変化の激しいIT業界に関わる私たちの学び方についての一考察
ITソリューション塾は今期で7年20期を向かえ、これまでに千人を超える人たちにご参加頂きました。なぜ、それほどまでに多くの皆さんにご参加頂けたのかを冷静に考えてみると、この塾で一貫して掲げているポリシーが、多くの皆さんに共感していただけたからではないかと思っています。
「物語としてトレンド理解すること」
クラウドが今これほど注目されているのは、クラウドの存在が最初にあったからではありません。クラウドを求める世の中のニーズがまずあって、それがクラウドというテクノロジーやビジネス・モデルを受け入れたからなのです。クラウドの登場は、そのニーズをさらに際立たせそのテクノロジーとビジネスを洗練させ、普及させてゆきました。そして、そこから生まれた新たなニーズは、新たなテクノロジーやビジネスの登場を促し、やがては今のクラウドを取り込み、置き換わってゆくのかもしれません。
クラウドの登場は、1950年代から1960年代に始まるビジネス・コンピューターの歴史から考えてゆくととてもよく理解できます。そこに「なるほど、そういうことだったのか」と膝を打つことができて、その意味や価値を理解することができるのです。
ITに関わる営業やエンジニア、事業企画や戦略を考える方、ユーザー企業の情報システム部門の方など、参加者は多彩です。そういう人たちに一貫しているのは、「ユーザーの3年後に責任を持っている」ことです。いま提案したシステムをユーザーは3年後も使っています。これから仕掛けようとしている新規事業は3年後の経営に貢献してなければなりません。その役割を果たすためには、トレンドを歴史、すなわち時間軸に沿った物語という観点から学び、そこに内在する規則やメカニズムを知らなければなりません。それは、3年後の未来を知る手掛かりを与えてくれます。
また、言葉と言葉の関係や構造といった広がりの物語も合わせて知ることが大切です。例えば、IoTとビッグデータと人工知能がどのような関係にあるかについてです。あるいは、データセンターと仮想化とSDIとの関係です。これらにどのような依存関係や補完関係があるのか、そして、どのような階層や体系を作っているのかを知ることで、お互いの役割や機能を知り、そこに生みだされる全体の役割や機能、そして価値を知ることになるのです。
時間軸という縦軸と広がりという横軸によって作られる空間にひとつひとつの言葉が位置付けられるとき、それが私たちの生活やビジネスにどのような価値を与えてくれるのかを考える切っ掛けを与えてくれるのです。この空間を見える化することが、この塾の役割なのだと考えています。
塾では毎週「事前課題」を提供しています。例えば、「アナリティクスと人工知能」の講義の事前課題は次のような内容です。
- 機械学習と人工知能の関係について説明して下さい。
- 機械学習にブレークスルーをもたらしたディープラーニングは、それまでのニューラルネットとどのように違うのかを説明して下さい。
- 人工知能の普及は、貴方のビジネスにどのような変化を強いるでしょうか。その可能性について、整理して下さい。
これを完全な文章、つまり、言葉の断片を書き留めたメモではなく、人にも説明できる物語として書いてくるように求めています。これも、言葉を独立孤高の存在として理解するのではなく、物語として理解してもらうための取り組みです。そして、自分の組み立てた答えを講義の内容に照らし合わせ、自ら正解を見つけてもらおうとしています。
正解は説明しません。それは、もやもやした不完全さや疑問を持ち続けて欲しいからです。何らかの正解を与えてしまうと、そこで思考は停止し意識から消えてしまいます。完全な正解などありませんし、講師にもそんな能力はありません。だから、こういうことに興味を持ち続け、関連する言葉が出てきたときに、そこに飛びつき何とか埋めたいという好奇心を煽ることで、学ぶことへの意欲を持ち続けて欲しいと考えているからです。
トレンドを学ぶことは、「物語」を知る取り組みです。ネットや雑誌で飛び交う様々な言葉をどのようにして自分の物語に取り込むかの試みです。そんな積み重ねが、変化の激しいIT業界に関わる私たちの学び方なのではないかと思っています。
11月21日(土)第3回 「IT×災害」会議に参加されませんか?
ITに関わる人たちが、これからの災害にどんな役割を果たせるのか、そんなことをみんなで一緒に考えようというイベントです。お子さんを連れでのご参加も大歓迎です。
エンジニアばかりでなく、経営者や営業、マーケティング、そしてITに関心を持つ学生も集い、様々な立場から意見出し合います。また、当日は、炊き出し訓練として「芋煮会」を開催します。
定員になり次第締め切りとなりますので、ぜひご関心のある方は、早々のお申し込みをお願い致します。
詳しくはこちらをご覧下さい => 第3回「IT×災害」会議
*** 全て無償にて閲覧頂けます ***
最新版【2015年10月】をリリースいたしました。今回の目玉は、最新ITトレンドを俯瞰するチャートの追加、IoT関連のチャートの追加、ビジネス戦略の内容刷新とSIビジネスを分析したチャートの追加です。
【テクノロジー編】(379ページ)
- 「デジタル化の歴史」を追加しました。
- サイバー・フィジカル・システムについて、既存のチャートを修正し、さらに新たなチャートを追加しました。
- IoTについてのチャートを追加しました。
- IoTのもたらすパラダイムシフトについてのチャート
- フォグ・コンピューティングのチャート
- 「クラウドにつながるとモノはインテリジェンスになる」チャート
- 人口知能(ティープラーニング)についてチャートを追加しました。
【ビジネス編】(67ページ)
- 新たに「SIビジネスの現場や課題」の章を立て、8枚のチャートを追加しました。
- 成長してきたSI産業
- SI事業のコスト構造
- SI企業のアドバンテージ・マトリクス分析 など
- 新たに「SIビジネスのが直面する現実」の章を立て、既存のチャートと4枚の新しいチャートを加えました。
- シチズンインテグレーターとの競合
- グローバル競争との対峙・新たな競争原理
- 異業種との競合 など
- 新規事業の立ち上げについて、一部内容を見直し、新しいチャートを加えて再構成しました。
新入社員研修でご採用頂いています
「情報と処理の基礎は教えているが、クラウドやIoT、
ビッグデータは教えていません。」
そんなことで新人達が現場で戸惑いませんか?
平易な解説文と講義に使えるパワーポイントをセットにしてご利用
「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン