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お客様は誰か?こちらの論理で組み立てた理想の顧客などいない

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「だれがお客様なんでしょうか?」

あるシステム・ベンダーさんから、今検討している新しいサービスについて、ご紹介を頂いた。そのとき申し上げた質問だ。

現状認識、必要性、サービスの内容は、なるほどと感心させられるほどに実によく考えられていた。しかし、「誰がこれを買うのだろうか?」と考えてしまった。

「すばらしい。これは是非使いたい!」と思わせてこそ、人はそれを欲しいと思う。しかし、相手がそう思うには、このすばらしさを理解できる知識や体験がなければならない。また、それを必要としていなければならない。

この壁に穴を開けたいと思うからドリルが欲しい。しかし、このドリルがどれほど高性能で、値段も安く、扱いやすいかを説いても、穴を開けたいと思っていない人にそのすばらしさは伝わらないし、買いたいとも思わないだろう。

穴を開けるのは、棚を取り付けるためのビスをねじ込むためであると説いても、据え置き型のラックでいいじゃないかと考える人には、ドリルは売れない。

そう考えてゆくと、それを本当にほしいと考えている人、いや、その必要性を理解できる人は限られてしまう。

徹底的に調べ、議論し、これが必要だと考え抜いた結果、これまでに無い画期的なサービスができあがったとしても、そういう思考の過程を経ていない人にどうやって伝えてゆくかはとても難しい。たまたま、同じような問題意識を持つ方に巡り会えれば、「すばらしい。これは是非使いたい!」と思わせることができるだろう。

そういう人が買ってくれれば十分という戦略もある。しかし、そのような人が本当にどれほどいるのだろうか?それで採算が合うのだろうかをあらためて考える必要が出てくる。

かつて、PCサーバーが普及し始めた頃、メインフレームからPCサーバーへの「レガシーマイグレーション」が叫ばれたことがある。しかし、必ずしも広がりを見せなかった。その背景には、顧客にそれを行うモチベーションがなかったからだ。

メインフレーム・ユーザーが少なかったわけではない、コスト削減のために選択肢としてPCサーバーへの移行は、有効な手段であると考えられた。しかし、それを実行する情報システム部門長にはモチベーションはなかった。

移行すればコストは下げられるかもしれないが、移行に伴うコストは膨大である。しかし、アプリケーションは変わらず、ユーザーへのサービスは変わらないので、経営者やユーザーからみれば、何も変わらないのになぜそんなに金がかかるのかということになるのだろう。また、トラブルなく完全に移行できて当然であり、トラブルでもあろうものなら評価は下がってしまう。借りにうまくいっても、ユーザーから見れば何も変わらないので評価されない。また、メインフレームほどの安心感はなく、トラブルへの対処で負担が増えることへの心配もある。

コストは業務を工夫すれば少しは下げられるかもしれない。ならば、そんなリスクを抱えてまでやろうというモチベーションは生まれなかった。

ならば、コスト削減を訴えて経営者や財務担当の役員に掛け合っても、ITのことは情報システム部門に任せてあるので、彼等に判断させる、となれば、結局は同じ話だ。

情報システム部門は変わるべきだ、経営者がもっとイニシアティブを取るべきだと叫んでも、「その通りですね」と理解はしてももらえるだろう。しかし、行動に移すには、もっと強い動機付けがなければならない。それは、その価値を体験的に理解し、さらに深く考察して明確な知識と理論を持っている人に限られる。そういう人は、決して多くない。

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「顧客」とは、こちらが描く理想像であることはまれだ。むしろ、こちらの思惑通りには動いてもらえないものである。だから、こちらの思惑をうまく受け入れてくれる顧客を前提にしてビジネス・プランを描いてもうまくいかないのは当然と言える。

そういう視点で「お客様はだれなのか」をはっきりと見定め、彼等の分かる価値に応え、彼等の分かる言葉でそれを伝えることができて、はじめてビジネスが成り立つことを忘れないようにしたい。

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