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ビームスとユナイテッドアローズ、両セレクトショップの動画活用の違いについて

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【1】 米国と日本のアパレル産業における動画活用の違い

実際に動画配信サービス事業に携わる立場にいる者から見て、米国と日本のアパレル産業における動画活用の現状には、かなり大きな開きがあるというのが実感である。米国におけるアパレルといえば、動画をかなり積極的に活用している産業の一つだと言っていい。一方、日本のアパレル産業はどうかと言えば、米国とは反対にそれほど動画を積極的に活用しているとは言えない。

下の図は、6月23日の記事「オンライン動画広告視聴レポート<2011年第1四半期> 前年同期比の約2倍となる7.7億ビューを記録。Visible Measures調査」で紹介済みの、2011年度第1四半期に動画広告の視聴回数が多い産業をランキング順に並べた表である。見ての通り、アパレルは自動車に次いで2番目に視聴回数の多い産業である。1位の自動車は、2月に開催されたスーパーボウル期間中に半分以上の視聴回数を集めていることから、実質はアパレルが1位だったと言ってもいいくらいだ。

Top5

実際、米国のアパレル産業には、ナイキ、DCシューズ、リーボック、リーバイスなど、優れた動画広告を公開する企業として名前がすぐに思い浮かぶがブランドがたくさん存在する。また、ソーシャルメディは活用していないものの、自社のECサイト上で大量の商品動画を配信して売上アップを実現している、ザッポスのような事例もある。

一方、日本のアパレル産業に目を移してみると、動画を積極的に活用している企業と聞かれて、すぐに名前が思い浮かぶブランドはあるだろうか。おそらく、これも以前記事(バイラル動画広告分析レポート<ユニクロ編> 「UNIQLO MIXPLAY」から受けた衝撃は5年経った今でも変わらない)で紹介したユニクロくらいではないだろうか。ただ、そのユニクロでさえ、コンスタントに動画を活用しているとは言い難く、米国のアパレルブランドと比べて動画の活用度合いは低いと言わざるおえないのが現状である。

日本のアパレル産業の動画活用が活発でないことは、ただ単に感覚的な判断から言っているわけではない。弊社は法人向けにクラウド型の動画配信サービスを提供しており、サービスのローンチから3年間で220の導入実績がある。ところが、220の中でアパレルへの導入実績はわずか2つしかない。この数は、他の産業と比べて最も少ない部類の一つに入る。

では、なぜ今回日本を代表するセレクトショップである、ビームスとユナイテッドアローズの動画活用について記事にしてみたいと思ったのか。二つの理由がある。一つは、アパレルの動画活用についていろいろ調べてみたところ、両社がウェブサイト上で動画を活用していることをたまたま知った。しかも、両社の活用方法が全く異なる点に強く興味を持った。

もう一つの理由は、先に弊社の220の導入実績の内、アパレルがたったの二つしかないと説明したが、その二つが、実は2011年に入ってからの実績だということ。つまり、実績の数としては確かに少ないが、間違いなくこれから活用事例が増えてきそうな、将来性を感じさせる産業であると判断し、是非調査をしてみたいと強く思った。

数多いアパレルの中から、ビームスとユナイテッドアローズを今回対象とした理由は何か。それは、両者とも単なるテレビCM配信以外の目的で動画を活用しているからである。ビームスとユナイテッドアローズ以外のアパレルにも、もちろん動画を配信している企業が何社かある。しかし、そのほとんどが、テレビCMをウェブサイト上で配信するという活用方法に終わっており、バイラルさせようとする工夫が感じられないものばかりだ。

その点、ビームスとユナイテッドアローズの動画活用方法には、他のアパレルにはない特長がある。しかも、同じセレクトショップという業態を取りながら、まったく異なるアプローチを両者が取っている点も面白いと思った。また、テレビCM以外の動画活用を考えている企業にとって、どちらの活用方法も参考になると判断した。では、早速本題に移ろう。

【2】 YouTubeを利用してザッポスライクな商品動画を配信しているビームス

ビームスの動画活用方法は、どちらかと言えば米国のザッポスに似ている。どこが似ているのかと言えば、ビームスもザッポスも、自社の商品を説明するために動画を活用している点だ。他にもビームスとザッポスの動画活用方法には共通点がある。どちらも、配信する動画の制作を内製している点だ。では、実際に両社の動画活用方法を見てみよう。

ビームスは、ECサイト上の商品紹介ページで商品動画を配信している。以下のURLにアクセスし、真ん中くらいのあたりにカーソルを動かしてもらうと動画が見つかるはずである。

⇒ ビームスの商品動画ページ 
   ※ http://shop.beams.co.jp/shop/plus/goods.html?gid=972870&did=&cid=24682

