体験と経験の違い、そして教訓を生みだす力
「自分はこんな仕事をしてきました。」
「このシステムは自分が作りました。」
「このお客様は自分が担当しました。」
では、そこから何を学び、どのような教訓や知恵、ノウハウを得たのだろうか。
実際に身体を動かし感じたことを「体験」と呼ぶ。その体験を分析的に捉え、うまく仕事をこなすための手順やノウハウとして、自分に取り込むことができて「経験」となる。そして、その経験を言葉にして、伝えられるようになると「教訓」となり、その教訓を体系化し、わかりやすい言葉や絵にして伝えられるようになれば、その人は「教師」と呼ばれる。
自分の体験を経験として活かせない人がいる。確かに多くの体験をされたのであろう。その苦労話に心を打たれ、なるほどと思う。しかし、だからといって、それが他の人にとっても役立つ法則やノウハウとして一般化されなければ、他の人たちの役には立たない。これが分かっていない人がいる。
「オレが若い頃はこうだった」や「オレはこんな仕事をやって来た」という。それはすばらしいことなのだが、だからなんだというのだ。相手に何かを伝えたい、気付かせたいという気持ちは分かるが、「体験」談に留まってしまえば単なる自慢話であり、教訓を与えることはできない。
自分の体験や得た知識を分解し、沢山の要素の中から価値のあるものを拾い上げ、それを抽象化、一般化できて経験となるわけだが、そういうプロセスを踏まないままに、体験だけを事実として伝えるだけでは、人に影響を与えることはできず、自分の社会的な価値を高めることは難しい。
それができないから悪いと言いたいわけではない。そういう生き方もある。それで幸せな人もいる。しかし、もしビジネスで自分の価値を高めてゆきたいと思うのであれば、「体験」に留まることなく、経験から教訓へと昇華させる能力を磨く必要があるだろう。
たぶん「職人」という人たちは、言葉ではなく、ここでいう「教訓」を具体的なモノやカタチにして、次に伝えられる人たちのことを言うのかもしれない。
他人の体験を分析的に捉え、自分の経験へと昇華させてゆく人もいる。理解する、分かるとはそういうことを言う。「理解」の「理」とは、理由や道理を意味する。それを「解」、すなわち、バラバラにしてみることを意味する。つまり、理解とは、ものごとの理由や道理をバラバラにして観察し、そこに何らかの規則性を見出そうという行為だ。「分かる」もまた、ものごとを分けるということで「理解」と同様の意味を持つ。
理解力が高いとは、ものごとをバラバラにできる「分解能」が高く、それを一般化し、規則や法則して組み立て直すことができる「構成力」が優れていることを言う。生まれながらに、その能力が高い人もいるが、多くは、そういう意識を持って物事を捉えることを心がけてきた成果と言えるだろう。
自分の体験を経験に、経験を教訓に。そういう日常の心がけが、自分を成長させるということを忘れてはいけない。
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【新規】統合システム(Converged System)の分類 p.191
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【テクノロジー・トピックス編】
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【ITの歴史と最新トレンド編】
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【ビジネス戦略編】
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