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意義ある事件:サイボウズのCMシリーズ「働くママたちによりそうことを」とその騒ぎ

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先月12月の頭に第一弾がオンエアされ大きな反響を呼び、第二弾がこの1月のはじめに公開され、また議論を呼んだサイボウズのCM。

第一弾「大丈夫」、第二弾「パパにしかできないこと」は、こちらサイボウズの「働くママたちによりそうことを」と題したページに動画が。

なお、『大丈夫』のあらましは、「これが働くママのリアル。育児と仕事に奮闘するママの葛藤を描いたムービーに涙」(spotlight)でさっとみれます。
『パパにしかできないこと』は「サイボウズが贈る"頑張るママ"のショートムービー第二弾。「パパにしかできないこと」って何??」(buzzgang)にショート・サマリーが。

意見・感想も様々だが、けっこうな反響で、とにかくインパクトを与えたことが分かる。特に第一弾「大丈夫」はスゴい。「大丈夫」をみて小生も感涙してしまいました。
参考:「涙が止まらない...あるCMに共感する"働くママ"続出も広がる議論の波」NAVER まとめ 

異論反論のブログも...「サイボウズのWM動画「大丈夫」に私も物申す。」(田中淳子の"大人の学び"支援)あるが、小生は女性起業家の大里真理子さんの「サイボウズのワーママ動画:愛の反対は憎しみではなく無関心です」(マリコ駆ける!)が最も共感したというところ。

小生は「明日をつくる女性起業家」なる連載をしているが、奇しくも「大丈夫」が公開されたのと同じタイミングの12月1日に、本連載のイベントをやり、そのレポート記事に「起業家になる=女性としての人生を献上して結婚出産をあきらめるといった先入観をなくしたい」と題している。

本イベントに登壇の村田マリ氏(iemo社長、DeNA執行役員)は、連載の一年前のインタビュー
日本では、女性の仕事系の雑誌に、朝4時に起きて子供の弁当つくって仕事に行くといった、努力と忍耐、ザ我慢といった例が出ています。これを美徳と見る向きもありますが、誰にでもできることではないし、本当は苦しいでしょう。できるだけ幸せに働き続ける新たな手法をつくりだしていいと考えたら、肩の荷がおりて楽になりました。
語っている。「働くママたちによりそうことを」で問題提起されていることも、これに符合する。

もちろん実情は家庭により勤めにより多種多様であり、仕事に邁進するか専業主婦で頑張るか選択は自由だ。しかし、選択肢のあり方を実質的に狭くしているのは看過できない。

悲壮な頑張り、自分を犠牲にして、とか今の時代に、いや本質的にナンセンスだ。当事者はつらくてunhappyだし、そういう選択肢をとる人が減少する力が働く。これは個人としても日本国としても、よろしくない。他国との比較をみても、日本はひどい。他国並みにする努力があって然るべきだ。

なお、第二弾「パパにしかできないこと」の反響には、批判が多い。サイボウズの野水氏の「「手伝う」ということ サイボウズのワーママ動画続編にモノ申す」(バブル世代もクラウドへGO!)もリストを上げているが、数えきれない。

そんな中で、「必要なのは「当事者意識」。働くママのために、パパが具体的にやるべきこととは」(spotlight)のように、批判だけでなくこう言うべきでしょといった案を示そうとするすブログもある。
一歩引いた観察としては、「サイボウズCM「働くママ~...」の炎上拡散が意味すること」(All About News Dig)が指摘するように、この問題への関心の高さが再認識できたということではなかろうか。

最悪なのは無関心でスルーされること。批判や異論反論は、期待や関心の高さを示しており、炎上・議論が巻き起こったのは、大成功だったと言えよう。

解決は容易ではないが、この問題に正面から切り込んだのは意義がある。一企業としてのトライに拍手を贈りたい。完璧なもの、答えを追求していたら、このCMは出せなかったろう。保守的な大企業でなく、ベンチャー精神があり、また実際に職場・働き方のイノベーションに社内で取り組むサイボウズだから成し得たことではなかろうか。

CMのMakingはサイボウズ式「広告業界で働くママたちが描く「働くママのリアルな気持ち」」に書かれているが、PR・マーケティング的にも、一つの意欲的な事例として価値がある。今後の展開が楽しみだ。

前出のサイボウズの野水氏は、「もちろん、ツールでも勤務制度でも、お互いに寄り添わないと根本的な問題は解決できないのですが。」と言っているが、全くその通りで、ツール・制度以前の夫婦のあり方・コミュニケーション、企業や仕事のあり方、そして家庭をとりまく社会やインフラといったエコシステムの進化が問われているのだ。

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