Photo

また、ザッポスは以下のURLをクリックしてもらえれば、図のような動画の再生用ボタンが見つかると思うので、そのボタンをクリックしてみてほしい。

⇒ ザッポスの商品動画
   ※ http://www.zappos.com/ahnu-paris-purple-ash?zlfid=111

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見ての通り、両者の共通点は明らかである。まず、どちらも自社のスタッフが商品を手に取って説明している。ビームスが、ザッポスのような商品動画を活用している点は注目に値する。なぜなら、ザッポスが取り入れている商品動画の活用方法は、日本のECサイト事業者もかなり以前から注目していた活用方法の一つだったからである。ただ、実際に実践している事例は多くない。

一方で、違っている点もいくつかある。たとえば、ビームスはYouTubeを利用して動画を配信しているが、ザッポスはYouTubeを利用していない。ザッポスは、おそらく有料の動画配信サービスを利用しているか、自分たちで動画配信サーバを用意して配信しているに違いない。

また、動画の演出方法が大きく違っている。ザッポスは、商品の特長を説明することだけに集中しており、スタッフや商品が違っても、内容はちゃんとパターン化されている。ところが、ビームスは商品以外の要素、たとえば店内の様子なども配信しており、内容もパターン化されていない。このパターン化しているかしていないかの違いは、結構大きなポイントになっている。

両者が配信している商品動画を比べてみてほしいのだが、同じ内製でありながらビームスの配信している動画の方に手作り感を感じないだろうか。ザッポスは、同じ内製でも、制作の過程をパターン化することで、手造り感を減らすことに成功している。この違いは、動画活用の経験の差から来ているものだと言えるだろう。

そして、何と言っても最大の違いは、配信している動画の数である。ビームスは、BEAMSPRESENTATIONというアカウントでYouTubeチャンネルを利用して配信しているが、現時点では28本の動画しかない。よって、動画が用意されている商品を探す方が大変だ。ザッポスの商品動画の本数は、5万本以上と言われている。気になる商品をクリックすると、ほとんどの商品に動画が用意されている。この差がやはり一番大きい。

● こうすればもっと良くなる改善ポイント

動画配信サービスのビジネスに携わる立場にいる者として、ビームスの動画を何度も見直してみて感じた改善ポイントをあげてみたい。

① ECサイト上で配信する商品動画はYouTube以外のサービスを利用する

YouTubeチャンネルは、ビームスが配信する商品動画を全て見ることができるメディアとして活用する方が良いのではないかと思う。そして、ECサイト上で配信する動画は、ザッポスと同じようにYouTubeではない有料のサービスを利用するか、自社でサーバを用意して配信することをお薦めする。

ザッポスの商品動画をもう一度アクセスしてみてほしいのだが、ザッポスの場合は動画の再生プレイヤーの内部にフェイスブックやツイッタ―へのリンクボタンが用意されているため、気になる商品動画をすぐにフェイスブックやツイッタ―にシェアすることが可能だ。ところが、ビームスの場合は、YouTubeを利用して配信しているため、動画をシェアする際、一度YouTubeにアクセスしてから、フェイスブックやツイッタ―にシェアしなければならない。

また、YouTubeのフェイスブックやツイッタ―へのリンクボタンは、通常は隠れたままになっており、”Share”というボタンをクリックしないと表示されないインターフェースになっている。YouTubeを使い慣れているユーザであれば何の問題もないのだが、たまにYouTubeを利用するようなユーザにはちょっとわかりにくい。ユーザに簡単にフェイスブックやツイッタ―にシェアしてもらうためには、YouTubeを使わない方がいい。

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② 動画を制作する際の構成・演出をパターン化する

ビームスとザッポスの違いのところでも触れたが、商品動画を制作する際の構成や演出は、ザッポスのようにパターン化した方が良いのではないかと思う。ビームスの商品動画を見て気になったのが、店の内部を撮影している商品動画が見受けられる点だ。もし店の内部を紹介したいのであれば、商品動画と完全に分けてしまった方がいい。

商品動画は、やはり商品の良さを伝えることに徹底するべきである。そうすることによって、商品動画1本当たりの尺ももっと短くなるはずだし、制作の効率も上がるはずだ。出来るだけシンプルに、それを心がけた方が良いのではないかと感じた。また、できればバックには音楽を流した方がいい。音楽が加わるだけで動画の質感が全然違ってくる。

以上である。ビームスは、この商品動画は今後も是非続けてほしい。もっと数が増えて、商品動画の存在自体が知られるようになってくれば、視聴回数ももっと増えてくるはずだ。ビームスの今後の動画活用に期待したい。

