相手が分かってくれないのは、自分の伝え方が悪いからだ
「わかりやすく教えているか?」
講義資料を作るとき、あるいは、講義を行っているとき、ふとこんな言葉が脳裏に浮かびます。
講義資料を作るという作業は、私にとってはとても楽しい作業です。講義のストーリーを描き、それにふさわしい内容を考え、情報を収集し、ドキュメントに仕立ててゆきます。とてもクリエイティブな作業で、いつも新鮮な驚きと気付きを得ることができるからです。しかし、講義というのは、お客様商売です。自己満足であってはいけません。自分の想いや感情を如何に表現するかを追求するアーティストではありません。前提知識も異なる様々な相手に分かってもらわなくてはならないのです。
そんな目線で改めて自分の作った資料を眺めてみると、「きれいには描けているが、わかりにくい」資料であることに「やっちまったなぁ」と苦笑することもしばしばです。
わかりやすい資料とは、次の3つの条件が整っていなくてはなりません。ひとつは、一番伝えたいことだけではなくその背景を伝えていること、ふたつ目は、論理的に矛盾がないこと、最後は、論旨に矛盾がない図表やイラストを描くことです。
自分が分かっていることを、相手も分かっているとは限りません。しかし、資料作りしていると、ついそんな当たり前がどこかにいってしまい自分のエンターテイメントと化してしまいます。だから気持ちよく作った資料を改めて見直し、「これ、わかりやすいだろうか?」と自問してみるのです。そうすると、「これはちょっと・・・」となるわけで、そんなときには改めて手を入れるようにしています。
時間に追われ、そんな余裕がないときももちろんあるわけですが、それを言い訳にするのもカッコウが悪いので、いつも言い訳をしてぎりぎりまで資料の提出を先延ばしして頂いたり、資料は講義後に配布すると言ったりして、ごまかすこともしばしばです(笑)。
さて、講義のしゃべくりも気を遣わなくてはなりません。元来おしゃべりな私ですから、人前で話をすることはまったく苦ではありません。ただ、つい調子に乗って、自分がしゃべっていることに酔いしれしまったり、限られた時間の中で話し終えることが目的となってしまったりすると、相手の反応を見ていないことがよくあります。また、何度も話している内容であると、意識などしなくても言葉が自然と出てきます。そんなときは、ブロワーで勢いよく機械的に風を送り出しているようなもので、ふと我に返ると、何を伝えていたのかが記憶から消えていることもあります。なんとも、後味の悪いものです。
「わかりやすく教える」ためには、対話がなくてはなりません。対話とは、質問をするとか、議論するとか、実際に言葉を交わすことばかりではありません。こちらの話したことへの相槌やメモをとっているかどうかとった相手の反応を受け取り、説明のスピードを変えてみる、あるいは、補足的な説明を加えてみると言った応対も対話と言えるでしょう。また、企業研修などで話をさせて頂くときには、相手の会社の製品やサービス、ニュースも調べておき、そんな話題を講義の中に織り込むことも対話の一環です。
「伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実を追求する」
「わかりやすく教える」とは、この目的を達成する取り組みです。自分の知っていることを話せばいいというものではありません。場を盛り上げ、経ったままでのディスカッションや事前課題などの話に集中してもらうための演出も「伝わったという相手の真実」を追求するためには必要なことだと思っています。
こんなことを書きながら、いつも同じ反省を繰り返している自分ですが、「相手が分かってくれないのは、自分の伝え方が悪いからだ」という想いの筋だけは、通し続けたいですね。
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【テクノロジー版】(406ページ)
*クラウドとIoT、BIについて新たなチャートを追加、5G(次世代通信網)についても新たな章を追加しました。
・プライベートクラウドについて、オンプレミスとホステッドの違いを解説した新たな資料追加しました。P39-40
・Infrastructure as Codeについて新たなチャートを追加しました。p.125-127
・IoTの説明順序を入れ替えると共に新たなチャートを8枚追加しました。p.207-209
・BIとAIの違いを説明したチャートを追加をしました。p.318-319
・5G(次世代通信網)の章を追加しました。p.384-395
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン