営業という魅力的な商品を作る
「この人なら任せられる。是非仕事をお願いしたい。」
こんなことをお客様から言われる営業は、あなたの会社には何人いるでしょうか?
既存ビジネスで圧倒的な競争優位がなくても、確実に利益をあげ、継続的な売上拡大を続けている企業があります。そういう企業に共通するのが、営業人材の「魅力」です。言い換えれば「魅力的な営業」という商品を作り、それを売りにしている企業です。
私は、究極の営業力とは「競合を作らない力」だと考えています。つまり、ITのことなら最初に相談される相手になることです。そうすれば、競合に話しが行く前にお客様と話を進めることができるわけで、競合など生じません。まずは自分たちに確実にビジネス・チャンスが与えられます。そして、できないところを他社で補えばいいのです。これほど効率のいい営業活動はありません。
売り込みをしなくてもいくらでも仕事が舞い込んでくる。評判を聞きつけて、お客様が増えてゆく。そういう営業人材こそ「究極の商材」ではないでしょうか。そんな「究極の商材」には、次の3つの特徴があります。
対話力があること
相手の話しをただ鵜呑みにするのではなくしっかりと斟酌しながら自分の考えを述べ、相手の意図や考えをうまく引き出す「対話力」です。
対話力のないダメ営業の典型的「勘違い」は次の3つです。
- 自分の言葉をまくし立て相手に言葉を発する余地を与えない。あるいは、自分がうまく話せたことに酔いしれ、自分はできる営業だと勘違いしている。
- 一見謙虚にあるいは素直に相手の言葉にうなずき理解しているかのような素振りを見せ、「なるほど、ごもっともです。しかし・・・」といって、相手の発言とは無関係に自分の言いたいことをぺらぺら話し出す。本人は、パフォーマンスとして「素直さ」を演出しているに過ぎず、相手の話など訊こうとはせず、自分言いたいことを言うことが自分の仕事だと勘違いしている。
- 資料が汚い。なぜ汚いかというと、「相手にわかりやすく、理解してもらえるように伝えよう」という意欲が欠如しているから。つまり、相手の納得を前提とせず、なんとかこちらの想いを貫こうという強行突破の精神でアプローチしているからだ。そのため資料を緻密に設計し組み立てることを怠り、雰囲気で勝負しようという想いが根底にある。たとえ気の弱い相手を一時的にその気にさせることで、自分はできる営業だと勘違いしている。
新入社員であれば、まだ開発の余地があるでしょう。しかし、ある程度歳を重ねると「変なプライド」が邪魔をして容易にこの勘違いを認めてはくれません。もちろんその他の知識や経験は確かに武器となるかもしれませんが、ビジネス環境が日々大きく変化する時代に「変なプライド」が重石になって素直さや柔軟性を欠くようでは、「ある特定の分野では嵌(は)まる」けど、つぶしがきかず将来を託せない人材となってしまいますので、注意が必要です。
勉強好きなこと
ビジネス環境やテクノロジーは日々変化しています。いまこれが使えても明日が同じ訳はなく、それは変化し続けます。詳細を全て理解することはできないにしても、その脈絡や世の中にもたらす影響や顧客価値を理解できなくてはなりません。
「営業はお客様の3年後に責任を持つ仕事」
よくそんな話をします。その心は「いまの提案が採用されればお客様は3年後もそれを使っています。3年後に陳腐な存在となっていればお客様の信頼を失うことになるから」なのです。
いま何ができるか、いま何を知っているのかは、それはそれで大切なことですが、常に好奇心を持ち学び続ける「勉強好き」でなければ変化に追従できません。
人間好きなこと
「一緒に仕事をしたい」、「一緒にいて心地いい」、「一緒にいると元気になる」
営業にはそんな力が必要です。そうなるためには「基本は笑顔」、「弾む会話」、「夢を語る」といったことが大切な要素でしょう。そして、なによりも「想像力」です。相手の状況を想像し、そして共感し、相手の感情や立場を理解しようとする「思いやり」があるかどうかです。
- 自分の発言が相手の行動や感情にどのような影響を与えるかを想像できること。
- 相手の言葉の裏側にある真意を想像できること。
- 相手がどうなれば幸せになれるかを想像できること。
そういう能力が大切になります。
ここに掲げた3つの要件を満たす人材など簡単には見つかりません。だから「魅力的な営業」という商品開発をしなくてはならないのです。プランに裏付けがなく、思い込みだけの新規事業開発に労力を割くよりもよほど効果的です。
まずは、「こういう営業」という求める人材イメージというかコンピテンシーを明確に定義してみてはいかがでしょう。刹那的にプレゼンテーション力が不足しているから、提案力が欠如しているから、知識が不足しているから、だからこんな研修をやろうではなく、ゴールのイメージを明確に定義し、その手段として研修を組み立てるといった考え方が合理的です。
また、これは採用や研修という視点からの見方だけではなく、既に営業として活躍されている皆さんは、自分なりの「営業のあるべき姿」を自ら定義し、そこに向けて何をすべきかしっかりと描くことです。
「営業という魅力的な商品を作る」
そんな取り組みを始めてみては如何でしょうか。
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