ケンブリッジ語録#15 生産性とは「アウトプット/時間」ではない、「目標の達成度合い/時間」である
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
多くのコンサルタントの琴線に触れ、成長を促すカンフル剤になってきた。現場感がみなぎるエネルギッシュな語録を書き留める。今回はこれ。
生産性とは「アウトプット/時間」ではない、「目標の達成度合い/時間」である
生産性とは何か?
よく見るのは 「生産性=アウトプット/時間」 という考え方だ。確かに作るものが決まっているならこれで間違ってない。
だが、作るものが規定されていないホワイトカラー的な働き方だとこれは通用しない。
Outputの量がいくらあっても、全然目標と違う方向へ走っていたら生産性はゼロだし。Outputの量がいくらあっても、目標を大きく超えてオーバークオリティだったら、生産性は悪化する。
例えば、「体育祭で使う大玉ころがしの大玉を作ってください」と言われて、クス玉を作ってしまったら、生産性はどう評価されるだろうか?「レトルトでいいのでチャーハンを作ってください」と言われて、無農薬で米を作るところから始めて、めちゃめちゃ時間掛けて素晴らしく旨いチャーハンを作ったら、生産性はどう評価されるだろうか?
極端な例と思うかもしれないが、ビジネスの現場ではこんなことは日常茶飯事で起こる。
だからこそ、「目標」という概念が絶対に欠かせない。
言い換えると「目標にいかに早く到達するか」が生産性そのものであると思う。
つまり「生産性=目標への到達度/時間」ってこと。
目標(成果物や求められる品質などを含む)が不明確だとそれだけで致命傷になる。
あなたの仕事の 「生産性」
高められていますか?
コンサルタント瀧川さんのコメント
The Goalのはじめに同じようなお話がありますね。
> Outputの量がいくらあっても、目的を大きく超えてオーバークオリティだったら、生産性は悪化する。
方向性の間違いもですが、これが特に重要だと思います。我々の仕事はいくらでもクオリティを上げられるため、求められる品質レベルを常に考えないと、永遠に仕事が終わらない。
とはいえ、この「目的を達成するために必要なレベル」を見抜くのが難しいと感じています。見抜けるようになるためにしていることはありますか??榊巻さんだけではなく、いろいろな方の意見を聞いてみたいです。
コンサルタント亮さんのコメント
瀧川さんの質問は難しいけど、僕自身は最初に目指すクオリティをカッチリ設定することはあまり無いかも。
①マテリアル全体のクオリティを20%にしてレビュー受ける
②他のタスクを見渡して他に優先度の高いタスクがないかみる
③あればそっちをやる。 なければさらにマテリアル全体のクオリティを40%に上げてレビュー受ける。
④②に戻るって感じ。
最終的なGO判断は単純で
・セッションが成り立つか?
・お客さんに不安感を与えないか?
