営業新人を「どのように教えるか」 2/2
「新入社員研修のゴールは、受講者が、自ら成長したいという意欲を持ち、それを続ける手段を知ること。」
昨日このように紹介したが、これを座学だけで教えるには限界がある。私は、この課題に対処するために「配属先との連携」、「文書化」、「ディスカッション」を実践している。
配属先との連携
「研修は手段を教え切掛けを与える場、配属先は育成の場」。配属先の育成担当上司が、その自覚を持たなくてはいけない。しかし、これを言葉で伝えても、誰もがその自覚を持ってくれるとは限らない。そこで、私が行っているのは、研修前の事前課題として、新入社員に育成上司へのインタビューをさせることだ。
まず、新入社員は、用意されたフォームに従い自己分析シートに、自分の今の状況を整理する。質問は、次のような内容だ。
- 今あなたは、仕事を通じて、どんなところにやりがいや楽しさを感じていますか。
- 現在の仕事で課題と感じているところは、どのようなところでしょうか。
- 営業として独り立ちするために、克服すべき課題、獲得すべきスキルや能力は何だと思いますか。また、その優先順位もつけてみてください。
この質問に文書で答えさせ、自らを内省させる。
また、同時に自分の育成担当上司に、インタビューをして次の質問応えてもらい、それを文書に書き留めさせる。
- 育成上司が今後の自分に期待することは何でしたか?
- 育成上司が考える、自分の課題・改善すべきポイントは何だったでしょうか?
- その他、育成上司との会話を通じて、何か気づいたことがあれば、記載してください。
このようにすれば、自分が思っていることと育成担当上司がどう考えているかを客観的に比較させ、自らを冷静に見つめ直す機会を得ることができる。同時に、育成担当上司に自身の役割を自覚させる効果がある。
この質問を行うのは、1年目の秋とまもなく後輩を迎えようとする少し前の時期が良いと思っている。質問内容は、同じ内容が良い。それを比べることで、自分の成長を感じ取れるからだ。
文書化
言葉にすることは、自らを客観視し、意識を理論化する上で大いに役立つ。上記の自己分析シートも同じ意図がある。もやもやと感じているだけではなく、言葉にすることで、今の状況を「見える化」し、何が良くて、何が課題かを具体的に表出させることで、自分を冷静に見つめることができる。
私は、研修の中で、同じようなことを、質問を変え、表現を変え何度も文書に書き出させるようにしている。書くという行為は、論理的思考力を求められると共に、徹底した自己分析を強いられる。このようにして、学んだことと実践との間にあるギャップを自己認識させ、自らの課題を顕在化させることで、自発的な取り組みへの意欲を引き出す事ができる。
ディスカッション
文書化された自分についてグループでディスカッションする。これには、2つの効果がある。ひとつは、新たな気付きを得ること。自分で持っていなかった視点、参考になる取り組み、新しい問題意識などを学ぶ機会となる。もうひとつは、共感だ。自分だけではなく共に頑張っているという気持ちを持つことで、モチベーションを高められる。あるいは、あいつがこんなに頑張っているのなら、負けるわけには行けないという、良きライバル意識も生まれる。
これらは、文書化が前提で十分な効果を発揮する。事前に徹底して文書化しておくことで、語る言葉がしっかりと意識に浮かび上がっている。また、論理構造も整理されている。ディスカッションの効果と効率を高めてくれる。
ディスカッションしたあとは、再び文書を書かせるようにしている。書き留めることで、そこで気付いたことを整理させ、意識にしっかりと定着させる。
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このような取り組みを座学の講義と組み合わせることで、学習効果を高めることができる。また、同時に育成上司の自覚を促し、研修と一体となった育成への取り組み、すなわちOJTを実現することになる。
システムを作るように、新入社員研修もまた設計され、プログラミングされてはじめて目的を達することができる。当然、新しいテクノロジーも取り込んで、日々改善してゆくことも怠ってはいけないだろう。去年と同じ研修でいいはずはない。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン
最新ITトレンドとビジネス戦略【2015年1月版】を公開しました
ITのトレンドとビジネス戦略について、集大成したプレゼンテーションです。毎月1回、「テクノロジー編」と「戦略編」に分けて更新・掲載しています。
【2015年1月版】より「テクノロジー編」と「戦略編」の2つのプレゼンテーションに分けて掲載致します。
「テクノロジー編」(182ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 「クラウド・コンピューティング」の追加修正
- Webスケールとクラウドコンピューティングについて追加しました。
- パブリック・クラウドとマルチクラウドの関係について追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」の追加修正。
- M2MとIoTの歴史的発展系と両者の違いについて追加しました。
- ドイツのIndustry 4.0について追加しました。
「ビジネス戦略編」(49ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 2015年問題の本質というテーマでプレゼンテーションを掲載致しました。
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