オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

ポストSIビジネス:ビジネス・モデルの選択肢(1/2)

»

「ポストSIビジネス」として、これまで11回にわたって投稿してきたが、この辺りで、「ポストSIビジネス」の選択肢を今日と明日の2回に分けて整理してみようと思う。

先ず、ポストSIビジネスとして、「テクノロジー」、「システム開発・保守・運用」、「アプリケーション」の切り口から考えて行く。

スクリーンショット 2015-01-19 9.40.57.png

テクノロジー

テクノロジーの進化はユーザーにとって大きな便益を提供する。しかし、同時に開発生産性を高め、工数を減少させようという力でもある。この流れに抗うことは難しく、むしろ積極的にこの流れに適応してゆくことで、ビジネス・チャンスを見出そうというシナリオだ。

まず、「開発・実行環境(PaaS)」だが、もはやIaaSの選別と淘汰がすすむなか、ここに参入することはなかなか難しい。しかし、その上位レイヤーであるPaaSであれば、ビジネス・チャンスもある。もちろん、IBM のBlueMixやHPのHelionのごとき汎用的な開発・実行のためのプラットフォームというのではなく、特定の業務分野に特化したサービスを提供するというシナリオだ。IoT、Big Data、アナルティクスなど、自分達が専門とする業務領域に特化した機能モジュールやAPIの提供を考えてみてはどうだろう。インフラは自前で用意する必要はない。実績のあるIaaSを使えば良い。

このようなサービスをPaaSという領域に区分してしまうことは、必ずしも妥当ではないかもしれないが、ユーザー企業やSI事業者の開発者を対象に「テクノロジーを使いやすくするサービス」を提供するというシナリオとご理解頂きたい。

また、OSSやハードウェアの開発など、自らがテクノロジーそのものの開発に関わってゆくことで収益を上げるというシナリオもある。米国などの動向を見れば、ベンチャー企業がこの領域でイニシァティブをとっている。我が国でもそれができないはずはない。既存大手とベンチャーとの協業など、自社のリソースにこだわらず、テクノロジーの開発にチャレンジし、テクノロジーの開発を進めるというシナリオも描けるだろう。

システム開発・保守・運用

ビジネス・スピードの加速に対応することは企業の至上命題だ。しかし、アウトソーシングに大きく依存した開発や保守の体制では、この命題に応えることはできない。ならば、内製化すれば良いと言うことになるが、これまで多くをアウトソーシングに依存してきたユーザー企業にとっては、簡単にできることではない。ならば、その内製化を進めることを支援するビジネスには需要があるはずだ。これについては、以前のブログで詳しく取り上げているので、そちらをご覧いだきたい。

>> ポストSIビジネス:システム内製化に備えはできているか

また、情報システム部門やCIOの代行のニーズもありそうだ。大企業はともかくとして、中小企業には、専門知識を持ったCIOや情報システム要員を配置する余裕はない。これは、大手であっても海外拠点であれば、同様の状況にある。ITがビジネスの前提になる中、このような需要拡大すると考えられます。このようなニーズをサブスクリプション型で継続的に請け負うシナリオは描けそうだ。また、サブスクリプションであれば、個別見積は不要で有り、合意した工数の範囲で、本当に開発が必要なシステムを選別しアジャイル開発で対応することもできるだろう。

また、インフラはIaaSへの移行が大きな流れとなっている。昨年あたりから、ERPやその他の基幹業務をパブリックなIaaSで稼働させるという事例が多数紹介されている。しかし、先に申し上げたとおりユーザー企業にそのスキルも人材もない。また、パブリックなIaaSは、オンプレミスでの運用とは大きく異なるところもある。さらに、パブリックなIaaSならではの特性をうまく引き出した開発・運用体制の再構築も必要になるだろう。こういう分野での需要に対応するビジネスも考えらる。

アプリケーション

アプリケーションをクラウド・サービスとして提供するSaaSは、単に既存のパッケージをパブリックなIaaSに載せて提供すれば良いというものではない。。マルチテナントを前提とした運用や課金、IaaS事業者とアプリケーション・サービスを提供する事業者との責任分界点の明確化、クラウドを前提としたセキュリティ対策、IaaSの機能や料金体系に対応したアプリケーション・システムの作り込みなど、オンプレミスを前提とした取り組みとは異なるところも少なくない。しかし、こういう取り組みは、顧客の裾野を広げ、長期継続的な顧客の囲い込みが可能となる。

また、自ら提供するSaaSとそれに付随する人的な業務をセットとしたサービスの提供も考えられるす。文書管理、給与計算、請求管理といった業務は、比較的独自性は少ない業務領域だ。そのためにシステムを自ら使い、人的作業もセットにした業務サービスを提供するというニーズはあるだろう。

また、業務の現場と一体となって、変更や変化に即応できるアジャイル型請負開発というアプローチもある。これについては、こちらで詳しく紹介している

>> ポストSIビジネスのシナリオ: アジャイル型請負開発

明日は、この続きとして、インフラ設備についてのポストSIビジネスについて考える

新刊「【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド」 1月29日出版

ITの最新のトレンドをわかりやすく解説した本を出版します。既に予約受付も始まっています。是非、ご覧下さい。

Top1

  • ネットをながめても、テクノロジーのトレンド、意味や価値は見えてきません。
  • 難しい技術用語を並べられていても、専門知識がなければ理解できません。
  • 製品説明をつなぎ合わせても、テクノロジーの背景や本質は、分かりません。

本書は、約100枚のわかりやすい図表と平易な解説で、そんなお悩みを解決します。さらに、本書に掲載されている全ての図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。

スクリーンショット 2015-01-18 13.32.13

こんな方に読んでいただきたい!

  • IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
  • IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
  • IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
  • 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
  • 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。

目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

>> 詳しくはこちらをご覧下さい。

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集に参加しませんか?

このブログでも紹介させて頂いたテクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドをビジネスにどう結びつけてゆけば良いのかを考えてゆきます。そのための提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても解説します。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

きっと貴重なきっかけを手に入れられると思います。どうぞご検討ください。

Juku_18.png

詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました

今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。

【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。

  • 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
  • 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
  • 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

system_cover

「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

Follow Us on Facebook Facebookページを開設しています。「いいね!」やご意見など頂ければ幸いです。

Comment(0)