ポストSIビジネス:ビジネス・モデルの選択肢(1/2)
「ポストSIビジネス」として、これまで11回にわたって投稿してきたが、この辺りで、「ポストSIビジネス」の選択肢を今日と明日の2回に分けて整理してみようと思う。
先ず、ポストSIビジネスとして、「テクノロジー」、「システム開発・保守・運用」、「アプリケーション」の切り口から考えて行く。
テクノロジー
テクノロジーの進化はユーザーにとって大きな便益を提供する。しかし、同時に開発生産性を高め、工数を減少させようという力でもある。この流れに抗うことは難しく、むしろ積極的にこの流れに適応してゆくことで、ビジネス・チャンスを見出そうというシナリオだ。
まず、「開発・実行環境(PaaS)」だが、もはやIaaSの選別と淘汰がすすむなか、ここに参入することはなかなか難しい。しかし、その上位レイヤーであるPaaSであれば、ビジネス・チャンスもある。もちろん、IBM のBlueMixやHPのHelionのごとき汎用的な開発・実行のためのプラットフォームというのではなく、特定の業務分野に特化したサービスを提供するというシナリオだ。IoT、Big Data、アナルティクスなど、自分達が専門とする業務領域に特化した機能モジュールやAPIの提供を考えてみてはどうだろう。インフラは自前で用意する必要はない。実績のあるIaaSを使えば良い。
このようなサービスをPaaSという領域に区分してしまうことは、必ずしも妥当ではないかもしれないが、ユーザー企業やSI事業者の開発者を対象に「テクノロジーを使いやすくするサービス」を提供するというシナリオとご理解頂きたい。
また、OSSやハードウェアの開発など、自らがテクノロジーそのものの開発に関わってゆくことで収益を上げるというシナリオもある。米国などの動向を見れば、ベンチャー企業がこの領域でイニシァティブをとっている。我が国でもそれができないはずはない。既存大手とベンチャーとの協業など、自社のリソースにこだわらず、テクノロジーの開発にチャレンジし、テクノロジーの開発を進めるというシナリオも描けるだろう。
システム開発・保守・運用
ビジネス・スピードの加速に対応することは企業の至上命題だ。しかし、アウトソーシングに大きく依存した開発や保守の体制では、この命題に応えることはできない。ならば、内製化すれば良いと言うことになるが、これまで多くをアウトソーシングに依存してきたユーザー企業にとっては、簡単にできることではない。ならば、その内製化を進めることを支援するビジネスには需要があるはずだ。これについては、以前のブログで詳しく取り上げているので、そちらをご覧いだきたい。
>> ポストSIビジネス:システム内製化に備えはできているか
また、情報システム部門やCIOの代行のニーズもありそうだ。大企業はともかくとして、中小企業には、専門知識を持ったCIOや情報システム要員を配置する余裕はない。これは、大手であっても海外拠点であれば、同様の状況にある。ITがビジネスの前提になる中、このような需要拡大すると考えられます。このようなニーズをサブスクリプション型で継続的に請け負うシナリオは描けそうだ。また、サブスクリプションであれば、個別見積は不要で有り、合意した工数の範囲で、本当に開発が必要なシステムを選別しアジャイル開発で対応することもできるだろう。
また、インフラはIaaSへの移行が大きな流れとなっている。昨年あたりから、ERPやその他の基幹業務をパブリックなIaaSで稼働させるという事例が多数紹介されている。しかし、先に申し上げたとおりユーザー企業にそのスキルも人材もない。また、パブリックなIaaSは、オンプレミスでの運用とは大きく異なるところもある。さらに、パブリックなIaaSならではの特性をうまく引き出した開発・運用体制の再構築も必要になるだろう。こういう分野での需要に対応するビジネスも考えらる。
アプリケーション
アプリケーションをクラウド・サービスとして提供するSaaSは、単に既存のパッケージをパブリックなIaaSに載せて提供すれば良いというものではない。。マルチテナントを前提とした運用や課金、IaaS事業者とアプリケーション・サービスを提供する事業者との責任分界点の明確化、クラウドを前提としたセキュリティ対策、IaaSの機能や料金体系に対応したアプリケーション・システムの作り込みなど、オンプレミスを前提とした取り組みとは異なるところも少なくない。しかし、こういう取り組みは、顧客の裾野を広げ、長期継続的な顧客の囲い込みが可能となる。
また、自ら提供するSaaSとそれに付随する人的な業務をセットとしたサービスの提供も考えられるす。文書管理、給与計算、請求管理といった業務は、比較的独自性は少ない業務領域だ。そのためにシステムを自ら使い、人的作業もセットにした業務サービスを提供するというニーズはあるだろう。
また、業務の現場と一体となって、変更や変化に即応できるアジャイル型請負開発というアプローチもある。これについては、こちらで詳しく紹介している。
明日は、この続きとして、インフラ設備についてのポストSIビジネスについて考える。
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目次
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- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
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