マイナス思考(!?)は連鎖する
学生時代のアルバイトの経験は、私がプロとして働く上で必要な、基礎の醸成に大いに役立ちました。今振り返っても、良質な経験の宝庫です。しかし、"あの時先輩が指導してくれたお陰で"と思える出来事の中に、"違った方法で指導されていたら・・・"という経験がなかったわけではありません。今日はその点をご紹介したいと思います。
楽しかったバイトが、一転して憂うつな時間に・・・
明るく爽やかな海をイメージした内装のレストランに、ライトブルーに白のエプロン。清楚でかわいらしい制服を着られること、上司や先輩社員が仕事熱心&面倒見が良いことなどから、心から"採用してもらえてよかった~"と感じながら週3回のアルバイトに張り切って通っていました。
しかし、ある時からアルバイトが憂うつになります。それは・・・
「誰、この伝票書いたの?こんな汚い字じゃ読めないじゃん。キッチンやキャッシャーが読みやすいように書かないと」
「誰、このアイスコーヒー入れたの。これじゃぁ、まずそうじゃん」
「誰、これを片付けたの。洗う人の手間がかかるじゃん」
・・・そうなのです。私がやることなすこと、全てチェックが入り、1つ1つダメだしされるのです。このダメ出しをしているのは、"ご飯の盛り方"を私に注意した、女性の先輩社員(以下A先輩)でした。("ご飯の盛り方"は、こちらの記事をどうぞhttp://blogs.bizmakoto.jp/harada6stars/entry/2287.html)
最初はA先輩と一緒になることが少なかったため、注意されずに済んでいたのですが、段々同じシフトが増え、他の人が注意しにくかったことを、A先輩が全て私に伝えるようになったのです。
とうとう身体に変調が・・・
最初は、こちらの至らなさに申し訳ない気持ちでいましたが、何かすれば、その後必ず何かを言われるので、徐々にA先輩がずっと自分を見ているのではないか、自分がやっていることで大丈夫なのかといった不安がつきまとい、ビクビクするようになりました。
そしてある日、A先輩の出社時間が近づくと、急に胃が痛くなり立っていられなくなりました。さすがに倒れる訳にはいかないので、上司に断り化粧室に行かせてもらうと、顔色が真っ青に。その後、胃液を吐いてしまったのです。これにはびっくりしました。
どうやらストレスから、胃痛を引き起こすようになったようなのです。とはいえ、A先輩も悪気があって自分に注意しているわけではないので、上司にも他の先輩にもそのことは言えません。しばらくの間、A先輩と一緒のシフトになる度に、調子が悪くなっていました。
しかし、注意されたことは同じミスをしないようにし、できるだけA先輩と日常会話をするようになってから、あまり注意を受けなくなりました。注意を受けなくなると、調子が悪くなることはなくなりました。
厳しい先輩=ありがたい存在に
この指導を通じてA先輩に感じていたことは2つのことでした。"注意の仕方はきついけど、それは・・・
(1)お客様に良いサービスを提供するためと、そのために一緒に働く人達が仕事をしやすい工夫をすることが、大事なことを伝えたかったから(A先輩は常にお客様に喜んでもらうことを第一に考え、行動していました)
(2)私のことを思ってくれてのことだろう
ということです。
私はA先輩とその後仲良くなりましたし、厳しく指導してくれたことに対して感謝するようになっていたので、その考え方と指導方法は、その後の"私"にとってのお手本となりました。
振り返ると誰もいない・・・のはなぜ?
さて数年後。私が先輩社員という立場になると、私も後輩指導の機会に恵まれます。私もA先輩に教わった通り、後輩がやったことを、チェックする指導を実践しました。
さぁそうすると、どうでしょう。見事なまでに後輩社員は自信を失い、どんどん辞めていくではないですか!・・・あれ、あれ!?みんな、私は"あなたのためを思って、言ってあげているのに!"
けれども彼らは、私には何も告げずに、「お世話になりました」とだけ言って、私の元を去っていきます。私は周囲に言いました。「最近の若い子たちは、粘り強さがないのよね~」
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今振り返ってみると、なんともアホな私でした。こんなことでは、後輩が嫌になるのも無理はありません。自分だって胃が痛くて、大変な時期があったのに、同じことを人にしたわけですから。
さて、私は一体どうするべきだったのでしょうか?
上手くいかない理由は、とてもシンプル
自分で人を指導し、指導について学ぶうちに、なぜ上手くいかないのか理由が掴めてきました。その理由を私は、"マイナス思考は連鎖する法則"と呼んでいます。ここでいう"マイナス思考"とは、次のようなことを指します。
1.相手の"出来ていない点"や"不足している点"に着目する"減点主義"の考え方
2.相手の"消極的意識(注意されたくないから××をする、叱られたくないから××をするなど)"を元とした行動のさせ方
この2つが、ここで言う"マイナス思考"です。
これを続けるとどうなるか?細かなプロセスは省きますが、"かけている労力のわりに、アウトプットが少ない組織"や"自分の周りに信頼できる人が居なくなる"という結果を招きやすくなります。マイナスを起点にしたことは、長い目で見ると、結果としてマイナスの出来事につながりやすいのです。
それでは、一体どうすればよいのでしょうか?それは、簡単です。上記と反対にプラス思考で考え、行動すればよいのです。先ほどの2つをプラスで考えると次のようになります。
上手くいく理由も、とてもシンプル
1.相手の"出来ている点"、"際立っている点"に着目する。(注意をする時は、先に指導た上で、その上でできていなければ、本人にシンプルに伝えること。その上で、「・・・が、出来るようになるともっと良くなるね。どうやったら出来そう?」と本人に伝え、考えさせることが効果的です)
2.相手の"積極的意識(もっとよくしたいから~~する、喜んでもらいたいから~~をする)"を元とした行動のさせ方
どなたでも、"それはごもっとも!"と、思っていただけることでしょう。だだ一方で、マイナス思考に慣れていると次のような不安が頭をもたげるものです。"なめられるのではないか"、"仕事が甘くなるのではないか"などです。
私にもその不安感はよくわかります。今でも時折その不安が頭に浮かぶこともあります。しかし、多くの場合それは杞憂です。それよりも、"この人の期待に応えよう"、"もっといい仕事ができるようになりたい"という意欲に繋がることが大半です。その結果、"かけている労力以上の成果があがる組織"や"あ・うんの呼吸で仕事ができる、風通しの良い状態"になります。プラスを起点にしたことは、そのプラスが積み重なって、結果としてプラスの出来ごとにつながりやすくなるのです。
リーダーの多くは、マネジメント(PDCA)上では"悲観的な状況を想定する"という訓練を意識的にしているため、部下や後輩に対してもマイナス思考になりがちです。実際に研修などでお目にかかるリーダーの多くがマイナス思考です。しかし、そのことを理解した上で、部下や後輩の育成・指導に関しては、"プラス思考を意識する"という"努力の過程"が、モノゴトを好転させていく近道だと確信しています。
私の経験が、ヒントやきっかけになれば嬉しく思います。