が基準かな。
コンサルタント泉山さんのコメント
アウトプットの特性として必達のクオリティというものはあると考えています。
これは80/20だから多少は・・とかではなく100%の完成度を目指すもので、網羅していることが大事、正確なことが大事とか。
例えば、将来機能要求を整理している際に粒度はバラバラでもいいけどヌケモレはないようにするとか、タスクを整理している際に役割分担を正確にしたいのならば1つのタスクに複数の担当者が入らないレベルまでブレークダウンしないといけない、など下流になればなるほど必達のクオリティというのは見えやすいのかなと思います。
その次は亮さんの最終的なGO判断に近いのですが、目的を達成できないリスクの発生確率と影響度、プロジェクトに与える影響によるかと思います。
例えば、プロジェクトにあまり興味のない人にプロジェクトの説明をする際には分かりにくかったり、見づらいマテリアルだとそもそも話を聞いてくれないリスクが高いから綺麗なマテリアル作るとか。でもプロジェクト関係者だけのセッションでみんな聞いてくれるなら多少はいいかな・・と思ったりするけど発生する可能性は無いとは言えない。
あと発生確率が低いことだとしても1発勝負でリカバリがなかなか効かないことはかなり力を入れたりとかもあると思います。
なので、目的を達成できないリスクの優先度が低いものでも時間のある限り対応するというのがクオリティを上げるということに近いかな、と思います。
で、難しいのは以下を見極められるかなのではないかなと思います。
1.リスクを見極められているか、優先度は正しく設定できるか
2.どこまでの発生確率・影響度のものを許容するか
※2は人によっても結構違うような気がします。
リスクをファシやセッション外でカバーできるタイプの人もいるでしょうし。
このあたりは、誰かにフィードバックされた時に、以前はOKだったんだけど今回は細かいなとか思ったら何か状況の違いがある可能性が高いので、「なぜだろう?」と考えたり聞いてみたりしてました。画期的なアイディアを出すみたいなのはまた違うような気がしますが、良く分かりません。ある研修を受けたときには「いつもビジネスでは時間が限られている。その中で最高のアウトプットを。」と言われたので、そういうことなんだろうと思います。
コンサルタント岡田さんのコメント
のっかります。
僕の場合は、「次のタスクが成り立つか」「次の工程に十分な品質か」「この先、この品質で手戻りはでないか」を判断の基準にしているかな。
先を見通そうと意識しています。いや、将来から逆算して今必要なことを考えようと意識しているといったほうがよいか。
今日のタスクだとあしたの仕事は?
今週のタスクは来週のタスクは?
・・・
このフェーズのアウトプットは次のフェーズで使えるか?
このプロジェクトの成果は事業に貢献するか?
自問自答の連続です。
コンサルタント白川さんのコメント
「必要なレベルを見極める」というのは、筋が悪い目標設定だと思いますね、僕は。
僕が大事だと思っているのは2つ。
1)コンテンツクリエイト系はその時出せる120%のクオリティを目指す。
例えば「プランニング」のセミナーは当時の能力からしたら一切妥協しないで作った。
なので、あれを見て案件を持ち込んでくれたお客さんも多いし、未だに少ししか直さずに使っている。
もちろん本もそう。
古い話だと、ケンブリッジのサイトに載せたL&D方針とかも、当時的には一杯一杯。
2)で、まあ、この話はそういうんじゃなくて、普段のプロジェクトを念頭においているんだと思います。
瀧川さんが新富町で作った資料で、「オーバークオリティだからもったいない」と思ったことは一度もありません。
例えば昨日のセッション資料の感想は
a)必ずしもPPTの電子化に時間をかける必要はなかったかも
b)でも、少し懐疑的なお客さんに「そうか、この方針大事かもな」と引きずり込む説得力は足りなかったなぁ
です。
ですが、それは事後的に言えること、またはある程度ファシリテーションスキルがあるから言えることであって、準備中に
a)的な側面では手を抜こう。その代わり、b)的な側面でクオリティを上げまくろう。とかって判断して、その通り実現させるのって現実的には不可能じゃないですかね・・
b)的な側面で十分スキルが高くなると、a)的な側面で手を抜く方法も見えてくるというか。
例えば、手書きノートで構想を練るのに時間を使って、プレゼンテーションスタイルとしてはホワイトボードにさらさらと絵を書いて説明する、みたいな話ですけど。
なので当面は、少なくともb)の側面ではもう無理ってとこまで頑張るしか、クオリティ高い仕事もできないし、結果としてスキルも上がらない気がする。
それだと止め時が分からなくていつまでたっても残業だよ、ということなら、止め時だけスキルの高い人に相談する、という手もある。
こんな風に、一つのテーマに対して色んな人が自分なりのノウハウをぶつけてくるのもケンブリッジの面白いところ。これはめちゃくちゃ重要で、会社としてのナレッジの蓄積にも、個人の気付きと成長にも、すごく良い影響がある。