【2】 コンセプトを前面に打ち出した動画を配信しているユナイテッドアローズ

一方のユナイテッドアローズは、ビームスとはまったく違った動画の活用方法を実践している。ビームスが、自社のECサイト上の個別の商品ページで、それぞれぞれの商品の説明用に動画を活用しているのと違い、リニューアルしたウェブサイト上の特定ページで動画を配信している。

TOPページの上部にある”FEATURE”というタブをクリックしてもらえれば、動画を用意しているページに辿り着くことができる。URLは以下の通りである。

⇒ ユナイテッドアローズの動画が用意されているページ

   ※ http://www.united-arrows.jp/feature/index.html

Feature

アクセスしてもらえればわかる通り、用意されている動画の数は多くない。たったの5本だけだ。ところが、動画を視聴してみてもらえればわかるのだが、どれもクオリティが非常に高い。

例えば、4月7日に公開された「みんなはネット通販をどうやって利用している?」は、ユナイテッドアローズのネット通販に対する考え方を垣間見ることができて面白い。クリエイティブアドバイザーの栗野宏文氏が登場し、今までネットで2回しか買い物をしたことがないなどと語るシーンがあったりして、ユナイテッドアローズファンにはたまらない内容になっている。

⇒ みんなはネット通販をどうやって利用している?
   ※ http://www.united-arrows.jp/feature/2011/04/kaeru-brutus-ua.html

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もう1本紹介しておきたい動画がある。こちらは、一番直近にあたる6月21日に公開された動画で、夏のセールの始まりを告げる非常に面白い内容の動画だ。完全にバイラル動画と呼んでもいい内容に出来上がっている。上手く口コミ効果を利用すれば、絶対ヒットする動画だ。

⇒ 急げ! セールだ! 田中君だ!
   ※ http://www.united-arrows.jp/feature/2011/06/2011ss-sale-tanaka.html

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以上、ユナイテッドアローズは、ビームスとはまったく違うアプローチで動画を活用していることがわかっていただけたことだろう。違っているのは、動画の内容だけではない。技術的にも違っている部分がいくつかある。

先に、ビームスはYouTubeを利用して動画を配信していると説明したが、ユナイテッドアローズはYouTubeを利用していない。また、動画がちゃんとiOSにも対応しているため、iPhoneとiPadからでも、ブラウザを経由して動画を視聴することができるので便利だ。iPhoneかiPadをお持ちの方は、是非iPhoneかiPadからアクセスしてみてほしい。

● こうすればもっと良くなる改善ポイント

動画配信サービスのビジネスに携わる立場にいる者として、ビームス同様ユナイテッドアローズの改善ポイントもあげてみたい。

① 動画再生プレイヤー内部にリンクボタンを用意する

ユナイテッドアローズは、ビームスと違ってYouTubeを利用していないため、ページ内にちゃんとフェイスブック、ツイッター、ミクシィへのリンクボタンが用意されている。この点は、YouTubeを一度経由してからでないと各ソーシャルメディアにシェアできないビームスとは大きく違っている。

ただ、せっかくリンクボタンを用意しているのだが、動画再生プレイヤーと離れ過ぎているのと、ボタンが小さい点が気になる。ザッポスのように、動画再生プレイヤーの内部にリンクボタンを埋め込んだ方が、ユーザにとっても親切だし、シェアされる回数も間違いなく増える。

② コーディネート動画を配信する

これは改善ポイントというよりは、お願いに近い。ユナイテッドアローズのリニューアルされたウェブサイトで、キーになってるコンテンツが二つあると思っている。一つはすでに紹介した動画、もう一つはスタッフのコーディネート。このコーディネートは写真で提供されているのだが、これを是非動画でも配信してほしい。

アパレルの動画活用で今後人気が出てくると思われるコンテンツが二つある。一つは、ザッポスが有名にした商品動画、もう一つがコーディネート動画だ。ザッポスは、靴が主力商品となっているためコーディネート動画は必要ない。しかし、セレクトショップはコーディネートが命だと言っていい。よって、コーディネート動画はキラーコンテンツになる可能性があると思っている。

【4】 まとめ

今回紹介したビームスとユナイテッドアローズが、同じセレクトショップという形態を取りながら、まったく違った動画の活用方法を実践している点は非常に興味深い。アパレルは、本来商品の特性から言って、もっと動画が活用されていい産業だと考えている。そういう意味では、ビームスとユナイテッドアローズには、これからもドンドン動画を活用して、他のブランドをリードして行ってもらいたい。また、この両者に続いて、動画を活用するブランドが他にも現れることを願っている。

アパレルやその他の産業で、参考になりそうな動画活用の事例を見つけたらまた紹介したい。少しでも読者のみなさんの、動画活用のヒントになれば嬉しい。

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