ケンブリッジ語録#21 「発言は最後まで言い切れ」
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。今回はこれ。
発言は最後まで言い切れ
議論のなかで、言いたいことがあやふやな発言が多発することがある。
発言者に自信がなかったり、周りに気を使っているケース、または、回答者がせっかちで発言者が話し終わって無いのに回答を被せてしまうケースでよく起こる。
◆例えば、現状調査の進め方を議論してるシーンでのこんなやり取り
Aさん「本社の業務調査の後で、支店ヒアリングが入ってるのは・・・」
Bさん「ーーあ、それはね。本社で聞いた話を、支店ヒアリングで裏取りしたいからなんだよねーー本社を後にしようか悩んだんだけどさ、こないだの話を聞いたらやっぱりーー」
Aさんは最後まで言い切ってないのに、Bさんが回答を始めている。よくよく見ると、Aさんが何を意図して発言しているのか不明確なのが分かるだろう。単なる質問なのか、懸念なのか、意見なのかすらさっぱりわからない。
「・・・入ってるってのは、どうかと思う」 なら意見
「・・・入ってるってのは、なんで?」 なら質問
「・・・入ってるってのは、xxの時に困ると思う」 なら懸念
「・・・入っているのは、間違っている。本社と支社を入れ替えるべき」 なら意見
になるワケだが、最後までハッキリ言い切ってない。どのパターンなのかによって、続く回答は全く異なるはずである。にも関わらず、聞き切らずに早合点して回答しようとしてる。
論点が不明確なまま、議論が展開される典型パターン。これがいわゆる議論の空中戦だ。実際、この後に続くAさんは発言はこれだった。
Aさん「あー・・・。うん。支店ヒアリングは不要なんじゃないかと思って・・・」
Aさんが気にしていたのは、順番ではなく要不要の話だった。これは実際の会話そのままで、全く脚色していない。いかにズレた回答をしているのかよく分かるだろう。
◆別のこんなやり取りもある。資料作成でのこんなシーン。これも実際の会話そのままだ。
Aさん「作成を依頼されていた、報告書類です。レビューしてもらえませんか」
Bさん「ああ、ありがとう。ちょっと見せて・・・。ふーん。書き出しはこういう感じなの?」
Aさん「いや、まぁ表現はこうじゃなくても良いんですが・・・この辺はメッセージとして強調したいなと思っていて・・・こう変えることもできますけど、どっちがいいですか?」
Bさん「あ、いや、それはどっちでも良いんだけど・・・、文字サイズは揃えた方がいいんじゃないかと思って」
文字サイズが気になっているなら「文字サイズを揃えた方が良いと思う」と初めからハッキリ言い切ればコミュニケーションがずっとスムーズになるのに。
これを防ぐには、発言者側、聞く側、双方で気を付けるとよい。
①発言者は、「意見/質問/指摘/懸念」を明らかにしてから発言せよ
どこに立脚した発言なのかハッキリしないと、何について議論しているのか迷子になる。
おすすめは最初に「質問です」とか「懸念があります」とか「理解を確認させてください」とか、立脚点を表明してからしゃべること。
これだけで随分明確になる。ボヤッと話し始めると何が言いたいのかわからず迷走する。
②聞く側は、相手が何を主張したいのかハッキリするまでしゃべらない
質問を聞ききるのだ。質問の途中で回答を被せない。その回答は大抵的外れなものになるからだ。質問がふわっとしているなら、「最後までハッキリ言い切って!」「それで?」「結局どうしろと言っているの?」「何を答えたら良いかわからないよ」としつこく質問をクリアにして欲しい。
※このテーマについては、「100%理解できるまで反論禁止」 がかなり参考になるだろう。
③答える側は、「質問にストレートに簡潔に答える」
そして、質問に答える時は、グダグタした説明から入らない。まず、質問にストレートに答える。
※以前の語録「質問にはストレートに簡潔に答える」がそのまま参考になるので是非読んでもらいたい。
実プロジェクトでの「質問/回答フレーム」
実際のプロジェクトでは議論の質と速度を上げるために、こんなグラウンドルールを作って会議室に貼ることもある。(写真はプロジェクトで使った実物)
ちょっとした工夫だが、本当にこれだけでもスムーズさが違うのだ。
発言者は、最後まで言い切る勇気を。
聞く側は、相手の主張を明確にすることに全力を注ぎ、説明したり、反論したりするのはその後。
そして質問にはストレートに答えよう。
この辺の話は、「世界で一番やさしい会議の教科書」本にも載ってます。