優秀な営業になるための3つの提案
「営業として一人前になるためには、何を勉強しておけばいいでしょうか。」
今年度の新入社員達は、まもなく後輩を迎える。そんな新入社員達を相手にした最後の研修で、こんな質問を受けた。
「全てです。」
私は、このように答え、次のように続けた。
「営業は、ものを売り、お金を得る仕事だから、製品や技術についての知識をつけ、説得やプレゼンテーションのスキルを学んで、お客様と交渉できなきゃいけない。そういう力を早く身につけて、1人で営業できるようになりたい。そう思っているのではありませんか。でも、それは間違えです。営業は、モノやサービスを売る仕事ではありません。お客様に満足を提供する仕事です。」
お客様は、こちらが提供する満足に感謝し、その対価としてお金を払ってくれる。モノやサービスは、お客様の満足を実現し、お金をもらう手段にすぎない。提供するのは、「顧客満足」なのだ。
「どうすれば、お客様に満足を提供させられるか。」これを追求することが営業の仕事だ。スキルや知識は、この営業という仕事の目的を達成するために持たざるを得ない能力となる。
ではどうすれば、そんな能力を身につけられるだろう。私は、「ささやかな習慣」、「想像力」、「失敗の積み重ね」の3つの提案をしたい。
ささやかな習慣
お客様に満足をお届けするためには、お客様についての深い理解が必要だ。
- お客様はどういう業務をしているのか。
- 規模や業界での順位はどうなっているのか。
- どのような製品やサービスを得意としているのか。
- お客様の経営状態はどうか。
- 貴方が担当する部門はどういう仕事をしているのか。
- 情報システム部門は、どのようなシステムを使っているのか。
- 組織はどうなっているか。誰が何を担当し、責任者はだれでしょうか。
- 今どんなことが課題となっているのか・・・
お客様を理解するためには、様々な情報を手に入れなければならない。しかも、お客様の状況は常に変化している。手に入れた瞬間から情報の陳腐化が始まり、その変化にも追いつかなければならない。
このような情報を手に入れ、理解するためには、経営や業務についての知識が必要だ。業界や経済、時事のニュースについても関心を持たなければならない。財務諸表も読めなければならない。
ITについての知識も必要だ。情報システムの基礎や歴史、開発や運用の仕組み、テクノロジーの最新動向。マーケティングやマネージメントについての知識も欠かせない。プレゼンテーションやドキュメンテーションの能力も必要だ。
「そんなに、やることがあるんですか。一生かかっても無理ですよ。」
そのとおり、無理だ。きっと一生できないだろう。
営業の勉強に、ここまででいいはない。取りあえずもない。勉強しづけなければならない。
「ささやかな習慣」が、この問題を解決してくれる。毎朝一時間、勉強のために時間を作るだけのこと。たったそれだけだ。電車の中で本や新聞を読む時間以外にこの時間を作ること。休日もまた同様だ。
知識は、常に積み上げであり、更新だ。そのための習慣を身につけること。営業力は、そんな土台の上に築かれてゆく。
想像力
打ち合わせの席で居眠りをしていたら相手はどう思うだろう。靴を脱ぎ、横柄な態度で相手の話を聞き流すようにきょろきょろしたり、内職をしたりしていたらどうだろう。きっと、相手は貴方の存在を不快に思うだろう。
貴方が知っているからと言って、相手が知っているとは限らない。それにもかかわらず、こちらの一方的な説明や資料を送りつけたとしたら、相手は困惑する。想像力を働かせなくてはいけない。
- 相手は、何を伝えようとしているのか。
- 何に困っているのか。どこまでご存知なのか。
- どういう説明をすれば、分かってもらえるか。
- どのような話題ならば、興味を持っていだけるのか。
- どうすれば、喜んでもらえるのか・・・
そんな想像力を働かせながら、真剣に相手の話を聞いていれば、きっと眠くはならない。気がついたことや相手の関心事についてメモを取り、分からなければ質問をする。相手の考えていること、相手の立場、相手の期待を想像することだ。
自分から気の利いた説明をしようなどと思わないこと。まずは、想像力を働かせ、真摯に相手に向き合うこと。相手を理解しようと傾注する。信頼はこういう態度から育まれる。
失敗の積み重ね
新入社員には、「若気の至り」という、期間限定の特権が与えられている。有効期限は、せいぜい26〜28才といったところだろう。お客様に満足してらおう、成功させようと、積極的にチャレンジしての失敗ならば、マイナス点になることはない。叱られはするが、評価はプラスだ。
この期間に失敗を積み重ねる。気がつけば、それは高い山となり、あなたはその頂上に立って、遠くを見渡す力を身につけている。
周りからどう見られるかではなく、自分はどうすべきかで行動する。その結果は、貴方自身が負わなくてはいけない。その覚悟は必要だ。しかし、「若気の至り」期間中であれば、先輩や上司が、貴方の失敗を一緒に背負ってくれる。
もうひとつ、研修についてもつぎのことを理解してほしい。
「研修で成長できるなんて、期待しないでください。」
研修は、成長の切っ掛けを得る場でしかない。研修で成長できるとか、知識が増えるとかを期待しても無駄。
本人の成長は、講師の責任ではない。講師は、自ら成長する切っ掛けとそのための筋道を示すことに責任を負う。教える知識は、それを後で自ら使ってみて、はじめて成長の糧となる。
研修で気付いたこと、学んだことを実行してみること。研修で分からないことを調べること。関係しそうな本を読むこと。成長するかどうかは、それをやるかどうかだ。全て自分の責任だ。それを会社や周りの責任にしてはいけない。
お客様に満足を与えるためにどうすればいいのか。それが、営業という仕事のテーマだ。このテーマを忘れず、ひたむきに追求すれば、いずれは周りも認める優秀な営業になっている。そのためのマニュアルはない。直ちに使えるスキルなど、期待しても無駄だ。
ここで提案したことをやるかやらないかには決心がいる。努力が必要だ。しかし、それを実行に移せば、一生の宝物を手に入れることができることだけは約束する。
「先ず隗より始めよ!」
初年度を終わる今、あらためてこんな先人の言葉に従ってみてはどうだろうか。
こんな方に読んでいただきたいと、執筆しました!
- IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
- IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
- IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
- 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
- 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。
「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン
デベロッパーズ・サミット2015にて紹介させていだきました!
拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」のトップ10に選ばれ、先日、デベロッパーズサミットにて、紹介させて頂きました。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。
最新ITトレンドとビジネス戦略【2015年1月版】を公開しました
ITのトレンドとビジネス戦略について、集大成したプレゼンテーションです。毎月1回、「テクノロジー編」と「戦略編」に分けて更新・掲載しています。
【2015年1月版】より「テクノロジー編」と「戦略編」の2つのプレゼンテーションに分けて掲載致します。
「テクノロジー編」(182ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 「クラウド・コンピューティング」の追加修正
- Webスケールとクラウドコンピューティングについて追加しました。
- パブリック・クラウドとマルチクラウドの関係について追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」の追加修正。
- M2MとIoTの歴史的発展系と両者の違いについて追加しました。
- ドイツのIndustry 4.0について追加しました。
「ビジネス戦略編」(49ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 2015年問題の本質というテーマでプレゼンテーションを掲載致しました。
- 人材育成について
- 生き残れない営業を追加しました。
- エンジニアの人材育成について新たなプレゼンテーションを追加しました。