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今回は、数あるビデオ広告の中から、1,000万回視聴されたバイラルビデオ広告68作品をピックアップし、多角的に分析してみた結果をレポートしてみたい。そもそものきっかけは、以前(2011年5月21日)「1億回視聴されたバイラル動画全90作品をまとめてみた」というタイトルで、ミュージック・ビデオを中心としたエンターテインメント系も含めた全てのバイラルビデオの中から、1億回視聴されたバイラルビデオ90本を選んで紹介した記事を書いたことにある。
というのも、1億回視聴されたバイラルビデオ90作品のほとんどが、ミュージック・ビデオを中心としたエンターテインメント系のビデオで占められてしまい、ビデオ広告はたったの2作品しかランキングされなかったのである。つまり、バイラルに成功したビデオ広告のランキングチャートを作成する上で、1億回視聴という指標値はあまりにも大き過ぎて適さないという結論に至ったわけだ。
そうした背景がある中、いろいろな調査をしてみて最終的に辿り着いた指標値が、今回のチャートでも採用している1,000万回という視聴回数だ。企業が配信するビデオ広告において、1,000万回視聴という指標値がかなり高いハードルであることは間違いない。実際にチャートを見てもらえればわかるのだが、わずか68作品しかないことがそれを物語っている。
ただ、これくらい高いハードルを設けた方が、バイラルビデオ広告の成功パターンを調査する上で、有益な情報を入手することができるとも考えられる。そういう意味では、今回このチャートで紹介している視聴回数1,000万回を達成したビデオ広告は、100%疑いようのない、間違いなく成功したバイラルビデオ広告だと言っていいだろう。
今回のチャートは、ビジブル・メジャーズ(Visible Measures)のチャートをベースに、独自で調査したビデオ広告を加えるかたちで完成させたものである。よって、1,000万回視聴されたビデオ広告の全てをカバーしているわけではないということを予め断わっておく。今回のチャートでは、タイトル名、公開日、視聴回数といったデータの他に、ブランド名、国名、産業も情報として加えている。かなり面白いチャートが完成したと思っているので、是非参照してみてほしい。
■ 1位と2位はともに視聴回数1億回以上を記録
1位のブレンドテックの「Will it Blend?」と2位のエビアンの「Live Young」は、もはや説明の必要がないバイラルビデオ広告業界を代表する作品だ。ともに1億回以上視聴されており、いまだに視聴回数を伸ばしているアンビリーバブルなバイラル動画広告である。参考までに、下の「The Top 10 Viral Video Ads Chart」にアクセスしてみてほしい。このチャートは、2011年5月6月1日時点でのランキングなのだが、驚くべきことに、「Live Young」が1位、「Will it Blend?」が5位にランキングされている。「Live Young」にいたっては、いまだに1週間に100万回以上も視聴されているほどだ。セミナーなどでも、この2つのビデオ広告は必ずと言っていいほど取り上げるのだが、それだけの価値があるバイラルビデオ広告である。
※http://www.visiblemeasures.com/chart_types/2/charts/1097/chart_campaigns
この2強以外で注目いたいのは、3位、7位、8位、16位、48位と、5つもチャートに送りこんでいるオールドスパイスだ。これもいろんなメディアやブログで取り上げられているビデオ広告なので、ここではあえて説明は省かせてもらう。公開すれば必ずバイラルするという、バイラルビデオ広告業界に伝説を作ったビデオ広告シリーズだ。実は、このオールドスパイスシリーズ、今回ランキング入りした5つの視聴回数の合計を計算してみたところ、2億回を超えるとんでもない数字となった。つまり、ブランド別で集計すれば、ブレンドテックとエビアンを抜いてオールドスパイスが1位になるということだ。
