物語としてのテクノロジー 使える知識にするために大切なこと
「ITの最新トレンドとビジネス戦略」という研修をしているのですが、そのご依頼を頂く機会が最近増えています。先週も大阪と東京で1日研修をやらせて頂きました。それだけ、時代の変化が読みづらくなったということかもしれませんし、また、これまでの常識の延長線上にビジネスが描けないという危機感もあるのかも知れません。
私は、1982年にIBMに入社し、気がつけば33年間、この業界で仕事をしていますが、ここ数年の変化は、かつてとは大きく異なっていると感じています。スピードが速くなったとか、コストが下がったとかの量的な変化ではありません。ITの適用領域がこれまでに無く広がり、社会や生活の隅々にITが深く浸透したことで、人のつながりや価値観といった質的側面にITが大きな影響を与えるようになったということです。しかし、その変化は、意識しなければ、なかなか気がつくことはありません。
「あなたは何台のコンピューターを持っていますか?」
研修の冒頭でこんな質問をさせて頂くと、多くの方が「一台か二台」とお答えになります。私は、「皆さんは、貧乏ですねぇ」と申し上げ、「私は少なくとも10台は持っていますよ」と自慢するのです(笑)。
確かにノートPCやスマホをコンピューターと考えれば、私も数台しか持っていませんが、冷蔵庫や洗濯機、自動車や時計、掃除機やクーラーなどに組み込まれたコンピューターまで数え上げるとすぐに10台くらいにはなってしまいます。私たちは、知らず知らずのうちにそんな「アンビエントなIT」の時代に生きているのです。アンビエントとは、「周囲や環境の中に」といった意味ですが、そんなコンピューターが、いつの間にかインターネットにつながっているかもしれません。IoTは、こんなふうに知らず知らずのうちに私たちの生活に深く浸透してゆくのかもしれません。
変化の内容がどれほど劇的であっても、変化は、それを見ることを意識しなければなかなか見えません。また、変化は「時間」を含んでいます。だから、いま起こっていることを平面的に捉えるだけでは、その意味や価値は分かりません。テクノロジーのキーワードについて、辞書のような解説を学んでも、なかなか理解できないということです。
歴史として変化を捉え、そこにどのような因果関係の連鎖があるのかを知ることが大切です。そして、そこにどのようなパターンがあるのか、どのようなメカニズムが働いているのかを理解することが大切です。
物語として伝えること
そのテクノロジーが注目されるのは、そのテクノロジーが存在するからではなく、それを必要とする理由があったからです。その必要を生みだす背景には、ビジネスや社会の変化があり、その変化に伴う過去と現在、未来のギャップを埋めたいという要請がテクノロジーの「必要」を生みだしてきたのです。この物語を知ることで、テクノロジーの意味や価値がはじめて分かります。だからテクノロジーは「物語として伝えること」が大切なのだと思っています。冒頭に紹介した研修でも、そのことには心がけています。
物語の文脈の中でテクノロジーが語られてこそ、記憶として定着し、人にも伝えられるようになります。それが、知識というものなのだとおもいます。もちろん、テクノロジーをパラメーターやコード、原理として知ることも大切です。そうでなければ使えません。しかし、せめて営業やコンサルは、お客様にとってのテクノロジーの価値を、経営や業務の文脈の中で物語として伝えることができなければ、役割を果たせません。
物語を知ることは、過去を整理することばかりではありません。この先に起こる未来についても考える方向を示してくれます。
歴史を見れば、大きく変わってしまうものと、繰り返し起こる出来事が見えてきます。特に「繰り返し起こる出来事」をパターンとして捉えることができれば、次にどのような変化が起こるかを考える切っ掛けを与えてくれます。このパターンが物語の「筋」であり、筋の見えない物語はとても退屈です。
お客様への提案や新規事業の企画は、このパターンの変化を先取りし、それを物語として描くことです。それを実行すれば、お客様や自分たちの未来を先取りし、成功のチャンスを与えてくれるのです。
テクノロジーを物語として捉えること
そんな視点で、いろいろな情報を読み解いて行けばどうでしょうか。なぜそうなったかだけではなく、これからどうなろうとしているのかが、よく見えるようになるかもしれません。
11月21日(土)第3回 「IT×災害」会議に参加されませんか?
ITに関わる人たちが、これからの災害にどんな役割を果たせるのか、そんなことをみんなで一緒に考えようというイベントです。お子さんを連れでのご参加も大歓迎です。
エンジニアばかりでなく、経営者や営業、マーケティング、そしてITに関心を持つ学生も集い、様々な立場から意見出し合います。また、当日は、炊き出し訓練として「芋煮会」を開催します。
定員になり次第締め切りとなりますので、ぜひご関心のある方は、早々のお申し込みをお願い致します。
詳しくはこちらをご覧下さい => 第3回「IT×災害」会議
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2015年11月版】
*** 全て無償にて閲覧頂けます ***
最新版【2015年11月】をリリースいたしました。
【テクノロジー版】(406ページ)
*クラウドとIoT、BIについて新たなチャートを追加、5G(次世代通信網)についても新たな章を追加しました。
・プライベートクラウドについて、オンプレミスとホステッドの違いを解説した新たな資料追加しました。P39-40
・Infrastructure as Codeについて新たなチャートを追加しました。p.125-127
・IoTの説明順序を入れ替えると共に新たなチャートを8枚追加しました。p.207-209
・BIとAIの違いを説明したチャートを追加をしました。p.318-319
・5G(次世代通信網)の章を追加しました。p.384-395
【ビジネス戦略版】(67ページ)
*内容の改訂はありませんがありませんが、グラフの内容やその単位などをわかりやすく書き換えました。
新入社員研修でご採用頂いています
「情報と処理の基礎は教えているが、クラウドやIoT、
ビッグデータは教えていません。」
そんなことで新人達が現場で戸惑いませんか?
平易な解説文と講義に使えるパワーポイントをセットにしてご利用
「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン