しなくてはなりません。しかし、依頼者の主観や浅学、間違った知識に基づく指摘は、作品の否定でしかなく、外部に任せる意味のないことです。
依頼するというのは覚悟のいることです。任せるに値するか、まずは徹底して議論して相手の考えや能力について目利きをしなければなりません。一方で依頼される方も相手の期待を明確にし、合意できるように促さなくてはなりません。その前提を怠れば、残念な結果になることも少なくはありません。
初めての依頼先の場合、疑心暗鬼になるのは仕方のないことですが、任せた以上は覚悟を決めてもらいたいですね。ダメなら、二度と頼まないし、悪口を言いふらしてやるくらいのところで留めておいて頂いて、まずは任せてみて欲しいものです。任される側もそうなっては困りますから必死です。
依頼者が見極めるべきは、その覚悟が相手にあるかどうかなのだと思います。
最新版(2月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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*ビジネス戦略のチャートと解説を充実させました。
*人工知能の動画事例を追加しました。
*大手IT企業の現場改善大会での講演資料を掲載しました。
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ビジネス戦略編 106ページ
新規チャートの追加と解説の追加
【新規】ビジネス・プロセスのデジタル化による変化 p.6
【新規】ビジネスのデジタル化 p.17
【新規】ビジネス価値と文化の違い(+解説) p.19
【新規】モード1とモード2の特性(+解説) p.21
【新規】モード1とモード2を取り持つガーディアン(+解説) p.22
人工知能編 98ページ
【新規】Amazon Alexa (+解説) p.18
【新規】動画での事例紹介 Amazon Go p.94
【新規】動画での事例紹介 Amazon Echo p.95
【新規】動画での事例紹介 Tesla p.96
【新規】動画での事例紹介 Nextage p.97
IoT編 93ページ
LPWAについての記載を追加、また日米独の産業システムへの取り組みについて追加しました。
【新規】LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの位置付け p.47
【新規】ドイツでインダストリー4.0の取り組みが始まった背景 p.82
【新規】アメリカとドイツの取り組みの違い p.88
【新規】インダストリー・インターネットのモデルベース開発 p.90
【新規】日本産業システムが抱える課題 p.91
インフラ編 294ページ
【新規】Googleのクラウド・セキュリティ対策 p.72
基礎編 50ページ
変更はありません。
開発と運用編 66ページ
全体の構成を見直し、チャートや解説を追加しました。
【新規】自律型の組織で変化への柔軟性を担保する p.20
【新規】超高速開発ツール(+解説) p.37
【改定】FaaS(Function as a Service)に解説を追加しました p.39
トレンド編
変更はありません。
トピックス編
変更はありません。
【講演資料】変化を味方につけるこれからの現場力
大手IT企業の改革・改善活動についての全社発表会に於いての講演資料。
・実施日: 2017年1月25日
・実施時間: 90分
・対象者:大手IT企業の改善活動に取り組む社員や経営者
詳しくはこちらから
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
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