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へたくそなプレゼンテーションに共通する3つの過ち

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文章を書く相手は、他人であることを忘れないようにしたい。自分と異なる知識や価値観を持ち、仕事や日常の言葉も、かならずしも同じではない。そういう相手に何かを伝えるために文章を書く。

どのような表現、どのような例え、どのような文脈で伝えれば、こちらの意図を等価に受け渡すことができるかを思考し文章を作る。ここに手を抜けば、相手は自分の価値体系に収まるように解釈し、こちらの意図とは異なるものが相手の中に生まれてしまう。

「伝えたことに満足するのではなく、伝わった事実に満足する」

文章を書くとは、この満足を得るための行為だ。そのためには、自分が他人となって、そこに書かれている文章を吟味しなくてはならない。つまり、他人になりすました自分が、自分からの文章を正しく受け止められるかを確認しなければならない。これを怠った文章が巷にあふれている。

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文章を書くことは、相手を思いやる心がなくてはいけない。それは、想像という言葉に置き換えることもできる。

相手がどのような立場で、どのような価値観を持ち、普段どんな言葉を使い、何を知りたいのかを想像することだ。そして、自分が何を伝えたいかを自覚し、言葉を選ばなくてはならない。図表を交えたプレゼンテーションを作る場合も基本的には同じだ。

私は「言葉を磨く」研修を行っている。相手にこちらの意図を5分で伝えるプレゼンテーションを作ることが研修の目的となる。自分の担当している商品やサービス、ソリューションを展示会やお客様訪問で、短時間で確実に相手に魅力を感じて頂き、是非もっと詳しく話を聞きたいと思わせることができるプレゼンテーションを作ろうという研修だ。

まずは、自分の担当している商材について3枚/5分で話せる資料を作ってきて欲しいと事前課題を与える。

研修の当日、それを発表してもらうのだが、普段使っている数十ページのプレゼンテーションを素材に、1ページにてんこ盛りに詰め込んだプレゼンテーションを持ってくるひとが一定の割合でいる。当然、そんなに詰め込んでは、5分で説明できるはずがない。

乱雑に散らかったスライドを映しながら早口に書かれていることを説明しようとするのだが、門外漢の私には何かよく分からない。何となく、こんな商材なんだな、と自分の知識の枠組みに当てはめて、理解しようとするが、それが精一杯で、魅力も価値も伝わってこない。詳しく聞きたいなどは、微塵も感じられない。

こういうケースは、3つの過ちを犯している。

ひとつは、伝えることを目的としていることだ。こういうプレゼンテーションの場合、目的は相手の心を動かすこと。この目的を間違っている

ふたつ目は、こちらが映し出した資料を読んでくれる、理解してくれるという前提に立っていることだ。だから自分は説明もしないのに、てんこ盛りの資料を作っても平気なのだ。いうなれば、理解することの責任を相手に押しつけているとも言える。

最後は、こちらの言葉を相手も理解できるという前提で話をしていることだ。ある受講生が「物流メーカー」という言葉を使った。物流会社とメーカーは別の業種だ。私は、意味が分からなかったので尋ねたところ「自動倉庫で使われる機器を作っている企業」だと説明してくれた。自分ではわかっているつもりでも、相手も分かっているとは言えない。

3つの過ちに共通する過ちの原因は、想像力の欠如だ。目的を間違っているというのは、自分の置かれている状況、あるいは、自分と相手との関係を想像できないことになる。てんこ盛り資料の誤りは、相手がこちらの思い通りに動いてくれるという思い込みであり、相手の当たり前の行動を想像できないことにある。相手も自分と同じ言葉が理解できるという過ちは、相手の立場や状況について想像が足りない。

想像とは、相手への思い遣りであり、優しさだ。愛情でもある。話を聞いた相手は、優しさや愛情のなさを自然と感じてしまうだろう。当然、相手の心を動かすことはできない。

ではどうすれば良いのか。次の3つを確認することだ。

ひとつは、伝える相手はだれかを明確にすること。どこどこの会社のどの部門で、何をしている人かを明確に想像することだ。そして、その人がどのような仕事をしていて、どのような言葉を使い、どのようなことに困っているかを想像することから始める。

次に、その人が解決したいこと、実現したいことは何かを明確に想像することだ。

最後は、その人にとっての価値、つまり、これならお金を払っても良いと思わせるものを明確にすることだ。これを中核的価値という。例えば、スターバックスの中核的価値は、サードプレイス、つまり、ファーストプレイス=家庭、サードプレイス=職場や学校とは別の居心地の良い場所である。それを手に入れるためにお客様はお金を払う。コーヒーは、お金を受け取る手段であって、中核的価値ではない。この中核的価値を伝えて、相手が魅力を感じてこそ、機能や性能、価格や条件を知りたいと思う。この順番を逆にして、機能や性能、価格や条件を蕩々と語っても魅力を感じることはないだろう。

「伝えたことに満足するのではなく、伝わった事実に満足する」

そのためには、想像を働かせることに尽きる。これは、なかなかエネルギーがいる。しかし、そのエネルギーこそが、伝える力なのだと言うことを忘れないようにしたい。

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