他には、4つランキング入りしているナイキとT-モバイルが目を引く。特に、T-モバイルは、22位にランキングされている「Royal Wedding」に注目したい。このブログでも何度か取り上げたことがあるが、「Royal Wedding」は4月15日に公開されたばかりの、まだ新しいビデオ広告だ。68作品中、もっとも直近に公開されたビデオ広告でありながら、すでに2,400万回以上も視聴されているのはさすがだと言うしかない。今後どこまで視聴回数を増やしていけるか、非常に楽しみなビデオ広告の一つである。
参考までに、今回のチャートに、複数のバイラルビデオ広告がランキングされているブランドが11もある。上記で取り上げた以外にも、グーグル、マイクロソフト、ペプシ、ジレットなど、お馴染みのブランドばかりだ。ブランド別に視聴回数をチャートにまとめてみたので、こちらも参考にしてみてほしい。
また、ブランド別のTOP15もチャートにしてみた。先に触れたようにオールドスパイスが1位になっている。こちらも是非参照してみてほしい。
■ 産業別では生活関連産業に集中
次に、どの産業がバイラルビデオ広告を数多く生み出しているのか、グラフにまとめて分析してみた。一番多いのが健康・美容産業で、10作品ランキングされている。ブランドでいえば、オールドスパイスが含まれており、半分はオールドスパイスということになる。次に多いアパレルも、9作品の内半分近い4作品がナイキとなっており、特定のブランドが占有する傾向が見れる。
チャートではあえて分けてみたが、飲料と食品を合計して食品全体としてと考えてみることにすれば、実際は11作品となり一番多いことになる。食品全体に含まれるブランドは、ペプシが3作品ランキングされているくらいで、その他はエビアン、ハイネケン、レッドブル、ドリトス、トライデントなど、日本でも知られているブランドが多数名を連ねている。
産業別に集計してみてわかったことは、健康・美容、アパレル、飲料、食品などの、生活して行く上で欠かすことができない生活関連産業がバイラルビデオ広告を数多くみ出しているということだ。参考までに、先に名前をあげた4つの産業の合計はちょうど30作品となり、全体の44.1%を占める結果となっている。これはあくまでも推察にすぎないのだが、生活関連産業のブランドはビデオ広告の配信に積極的な上、しかも他の産業に比べてバイラルに成功する確率が高いと考えることができる。
生活関連産業以外で目につくのはITだ。マイクロソフト、グーグルといったビッグネームが、ビデオ広告に高い関心を持っている点に注目したい。
■ 国別ではアメリカが断トツで全体の57%。日本はトヨタがランキング入り
最後に、どの国がバイラルビデオ広告を一番生み出しているのか知りたくなったので、グラフにまとめてみた。この結果については、調査するまでもなく、アメリカであることはわかりきっている。ただ、シェアがどれくらいあるのかを知りたかった。結果は、39作品で全体の57%だった。この数字をどう見たらいいのだろうか。個人的には、アメリカのブランドがもっと独占していると予想していた。よって、57%という数字は、意外に少ないなというのが正直な感想である。
次はイギリスの10作品で15%。イギリスは何と言ってもT-モバイルだ。T-モバイルは、バイラルビデオ広告を語る上で、外すことができないブランドの一つだと言っていいだろう。余談だが、T-モバイルはドイツテレコムの子会社ではあるが、本社がイギリスにあるので、イギリスのブランドとして扱っている。
アジアも全部で5作品ランキングされており、日本からは、31位の「The Sienna Family」1作品だけがランキングされている。アジアでは、韓国が3作品ランキング入りしているのが目立つ。国際的な市場で勝負するためにも、日本のブランドにはもっとたくさんのバイラルビデオ広告を市場に送り出す必要があるし、経営層はバイラルビデオ広告の重要性に気がつく必要がある。
以上で今回のレポートは終わりになるのだが、今回紹介したバイラルビデオ広告を参考にして、一つでも多く優れたバイラルビデオ広告が登場することを願っている。また、このチャートから漏れてしまった視聴回数1,000万回を達成しているバイラルビデオ広告があったら、是非教えてほしい。「バイラルビデオ広告1,000万ビュークラブ」の完成度を高めるために、是非ともご協力を。
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