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指導のストレス減につながるOJTアップデート【環境編】

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「指示した通りに、やってくれない」
「確認や質問がなくて 不安」
「納期が近くなっても、どうなっているのかわからない」

前回のコラムでは、40代~50代で専門知識や技術を新人、中途採用者、派遣社員に指導される方が、このようなことに悩み、セミナーを利用するケースが増えていることをお伝えしました。

そこで どうして育たないのかと悩むあなたに「OJTのアップデート」というテーマで若手が育ってきた環境の変化をもとに、「なぜ、若手が育ちにくいと感じるのか」を紐解きました。

今回はその続きとして、

Phase2:時代に合わせた環境整備に焦点を当てていきます。

環境整備が必要な背景
ここでは多くの方が感じられている「口頭の指示」が伝わらないことを例に、その背景について次の4つの視点から紐解いていきます。
1.視覚優位の情報処理スタイル
2.経験の引き出しが少なく、具体的に想像しづらい
3.コミュニケーション手段の選択の難しさ
4.「確認・質問」がしにくい心理的背景

1. 視覚優位の情報処理スタイル
今の若手世代は、スマホやSNS、動画コンテンツに囲まれて育ってきました。そのため、「聞いて理解する」より「見て理解する」ほうが圧倒的に得意です。
そのため、口頭指示はイメージができず
・理解しにくさ
・覚えにくさ
につながり、"言ったはず"が伝わっていないことが増えています。
同時に、使われた言葉、や、確認するタイミング などにも難しさを感じています。

2.経験の引き出しが少なく、具体的にイメージしづらい
「どうして育たないのかと悩むあなたに「OJTのアップデート」」では、
若手世代は
「多様化した社会の中で、限られた経験のまま社会に出てきた」という背景について触れました。そうした背景は、仕事においては次のような形で現れます。

たとえば----
「お客様先に行くから、会議の準備、お願いね」と伝えたとします。

40代・50代の方なら、応接室、会議室、小規模なミーティングルーム、入り口のテーブル、オンライン...といったさまざまな"会議スタイル"を、年月を経ながら経験してきています。

そのため、会議と言えば、
「このお客様なら、あの会議室だな」
「資料はこれくらい必要かな」
「電源ケーブルは持参した方がいいかも」
といったように、具体的なシーンが自然と頭に浮かびます。

でも今の若手は、就職活動すらリモートが主流だった世代。
「訪問」という経験そのものが少なく、お客様先での"会議の準備"といっても、何をどうすればいいのか、実はイメージが湧かず、確認すべきこともわからないことが意外と多いんです。

3.コミュニケーション手段の選択の難しさ
40代・50代の方々は、
電話、FAX、ポケベル、PCメール、携帯、スマホ、SNS、グループウェア、オンライン会議...と、時代の変化に合わせて、少しずつコミュニケーション手段が"移行してきた経験"があります。

だからこそ、状況に応じて「今は電話が早いな」「ここはメールで残しておこう」といった判断の引き出しが自然と身についています。

でも若手世代は、
すでに「スマホとチャットがある」状態からスタートしていて、自分の経験の中で"使ってきたもの"しか知らないのが普通です。

そのため、「聞けばいいのに」「確認してくれればいいのに」という状況でも、どのタイミングで、どうしていいのか戸惑っていることが多くあります。

4.「確認・質問」がしにくい心理的背景
「わからなければ、確認してくれればいいのに」
----そう思ったこと、ありませんか?

でも実は、"確認する"という行動自体を難しいと感じている若手も少なくありません。

なぜなら、そもそもイメージができていないから「何がわからないのかが、わからない」状態です。

もちろん中には、学生時代から行動範囲が広く、感度の高い"キャッチのいい人"もいます。
でも、コロナ禍を経て行動範囲が狭まった世代では、社会経験のバリエーションが少ないまま社会に出てきた人も多いのが現実です。
(ちなみに、自分の「推し」に対する深堀り力と行動力はすごいんだけどね...)
学生時代、先生とのやり取りは、
・コミュニケーションが得意な人に任せていた
・チャットなどで気軽に確認していた
というスタイルの場合「上司や先輩への確認」という行為そのものにハードルの高さを感じている人も少なくありません。

【OJTのアップデートに不可欠な「伝わる環境」整備】
こうした背景をふまえると、
「伝わる環境」を意識的につくることが、OJTのアップデートには欠かせません。
そのヒントを3つご紹介します。

1)視覚で確認できる仕組みをつくる
・箇条書きの手順書を用意する
・または口頭指示を記録(ノート)してもらい、それを一緒に確認する
→ 口頭で伝えた内容を、あとから見返せるようにするだけで、理解度が大きく変わります

・チャットやドキュメントで「確認する」仕組みづくり
→ 「言ったこと」ではなく、「伝わったか」の確認がポイントです。

2)経験のバリエーションを増やす機会づくり
・「お得意先」「客先」「主要取引先」など、実際に訪問する機会をつくる
→ 多様な"現場の空気"に触れることで、経験の引き出しが増え、次に同じような指示を受けたときの"イメージの解像度"がぐっと上がります。

3)「たくさん経験してもらうこと」をチームで共有する
今の若手は、ミスや失敗に対してとても敏感です。だからこそ、1年目は"うまくやる"ことを期待しすぎず、"たくさん経験してもらう"ことを目的にするくらいがちょうどよいです。

そしてこのスタンスは、教える側の中で"共通認識"として持っておくことがとても大切です。「最初は失敗してもいい」
「まずは現場に出て、経験してもらおう」
「完璧じゃなくていい。動いてみることが大事」
こうしたメッセージを、チーム全体で共有しておくことで、若手も安心して"動いてみる"ことができるようになります。

経験のバリエーションを増やすこと。そして、「経験してもらう時間」をチームで支えること。これらの"環境整備"がこれからのOJTにおける土台になります。

まとめ:伝わらない(できない)のではなく、"まだ知らない"と捉えてみよう
「言ったことを、やてくれない」
「確認してくれればいいのに...」

そんなモヤモヤの背景には、"伝える側と受け取る側の前提の違い"があることが見えてきました。

若手が悪いわけでも、教える側が間違っているわけでもありません。
ただ、見えている世界と経験の引き出しが違うだけなんです。

だからこそ、
・視覚で確認できる仕組みをつくる
・経験のバリエーションを意識して増やす
・「たくさん経験してもらう」ことをチームで共有する

こうした"伝わる・育つ環境"を整えることが、これからのOJTにおいて、とても大切な土台になります。

「伝わらない」のではなく、「まだ知らないだけ」
「動けない」のではなく、「イメージができていないだけ」

このように捉え方をアップデートすることで、教える側の関わり方も、ぐっと優しく、具体的に変えていけるのではないでしょうか?

次回は----
「この子、何度言っても同じミスをする...」
「人によって、教え方を変えたほうがいいのかな?」

そんな悩みに応える、Phase3:個別の特性や成長度合いに合わせた指導(コミュニケーション)スキルについてお届けします。

そして弊社では、上記3つのフェーズを、体系的に短期間で習得いただけるセミナーをご用意しています。
こちらも合わせてご活用いただくことで、その方に合ったすぐに改善できるポイントが見つかります。

【セミナー(オンライン)のご案内】
5月27日開催|
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対象:IT企業、製造業で現場指導(OJT)を担われている方
   新入社員、中途採用社員、派遣社員の指導にあたられている方
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日時:2027年5月27日(水)10:00~17:00
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概要:若手世代の理解、準備のポイント、コミュニケーションと指導の仕方

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