【図解】コレ1枚で分かるアナリティクス3.0
「経験や勘ではなく、事実に基づいて、ビジネス上の判断をできるようにすること」
その手段として、「ビジネス・インテリジェンス(BI: Business Intelligence)」が、これまでも使われてきた。ここに来て、人工知能が普及し、「アナリティクス(Analytics)」という言葉とともに、その融合がすすみつつある。両者はどう言う関係にあるのか。Harvard Business Review 2014.5月号「アナリティクス3.0」を参考に独自の解釈を加えつつ、コレ1枚にまとめてみた。
アナリティクス1.0
1960年代から急速に普及したコンピューターは、企業内の様々な業務をデータとして捉える環境を整えていった。このデータを使って社内業務に関わる分析レポートや管理資料を作成し、経営や業務に関わる意志決定を行う仕組みとして登場したのがビジネス・インテリジェンス(BI)だ。
かつてコンピューターがバッチ処理主体で使われていた時代、管理レポート1枚を作るにもCOBOLなどのプログラム言語を駆使して作成しなくてはならなかった。そのため、プログラミングの専門知識がある情報システムの専門家にそれを依頼しなければならなかった。しかし、業務現場の意図を正しく伝えることや試行錯誤して視点を変えることなど行おうとすると、その都度彼らに依頼しなければならず、大変手間がかかっていた。
この状況を打開するため管理レポート作成や業務分析を情報システムの専門家に頼らなくても業務の現場や経営者ができるようにとの目的で作られた仕組みがBIだ。
BIでは、業務データから取り出したデータを解析専用のデータベース(DWH: Data Warehouse)に格納し、それを使って管理レポートを作成(リポーティング)したり、様々な視点からデータの組合せを変えて分析(OLAP分析)したり、統計的な手法でデータに内在する法則や関係を見つけ(データマイニング)たりなどの作業を行われるようになった。これを「説明的アナリティクス」と呼んでいる。
企業内の業務システムで生成されたデータを使い、企業活動をデータで説明するための分析を行う段階を「アナリティクス1.0」という。
アナリティクス2.0
情報システムの適用領域が広がり、業務結果やプロセスのデータ化はさらに拡大した。加えて、ECサイトの普及やマーケティングにおけるWebの利用、SNSの活用、さらにインターネットの普及により企業をまたがるデータも扱うようになり、益々扱うデータが増大してゆく。世に言うビッグデータ時代の幕開けだ。これらデータを活かして意志決定のきめ細かさや精度を高めると共に、リアルタイムな変化に即応することで、ビジネス・チャンスを逃さないための取り組みが始まった。
しかし、膨大なデータが集まるようになっても、従来のリレーショナル・データベース(RDB)やDWHのために使われていた列指向データベースでは、リーズナブルなコストで効率よく扱うことができなかった。そこに登場したのが、NoSQLデータベースやHadoopといわれる大規模分散処理システムだ。さらに、ハードウェアの価格性能比が大幅に向上したことと相まって、より高度な分析を行えるようになった。
このような仕組みを使い高度な予測モデルを使って将来を予測し、最適なビジネス・プランを策定するなどの領域へと拡がっていった。これを「予測的アナリティクス」という。
社内外の大規模データを使い意志決定の改善とリアルタイム化をすすめる共に、最適なプランニングへと適用範囲を拡げた段階を「アナリティクス2.0」と呼ぶ。
アナリティクス3.0
IoTの普及と共に企業が取り扱うデータは、飛躍的に拡大しようとしている。これらデータを業務や経営の効率化や最適化のためだけに使うのではなく、競争力のある商品やサービスの創出、あるいは、リアルタイムな市場の変化に連動して広告やサービスを自在に変化させることで、競争力の拡大や強化を図ってゆこうという時代に移ろうとしている。
そのためにリアルタイムなデータを使って大規模な解析やシミュレーションを行い、最適解を導き出し、再び現場へとフィードバックするCyber-Physical Systemsを基盤とした仕組みが作られようとしている。そのための手段として、これまでの集計や統計的アプローチに加え、人工知能を活用してゆこうという動きが始まっている。
これら手段を駆使し、システム自身が判断を下し現場への指示を行う「指示的アナリティクス」の段階を「アナリティクス3.0」と呼ぶ。
アナリティクスの進化は、これからも続くだろう。その牽引役は人工知能になる。人工知能は、アナリティクス2.0の時代まで人間が経験と統計学知識で行ってきた最適モデルの設定や結果の解釈、意志決定を自ら行おうとしている。データサイエンティストや現場管理者が行っていた仕事を奪うかもしれない。そんな変化の中で、どう折り合いを付けてゆくかが、今後の課題となってゆくだろう。
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