バイラル動画広告分析レポート<ユニクロ編> 「UNIQLO MIXPLAY」から受けた衝撃は5年経った今でも変わらない。
今回は、日本を代表するアパレルブランドの一つである、ユニクロのバイラル動画広告戦略について調査・分析した結果を、拙い内容ながらレポートしてみたいと思う。今回、調査・分析を行う際に対象としたのは、ユニクロがYouTubeの公式チャンネル「uniqlomixer」アカウントで公開している140本(2011年6月17日現在)のバイラル動画広告が中心となっている。それに加え、「uniqlomixer」アカウントには登録されていないものの、今回どうしても紹介しておきたいバイラル動画広告についても、できるだけ個別に探して紹介するようにしている。
「uniqlomixer」アカウント以外にも、数多くのユーザが過去のテレビCM等をYouTubeを始めとした動画投稿・共有サイトで投稿・共有しているが、今回はテレビCMについては全て対象外としている。よって、単なるテレビCMに過ぎないと思えるような動画については、今回一本も紹介していないことを始めに断っておきたい。
【1】 2006年12月に公開された「UNIQLO MIXPLAY」が与えた衝撃
今回、ユニクロのバイラル動画広告戦略について調査・分析しようと思ったのには大きな理由がある。2006年12月18日に公開された「UNIQLO MIXPLAY」をはじめて見た時の衝撃が未だに忘れられないからだ。2006年の12月と聞いてピンときた人は、私のブログを毎回楽しみにしてくれている読者に違いない。なぜなら、あの「Will It Blend?」シリーズの最初のバイラル動画広告が公開されたのが、やはり2006年の12月だからである。奇しくも、ユニクロと「Will It Blend?」シリーズは、同じ時期に始まったバイラル動画広告ということになる。。
この「UNIQLO MIXPLAY」の何が衝撃的だったのかと言うと、理由はとても単純なものだ。ただ単に、「UNIQLO MIXPLAY」がカッコ良かったのである。「UNIQLO MIXPLAY」を見た瞬間、そのカッコ良さに一瞬でやられてしまった。無名(ウーミン)が踊る凄過ぎるヒップホップダンスと、そのダンスにマッチしたクラブミュージックが融合したカッコ良さは、5年経った今でも決して色褪せることがない。
いま改めて見直してみても、この作品が2006年に作られたということが信じられないくらいの新しさを感じる。そんな背景もあって、バイラル動画という言葉さえ知らない当時の私に、動画広告の凄さを衝撃とともに教えてくれた「UNIQLO MIXPLAYと、その「UNIQLO MIXPLAY」を世に送り出したユニクロのバイラル動画広告戦略について、以前から一度調査・分析してみたいと思っていたのである。
■ UNIQLO MIXPLAY
この「UNIQLO MIXPLAY」は、当時同名の動画配信専用のウェブサイトが立ち上げられ、動画もそのウェブサイト上で配信されたいた。配信直後から、ネット上でもかなり話題になったことを覚えている。今は、「UNIQLO MIXPLAY」のウェブサイト自体は閉鎖されているが、動画は先にも紹介したYouTubeチャンネル「uniqlomixer」で見ることができる。視聴回数は279万回(2011年6月17日現在)と、もうすぐ300万回に届きそうだ。この「UNIQLO MIXPLAY」、実はYouTube以外の動画投稿・共有サイト(例えばニコニコ動画)にも多数公開されている。よって、正式な視聴回数(True Reach)は、すでに500万回を超えているのではないかと思っている。
この「UNIQLO MIXPLAY」のクリスマスバージョンとも言えるバイラル動画広告が、同じ年の12月25日に公開された「UNIQLO MIXPLAY XMAS SHOW」だ。UNIQLO MIXPLAYを銀座店のショーウィンドー越しに繰り広げるパフォーマンスが展開される、これも非常に良く出来たバイラル動画広告である。視聴回数は15万回と「UNIQLO MIXPLAY」に及ばないものの、動画広告という観点から見れば、「UNIQLO MIXPLAY XMAS SHOW」の方が優れているという声が聞かれるほど評価の高い作品である。
■ 「UNIQLO MIXPLAY XMAS SHOW」
2006年に公開されたバイラル動画広告は、このMIXPLAYシリーズの2本のみだ。2006年から現在に至るまでの、ユニクロのバイラル動画広告の公開本数を図式化したので参照してほしい。図を見てもらえればわかる通り、ユニクロのバイラル動画広告は、広告・宣伝プロジェクトに合わせるかたちで毎回展開されている。よって、制作されるバイラル動画広告のコンセプトも、プロジェクト単位で全て統一されているのが特長だ。そして、記念すべきその第一弾として展開されたのが、2006年12月に公開された「UNIQLO MIXPLAY」だったのである。
