Salesforceのイベントに、前総務大臣の原口氏が登場した理由を考えてみる
昨日(10/5)に、Salesforce.comのイベントで基調講演を聞いてきたが、私としてはゲスト・スピーカーにちょっとしたサプライズがあった。
国会会期中であるにもかかわらず、前総務大臣の原口一博氏が登場したのだ。
直接の所管大臣ではなくなったので、かえって出やすくなったということなのかもしれない。
マークベニオフCEO曰く、
- 原口氏は、5月に総務大臣として米国出張し、salesforce.comのサンフランシスコのデータセンターを詳細に見学した。
- 彼は政治家とは思えないほど、クラウドコンピューティングを詳しく知っており、detailに関する質問をしてきたので驚いた。
とのこと
そして、原口氏曰く
- セールスフォースのアジアのデータセンターが、中国でも韓国でもなく日本にできてよかった
とのこと。相変わらず「光の道」の話もあったが。。
しかも、この日のイベントでは、日本にデータセンターを設立するパートナーとしてNTTコミュニケーションズとの正式合意に至ったという発表があり、同社の副社長が登壇した後という流れでもあった。
さて、ここからは、勝手な推測である。
細かいことを言うと、「監督官庁の元大臣による米国視察から、業務提携へ」という、産業政策的な感じもがするが、もう少し大きな意味を考えてみたい。
前大臣の発言は、監督官庁を離れたが故に「本音が漏れた」ような気がする。
1980年代後半の日米貿易摩擦の頃、厳しい状況の米国自動車産業に復活の猶予期間を与えるべく、日本の自動車産業は輸出自主規制を行った。
それと同時に、トヨタ自動車はGMとの合弁会社(NUMMI)を設立し、現地の雇用を創出しノウハウ移転を行うとともに、燃費の良い日本車需要に輸出とは異なる形で応えることとなった。
似たようなことを、ICT産業で立場を変えて起こそうとしたのが、前大臣の発言のベースにあるような気がするのである。
セールスフォースが提携先になぜNTTコミュニケーションを選んだか?と言う問いかけについては、20年ほど前に「トヨタがなぜGMを選んだか?」という話と同様に、様々なビジネスベースでの検討があったことであろう。
そして、時代は変わり、GMはトヨタとの合弁会社から多くを学び復活するというシナリオであったハズなのだが、結果的には学習の成果を生かすことなく「問題の先送り」を続けて破綻に至った。
今、もしも、NTTコミュニケーションが日本企業の代表としてセールスフォース・ドットコムからクラウドの真髄を学びとる立場になったのだとしたら、20年後のGMの二の舞になることなく、「日本のICT産業の真の競争力確保」につなげていただくことを期待したい。
当面は、
- 「セールスフォース&NTTコミュニケーションズ」の連合軍が、日本以外のアジア企業からどれだけの需要を獲得できるか
- そこに、日本の(海外を含めてもOK)アプリベンダーのサービスがクラウド連携を通じてそれだけ需要を拡大できるか?
と言ったあたりが、政府の成長戦略に乗ったシナリオということになりそうな気がする。