ケンブリッジ語録#41 「腹割って話せる度」と「プロジェクトの成功率」は比例する
「腹割って話せる度」と「プロジェクトの成功率」は比例する
変革プロジェクトに関わり始めて十数年・・・
ここ数年で確信に変わりつつある成功の法則がある。それは、
「腹割って話せる度」と成功率が比例する、ということ。
僕らの仕事は変革プロジェクトの支援。
変革をリードしているお客さんがいて、僕らコンサルタントを雇ってくれている。その人達(雇い主)と、僕ら(雇われる側)が本音で、腹割って話せる関係であればあるほどプロジェクトが成功するということだ。
これはコンサルタントと雇い主に留まらず、変革のオーナーである上司と、当事者として推進している部下との関係でも同じ。
上司の顔色を見ること無く、本当に言いたいことを言える関係であれば、成功率は飛躍的に高まる。
「ITベンダーとユーザー企業」の関係でも同じ。
色々なプロジェクトをやってきたがほとんど間違いない。
言い換えると、雇い側・雇われ側の関係を超越しているほど、上司と部下の関係を超えているほど、成功するという事だ。
「顧客とコンサル」「上司と部下」ではなく、1つの成功に向かって自分の立場を忘れて本音で語れる関係がプロジェクトを成功に導く。
直感的には「そうだよね」という感じだと思うけど、あなたの周りのプロジェクトはどうだろうか?
・お客さんとコンサルやITベンダーが本音をぶつけあえる関係になってるだろうか?
・お客さんの顔色を見ず、プロジェクトの成功のために必要な事を言っているか?
・雇い側はベンダーやコンサルを業者として見ず、WinWinな関係を築こうとしているか?
・上司に気を使って「そんなこと言えない・・・」とこぼしている部下が周りにいないか。
すべてに自信を持って大丈夫!といえるプロジェクトは少ないんじゃないだろうか。
「腹割って話せる度」を上げるには
本音で腹割って話せるプロジェクトは世の中では本当に少ない。
これに相当こだわってるケンブリッジでも全部のプロジェクトがそうだとは言えない。。。でも、少しでもそうなるように色々な工夫をしている。いくつか例を出してみる。
①「客先常駐」で「腹割度を上げる」
客先常駐にこだわっているのもその1つ。
迎合して御用聞きをするためではなく、価値観と価値観をぶつけ合い、誤解なく理解し合う事。その先で顧客のA案でも、コンサルタントのB案でもない、C案が生まれる。プロジェクトではこれが成功の決め手になる。
常駐するのは「本音で話す関係」を作るためだ。そしてプロジェクトは日々状況が変わる。今日の検討結果で、昨日まで考えていたことが変わる。今日の検討結果で人の考え方が変わることも頻繁にある。
「Aが大事だと思っていだが、今日の検討でxさんの話を聞いてむしろBが重要なんだと気が付きました」みたいな話だ。
常駐するのは、お客さんと高密度でやり取りすることで、こうした変化を即座に掴むため。そしてまた本音で議論する。そして即座に軌道修正する。だからプロジェクトがうまくいく。
ケンブリッジが常駐スタイルにこだわっているのはこうした理由がある。
②「振り返りメール」を週1回
本音で話すためには、本音で話す「機会」が必要だ。
僕のプロジェクトでは、週1回(プロジェクトが進むと月1回)振り返りメールを送り合うようにしている。
今週を振り返って「良かったこと/気付き」「モヤモヤすること/懸念点」「残念だったこと/改善点」を自由に書いて送るのだ。
例えばこんなメールを、プロジェクト関係者全員に送る。
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x月x日、榊巻です。振り返りメール送ります。・良かったこと/気付き
今週から課題分析のフェーズに入ったが、他部署も含めた状況を俯瞰してみると一目で状況が把握できるようになってきた。
これまで玉石混交ゴチャゴチャした状況だったのに、正直これは見事。
霧が晴れていくような感じがしている。
気のせいかもしれないが、A部署のxさんが明らかに部署視点から全社視点での発言をするようになったと思う。
自分も見習わなければ。・モヤモヤすること/懸念点