【2】 2007年5月に公開された息の長いプロジェクト「UNIQLOCK」
2007年5月には、2009年の第5弾まで続く息の長いプロジェクトになる、「UNIQLOCK」第1弾のバイラル動画広告が公開されている。この「UNIQLOCK」第1弾のプロジェクトは、ユニクロの売れ筋商品の一つである“ドライ”商品をプロモーションするためのプロジェクトで、「MUSIC×DANCE×CLOCK」がコンセプトとなっている。
現在、YouTubeの公式チャンネル「uniqlomixer」で公開されている「UNIQLOCK」シリーズは女性が一人でダンスを踊る動画ばかりなので、他のアカウントで公開されている当時のバイラル動画広告を紹介する。
■ UNIQLOCK season1 sample
また、「UNIQLOCK」の第1弾プロジェクトは、「言語の壁を越えたコミュニケーション」がテーマになっていて、ブロガー向けにオリジナルのブログパーツをが提供されて話題になったことも記憶している。「uniqlomixer」のアカウントでは、2008年の4月に展開された「UNIQLOCK」の第3弾プロジェクトの動画も多数公開されているが、こちらも、女性が一人でダンスをしている動画しか見当たらない。よって、ほとんどの「UNIQLOCK」プロジェクトが確認できるコンピュレーションを紹介しておく。
■ Uniqlock Original Dance Music Compilation
【3】 グローバルな展開が話題を呼んだプロジェクト「UNIQLO JUMP」
2007年10月には、単発で終わるものの、グローバルなメディア戦略が話題を呼んだ「UNIQLO JUMP」のバイラル動画広告が全部で12本公開されている。日本以外にも、アメリカ、イギリス、韓国、中国の計5カ国で撮影された作品で、登場しているユニクロのスタッフは、総勢650名にのぼると言われている。また、この「UNIQLO JUMP」は、「Hatena」、「Flickr」、「YouTube」という3つのソーシャルメディアを活用したことで、当時かなり話題になったことを覚えている。
この「UNIQLO JUMP」シリーズのバイラル動画広告は、単純でわかりやすい内容が非常にいい。ユニクロで働いているスタッフの元気さが、見る者にも伝わってくる、非常にいいバイラル動画広告だ。個人的には、「UNIQLO MIXPLAY」の次に気に入っているユニクロのバイラル動画広告である。
■ UNIQLO JUMP_GINZA MIX
■ UNIQLO JUMP_X!X!X! MIX
【4】 上海グローバル旗艦店のオープンに合わせたプロジェクト「UNIQLO 88 COLORS」
2010年4月には、上海グローバル旗艦店である「上海 南京西路店」の5月15日オープンに先駆けて、プロジェクト「UNIQLO 88 COLORS」のバイラル動画広告が全部で88本公開された。88本という数字は、中国で演技が良いとされる8を二つ並べたところから来ていると言われている。
内容は、88人の上海女性が、88カラーのユニクロのポロシャツを自らが着て紹介するバイラル動画広告で、これもリリース当時かなり話題になったプロジェクトだ。テレビCMとしても、5月1日から放映されている。
■ UNIQLO 88 COLORS MOVIE
【5】 まとめ
今回紹介した作品を見てもらえればわかる通り、ユニクロのバイラル動画広告はどれも素晴らしい作品ばかりだ。また、広告・宣伝プロジェクトに合わせるかたちでバイラル動画広告も公開されているので、広告効果もかなり高いのではないかと想像することができる。また、「UNIQLO MIXPLAY」以降は、一つのプロジェクトに対して大量のバイラル動画広告を公開する戦略を取っているようだが、この戦略も話題作りといった面で非常に効果があると考えられる。バイラル動画広告の大量生産は、それだけで価値がある戦略の一つだ。
コンセプトが明確になっている点も良い。私がユニクロのバイラル動画広告を今回調査・分析をしてみて感じたことは、「UNIQLO MIXPLAY」で始まったダンスと人間というテーマが、現在の作品にもちゃんと受け継がれているところだ。特に、人間を大事にしている点に非常に強い共感を覚える。
その一方で、改善すべき点もある。これだけ素晴らしいバイラル動画広告を生み出せるのであれば、プロジェクトにこだわらず、定期的にバイラル動画広告を発表してほしい。もし可能であれば、プロジェクトに関係なく、1ヶ月に1本のバイラル動画広告を定期的に公開してほしい。これは、日本のバイラル動画広告をリードする立場にある企業として、消費者に対して果たさなければならない使命のようなものであると考えてほしい
最後に、記念すべき「Uniqlo mixplay 1 」のバイラル動画広告が、「uniqlomixer」以外のアカウントで公開されていたのを見つけたので紹介して終わりにしたい。
■ Uniqlo mixplay 1