日本人留学生の減少を防ぐ提案
最近、本業の関係で政府のIT戦略を調べているが、「グローバルで活躍できる高度情報通信技術人材の育成」などという項目があるので、ひとまず、日本からの留学生がどのような状態なのか調べてみた。
世界全体では、11万人から10万人に減少している。
特に米国向け留学生の人数を見ると、1999年から2008年の9年間で4.7万人から2.9万人に4割近く減少してきている。
出身国別比率というシェア(存在感)で見れば、9%から4%へとコンスタントに低下している。
韓国、中国、インドなどの国々とは、この10年で全く逆の動きをしている。
まるで、日本人は10年間かけてどんどん閉鎖的になってきたような動きだ。
「そんな閉塞感を自ら打ち破るべし」という思いがあったのも、自費留学を決意した理由のひとつであったが、実際に行って見て「アウェイの洗礼」に触れると、やはり見えないものが見えてきた。
自分が通っていたExecutiveコースでも中国系の学生の数は多かったし、彼らの中でも成績優秀賞をとっている連中は、「学士がスタンフォード、大学院がロンドン・スクール・オブエコノミクス、で今のExecutiveコースが3回目の留学」など、留学慣れしている連中が多いのである。インド人にいたっては、教わる側だけでなく教える側の教授側にも多く見かけるという状況である。
さらに、増えてきているのは、中国関係だけでなく、ロシア(旧ソ連圏の中央アジアを含む)もであり、欧州のクラスでは旧東欧圏の出身者が多かった。
やはり、「国の勢い」と言うものが現れている実感を強く感じた。
日本の留学生は、もともと企業派遣か2年制短期大学への語学留学みたいなところが中心であるようだが、その中でも「ビジネススクールなどでは、企業派遣の低下が近年著しい」というのが定説のようである。実際、私の日本人同級生でも、私を含めて9人中8人が自費であった。企業派遣が減った理由としては、最近の経済情勢に加えて、「留学帰りの社員はすぐ辞めて転職するから留学させない」という事情があるようだ。そのため、学位を取れる2年コースではなく、わざと1年くらいに短縮した企業派遣や1-2週間のセミナーなら認めるという企業などもあるらしい。
企業側の人事部の都合もわかるが、これではあまりに了見が狭いという気もする。
そこで、提案だが、「個人での自費留学に関する費用を、必要経費として税金還付の控除対象とする」という施策はいかがだろう?
高校無料化とか子供手当てなど、家庭に直接的な刺激を与えたい民主党の方向とも一致する。
実は、この制度は今でも存在し、「運用の弾力化」だけで対応が可能なのだ。
「給与所得者における特定支出控除 (3)研修費 (4)資格取得費」が、それである。
私自身も税務署まで聞きに行って調べたのだが、結果的に授業料や旅費などのうち10%程度は還付を受けることが可能なのである。
ただし、その際の条件として、「会社側が留学の必要性を業務上不可欠のものとして認めている」という条件があり、そのための書類などを揃えなくてはいけないのが難関なのである。
- 「企業の場合は、本当に業務上必要なら、会社が研修費用として補助を出して、その分を会社の経費に繰り入れるはず」
- 「経営状況が苦しくて研修費まで本人にツケを回しているという可愛そうな企業には、本人の税金から控除してあげるので、会社側はそういう裏づけ書類を出しなさい」
というのが、どうも税務署の基本スタンスのようである。
したがって、自営業などで「会社に籍を置いたまま留学することが、自分の会社の業務に必要」だと自分で書類を書ける人以外は、あまりに対象にならないのが実態である。
一方、個人が自費で留学する場合には、「会社が留学を認めない(籍を残して休職扱いにできない)ので、貯金して退職してフリーの立場で留学する」と言うのが、一般的なケースである。たまたま私の場合は、週5日/月というExecutiveコースであり場所がシンガポールだったので、「各種有給休暇や日本の休日の範囲でやりくりできた」という幸運に恵まれた結果、普通に働きながら「国内の社会人大学院に週末や夜間に通う」のと同じ感覚で継続できた次第である。
逆に言えば、IT業界でベンチャー的なカルチャーの企業の方々には、今すぐにでもこの制度の活用をお勧めしたい。
下手に大企業の真似して社内留学制度なんて作る代わりに、「会社で証明書ぐらいは書いてあげるから、自費で好きなところに留学してきなさい」と言うほうが、有望な人材の引止めにもつながり、双方にとってhappyであろう。頭をやわらかくするのは、役所側ではなく会社側のような気がする。