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労働は、自分時間の一部であるという生き方

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「日本の企業では、研修は会社に指示され、行かされるものになっているが、外資系はその反対ですね。自分でこれに行きたいと手を挙げて会社のお金を使う。成績が悪ければ受講料は自分で負担しなければならない場合もありましたよ。」

日系の大手ITベンダーの役員から、こんな話を伺った。外資系企業にも長く勤められ、そちらでの役員経験もお持ちの方で、人材育成やダイバシティにもお詳しい。なるほどと想いながら話を伺った。

企業研修を生業にするものにとっては、会社がまとめて人を出してくれる研修はそれなりに有り難い。しかし、こういう場合、講師は、「嫌々来た人たち」をどうやって講義に引き込むかといった演出に苦労する。その人達にとって「痛い話題」を提供して考えてもらう、やる気のある人の意見を引き出し、こんな人もいるぞと暗にプレッシャーをかける、まずは知らないであろう話題を「こんな常識もご存知ないんですか?」と笑顔で嫌みを言ってみる。

これ以外にも、笑いをとったり、ディスカッションの機会を作ったりと、いろいろとやっては見るものの、最後まで学ぼうという意欲を持てないままに、時間だけ過ごして帰る人が必ずいる。講義に没頭できないのは、その大半は講師の問題だとは思うが、限界があることも事実だ。

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「啐啄同時(そったくどうじ)」という禅の言葉がある。「啐」とは、雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて出す音のこと。「啄」とは、そのとき親鶏が外から殻をついばんで破ることを言う。この「啐」と「啄」が同時であってはじめて、殻が破れて雛が産まれる。

自らが学ぼうと意欲を持ち、それを意志表示した人に機会を提供する。そんな外資系企業のやり方は、まさに「啐啄同時」である。何とも皮肉な話だ。

「予算があるから、是非研修に出てくださいと言っても、手を挙げないんですよね。」

ある日系ITベンダーの教育担当の役員が、そんな話をされていた。なんとも、もったいない話だ。

しかし、時代は明らかに「学ぶ人」のものだ。労働時間がそのまま成果に直結している労働ならばともかく、今の時代のビジネスは、知識と効率が成果につながる。特に、ITに関わるビジネスは、そういうものがおおいだろう。それは、時間に拘束されるという労働の概念とは相容れない。

研修という学ぶカタチが「労働時間」の一部に組み込まれている今の企業研修は、古い労働感の遺物かもしれない。

もちろん、「労働時間としての研修」の全てを否定するものではない。コンプライアンスやガバナンスなどは、強制力が必要かもしれない。また、事務や業務の手順を学ぶ研修や新入社員研修のように、企業人として最低限なくてはならない知識の取得も労働時間でなされるべきだろう。しかし、そういうものは少ない方がいい。意欲のないままに、研修に参加しても暇つぶしの息抜きであったり、実が入らなかったりと、無駄遣いになるだけだ。

いろいろと研修をそろえ、紹介し、自らの選択で受講するカタチがいいのかもしれない。学ばなければ、やってはいけないという意欲を持ってこそ、学んだ知識は力となる。

私が主宰するITソリューション塾もそういう方が多い。たぶん、1/3は自腹、1/3は自分で手を挙げてこられた方だ。熱心にメモをとり、眼光も鋭い。講師もうかうかしてはいられない。そんな真剣勝負の研修は、講師にとっても受講者にとっても多くの成果をもたらしてくれる。

今の時代、働くとことは、会社から与えられた時間をこなすことでは成り立たない。すこし大げさな言い方だが、働くとは、生き方なのかもしれない。オフとオンとかいうけれども、それは終日と週末の切り替えということではない。たくさんのスイッチがあって、それをいろいろと切り替えて、知識や経験を増やしたり、リラックスしたりということなのだろう。

「労働時間としての研修」から、「自分時間としての研修」へ。そんな発想の転換が必要だ。労働とは、そんな自分時間の一部であるという生き方もあるのではないか。

こういう考え方は納得できないという人もいるだろうが、時代はそういう人を求めつつあるように思う。

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