霧が晴れてきたのは良いが、ここから取り組みの優先順位を付けることになるはず。
上手く全員の合意が得られると思えない・・・。・残念だったこと/改善点
私自身が会議を欠席する事があり、前回の議論についていけないことがある。反省。
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キレイに丁寧に書く必要はまったくない、感じたこと素直に書く日記でいい。これがプロジェクト関係者全員から送られてくる。
週1回こういう機会があると、格段にモノを言いやすくなる。本音で腹を割るためには、お互いの考えに触れ合う機会を多くする必要がある。どんな人間かもわからない人と腹を割って話せるわけがない。Googleの言う心理的安全性を確保するための一つの方法とも言える。
③キックオフ+中間振り返りで気付かせる
プロジェクトのキックオフで、「このプロジェクトを成功させるために必要だと思うこと=主要成功要因」を表明する場を設ける。
「あなたは、プロジェクトの成功のために何が欠かせないと思っていますか?」と一人ひとりに聞くのである。
ケンブリッジでは毎回必ずやっているのだが、この場で「立場を超えて、プロジェクトの成功のために本音で話し合える関係が必要だと思っています。雇い・雇われ、上司・部下の関係を超えなければ真の成功は難しいと思う」と誰かに言ってもらえればいい。
この内容には皆さん大抵共感してくれるし、結構ハッとするものだ。
「ああ、確かにそうだな」と思ってもらえたらGood。地道な手段だが長い目でみると結構効いてくる。
そして定期的にPJ関係者全員を集めて「振り返り」を行うのだ、キックオフの時に語った「立場を超えて、プロジェクトの成功のために本音で話し合える関係」は今も保たれているか?自分の都合を優先させていないか?改善すべき点はないか?ということを確認し合う。振り返りで他者から指摘されて初めて自覚できることもある。お互い人間で、出自も所属組織や会社も違う。価値観も経験値も違うのだから、本当に気を付けていないとすぐに心理的な壁ができてしまうのである。
まとめ
結局は「人の心の持ちよう」が重要になる。お客さんがITベンダーを採用する時、ケンブリッジがよくお伝えしている話があるので、ちょっと紹介したい。
ベンダーを業者と見て「使い倒そう、上手いこと働かせよう」と思っていると上手く行きません。
彼らも人間で、雇い主がそういう雰囲気を出すと、どうやって雇い主を騙くらかすか考えるようになります。
だから「下請け」と思わず、一緒にプロジェクトを成功させる「同志」だと思って欲しいのです。
彼らの立場に立ち、どうすればやる気を引き出せるか、本音を引き出せるか、WinWinな関係を作れるか考えてほしいのです。
彼らを同じ目的のために努力している同志として接すれば、大きな推進力が生まれるはずです。そして、本音で話せる関係を作るには、まず自分の姿勢を変えることから。
・コンサルを業者扱いする客はダメ
・顧客を雇い主扱いするコンサルもダメ
・顧客を馬鹿にするコンサルもダメ
・ITベンダーを下請けだと思っている客もダメ
・顧客の言うことに従えばいいと思っているベンダーもダメ心に留めていただきたい。結局はプロジェクトの成功のために、共に戦う戦友だと思って接しなければならないのです。
これは「会社の姿勢・文化」が色濃く影響している側面もある。僕らがこう伝えてもピンと来ない会社もある。それはそれで価値観だから仕方ない。悲しいけど、僕らはそういう会社とは付き合わない事にしている。成功できないから。(ちょっと偉そうだけど、価値観の合うお客さんと仕事がしたいですよね。)
さて、あなたはお客さんと本音で腹割って話してますか?
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに所属するコンサルタント榊巻(さかまき)がお送りするブロク。
Havefun!(楽しもうぜ!)、お客さんにとって正しいことを!
を合言葉に日々仕事をしています。
ケンブリッジのホームページにも記事が沢山あるので興味があればそちらもどうぞ。新刊も絶好調です!