【図解】コレ1枚で分かる人工知能(統計的アプローチとディープ・ラーニング)
昨日に引き続き、今日も「コレ1枚」にまとめてみた。テーマは、人工知能の2つの手法について。
ひとつは、「統計的アプローチ」と言われる手法だ。例えば、cat、dog、birdの違いを識別できる人工知能を実現する場合を考えてみよう。人間が、それぞれに相当する写真を区別して読み込ませる。大量の写真を使って、これを繰り返すことで、cat、dog、birdを区別する基準を人工知能に作らせる。そこに未知の写真を読ませ区別させようとすると、自ら作った評価基準に照らし合わせて、「catである可能性が最も高い」と判断し、「cat」と回答する。
これに対し、「ディープ・ラーニング」では、cat、dog、birdの区別なく、大量の写真を読み込ませることで、それぞれを区別する「概念」を自ら創り出す。未知の写真を読み込ませると、自ら作った「概念」に照らし合わせcatに相当すると判断する。名前を答えさせるためには、人間がそれを教えなくてはならないが、「概念」を創り出すことは、人工知能自身が自ら行う。
前者は、「弱いAI」と言われ、「知的活動を再現する」アプローチのひとつだ。この考え方は、知的活動を再現するのに、わざわざ脳の活動を再現するのではなく、結果として、知的活動と同じことができれば良いという考え方だ。例えば、馬のように走りたいから「馬」を作るのではなく、「自動車」を作ろうという考え方に似ている。
一方、後者は、「強いAI」と言われ、「脳の活動を再現する」アプローチで、脳の活動そのものをコンピューター上にシミュレートさせようという取り組みだ。脳は、1000億個を越える神経細胞(ニューロン)が、複雑に結びつくことで記憶や思考を行う。その接合部分を、シナプスといい、その数は、100兆個を越えるといわれている。このような、シナプスを介したニューロンの接合をコンピューターで再現し、知的活動を行わせようという考え方だ。これをニューラル・ネットワークという。ディープ・ラーニングは、この考え方を進化させた仕組みだ。
最近では、このニューラル・ネットワークを半導体チップにハードウェアとして実装する取り組みも行われている。例えば、IBMが昨年発表したSyNAPSEチップには、100万個のニューロンと2億5千万個以上のシナプスを実現している。今はまだ人間の脳には遥かに及ばないが、技術進歩のスピードを考えれば、それほど遠くない将来に人間の脳に相当する規模になるのだろう。
これまでの経緯を見ると「弱いAI」が、実用化を牽引してきたと言えるだろう。例えば、IBMのWatsonやAppleのSiriなど、既に実際のビジネスの現場や日常で使われている。これに対して、「強いAI」であるニューラル・ネットワークのアプローチは、なかなか実用という面では、成果をあげてこられなかった。しかし、最新の脳神経科学の知見を新たに組み込んだディープ・ラーニングの登場により、こちらも急速に実力を付けはじめている。特に、画像や音声の認識などに適用がすすんでいる。また、最近では、MicrosoftがSkypeを使った同時通訳にこの技術を使い成果をあげている。
両者は、それぞれの得意を活かし、今後とも能力を高めてゆくことになるだろう。そして、それは同時に、人工知能をどう使いこなしてゆくかという課題を人間に突きつけることになる。
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目次
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- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
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