相手には分かっていても、それを「おお」と言わせなければなならない。それが「型」あるものの宿命
「羽生結弦3連覇 また世界最高点更新 GPファイナル」
鳥肌が立つとはこういうことを言うのだろう。「異次元の演技」というにふさわしい見事な演技だった。
彼は、グランプリ・シリーズに臨む当たりフリーの曲として野村萬斎が主演した映画「陰陽師」のテーマ曲を選んだ。そして、GPシリーズが始まる前、野村萬斎との対談で次のようなアドバイスを受けていた。
「狂言では、型として受け継いだきたものができないとスタートラインに立てません。誤作動しないように型にはめ込んで、いつでもオートマチックに出来るようにすることが型のあり方なのでしょう。」
基本動作を徹底的に覚え、意識しなくても自然にできるようにすることで、はじめてスタートに立てる。羽生もまた子どもの頃から徹底的に基本動作を学んできたという。そのしっかりとした土台があるからこそ、安心して彼の演技を見ることができるのだろう。「型」を極めるとはこういうことをいうのだろう。しかし、それだけでは、観客は満足しない。
「これはこう跳ぶんだと、お客様には分かっていても、それを「おお」と言わせなければなりません。それが型あるものの宿命です。お客様が期待されること以上のことを、本当に以上かどうかは分からないけど、そのときのお客様が思った以上の上を見せることができなければなりません。」
彼らには及ぶべくもないが、講義や講演に臨むに当たっても、やはり同じことを考えている。同じテーマであり、使うプレゼンテーション資料が同じであっても、常に新しさを感じさせ、同じ人が聞いても飽きさせてはいけない。それが講演者のあるべき姿なのだろう。
そのためには、「型」であるプレゼンテーション資料を徹底して作り込み、美しさと論理性を追求する。また、話すときの台詞や展開を自然と口をついて出てくるようにしておかなければならない。また、言葉の曖昧や矛盾に気が付けばそれを排除し、図表にも磨きをかける。そうやって、プレゼンテーションの完成度を常に上げ続けてゆくことが、「型」を極めると言うことになるのだろう。
また、「おお」といわせるためには、お客様との対話が欠かせない。こちらの準備した「型」を相手に押しつけるのではなく、相手の反応に合わせて話し方や展開を変えてゆく。
聞いている人の頷(うなず)き、疲れ具合、こちらを見る目、メモのとり具合、集中の度合いなどで、スピードや間の取り方を変えたり、丁寧に説明したり、はしょったりと演出を変える。また、直接関係のない雑談や受講者の会社の社長や上司の悪口などもあえて入れてみることで、場を和ませたりもする。そういう場の空気を感じながら、説明の強弱、緩慢をコントロールすることで、相手をこちらのペースに乗せてしまう。そうすれば、相手はその場を新鮮に感じることができ、例え予め用意された「型」であったとしても、「おお」と言わせることができるのだ。
いつでも人が違い場所も違う。その都度、その場に真剣に向き合わなければ、場を感じることも、コントロールすることもできない。まさに、一期一会でなくてはならない。
もちろん、私がこのようにできている訳ではない。「ああ、しまった」の連続だ。そして、きょうはどうだったかといつも心配でたまらない。アンケートは怖いし、主催者のコメントもビクビクものだ。その心配こそが、「あるべき姿」に近づけてくれる私にとっての講師なのだと思っている。
さて、今日もひとつの講演とひとつの講義を控えているが、はたして「あるべき姿」にどこまでちかづけるだろうか。また、何かを学べればと願っている。
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今月の目玉は、「オンプレからパブリッククラウドへの移行」について、ドキュメントを追加しています。移行をご検討のユーザー企業・情報システム部門の方は企画書や経営会議の資料として、SIerの方はお客様の提案資料としてご利用頂けると思います。
なお、今月より「テクノロジー編」を「インフラ&プラットフォーム編」と「サービス&アプリケーション編」の2つに分割致しました。(全438ページとなり資料探しに手間がかかるようになったため)
【インフラ&プラットフォーム編】(246ページ)
- ハイブリッド・クラウドについて、各社の取り組みを比較しやすいように資料を作り直しました。P44
- PaaSについての解説をわかりやすく修正しました。p.55-56
- 「パブリッククラウドへの移行の勘所」と「パブリッククラウド移行の企画書・提案書の作り方」の章を新しく追加しました。SIerにとっては顧客提案資料として、また、ユーザー企業の方は経営会議や企画会議の資料としてご利用頂けると思います。p.77-94
【アプリケーション&サービス編】(192ページ)
- 誤字・脱字等を修正しました。内容に大きな変更はありません。
【ビジネス戦略編】(74ページ)
- 「SI事業者の成功要因の変化」を追加致しました。
- 「PEST分析と5フォース分析で見るクラウド化」を追加しました。
- 「事業再構築の逆Cカーブ」と「SIビジネスへの適用」を追加しました。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン