kintoneで変わった! 教育現場における挑戦―萩商工高等学校「萩LOVEハイスクール」での活用事例を探る―
こんにちは。葉月へちまです。
これまで数回にわたり、kintoneの事例取材をしてきました(kintoneがどういうサービスかについてはこちらをご参照ください)
が! 今回はこれまでとは少しちがいます。
なんと今回はkintoneを使用しているのが学校、それも中心となって活用しているのが高校生なんです!
今まで企業や飲食店等、いわば大人が仕事の現場で使用している様子をお伝えしてきましたよね?
でも当たり前ですが、kintoneの使用に年齢制限はありません。
未成年が使ってもよいわけです。
学校の課題に取り組むにあたって学生の皆さんはどのようにkintoneを活用しているのでしょうか?
それを探るため今回は東京を離れ、山口県萩市の萩商工高等学校へ行って来ました!
【「萩LOVEハイスクール」とはなにか?】
今回のサブタイトルにもあります、「萩LOVEハイスクール」。
いったいなんだと気になりますよね?
私も気になって取材へ行く前にホームページで調べてみました。
「萩LOVE」と萩商工高等学校とのコラボレーションのことを「萩LOVEハイスクール」と呼んでいるようですね。
【「萩LOVE」とはなんなのか?】
「萩LOVE」は、人口過疎化の問題や、観光客増加対策、シャッター商店街の活性化......などなど。地域の問題を解決するために集まった民間の団体です。
「萩LOVEハイスクール」は、そんな「萩LOVE」と萩商工高等学校の生徒がタッグを組み、地域活性のためのホームページを作成していく活動のことなんです。
生徒はホームページ作成の勉強になるし、「萩LOVE」は地元の高校生の学習に協力する地域貢献とともに活動を公表するホームページが手に入る。双方にメリットのある活動なんですね。
2009年から毎年行われているという「萩LOVEハイスクール」の活動ですが、今年は今までとちがう点が二つあります。
- 課題解決のためのkintoneの使用
- 「デザセン」への出場
1は冒頭でお話したとおり。どのように活用されているのかは後ほどじっくりお伝えします。
では、2の「デザセン」とはなんでしょう?
【「デザセン」とは?】
高校生の視点から社会の問題や課題をみつけ、その解決方法を提案する。その提案内容の良さを競った大会――それが、「デザセン」です。
もともと地域の問題とその解決に向けて、生徒自身で考え、行動し、発表するという課題を生徒に毎年課していた萩商工高等学校にとってはまさにぴったりの大会です。
むしろ今まで参加していなかったのが不思議なくらいですよね。
ともかく今年の萩商工高等学校の生徒は、これまでの「萩LOVE」とのコラボに加え、その内容をうまくプレゼンし、「デザセン優勝」を目標に掲げたわけです。
○kintoneは何故萩商工高等学校に導入されたのか?
Excelではなくkintoneを授業に導入してみたり、生徒を「デザセン」へ出場させてみたり、民間団体の「萩LOVE」とタッグを組んで活動してみたり......なかなか変わった取り組みをしている学校だと思うのですが。
その活動を中心的に進められているのが
こちらの、松嶋渉先生。
学校という枠にとらわれずにあちこちで講義をされ、精力的に活動されている先生がサイボウズの中村龍太さんと出会い、龍太さんを通してkintoneを知ったことにより、今年から授業でのkintoneの使用が始まったのです。
なぜkintone? 便利そうだから? 簡単そうだから?
とkintoneの使用の決め手を先生にうかがってみたところ
「一番の理由は、面白そうだと興味を持ったから」
とおっしゃっていました。
うーん、これまで数度にわたり取材をしてきましたが、やはり皆さん、「面白そう」と感じるんですね。
○萩商工高等学校の生徒はkintoneをどのように活用しているか?
まず、「萩LOVEハイスクール」のkintoneトップページはこのようになってます。
12チームに分かれ、大会に参加しています。
チームそれぞれのスペースとそれを支える「メンター」のスペースがあります。
今回の取材で学んだkintone活用法は大きく2つあります。
1、「メンター」を含む関係者とのコミュニケーションツールとしての活用法
「メンター」とは、萩商工高等学校の先生をはじめ、市の職員や「萩LOVE」に所属する方々のこと。
授業に参加して、生徒の質問に答えたり、
生徒とのコミュニケーションを通じてアドバイスをしたり、
講義をしたり。
様々な方法で、生徒の学習を支える存在、それが「メンター」です。
けれど皆さんそれぞれに本職があり、いつも授業に顔を出せるわけではありません。
また、遠方に住んでいて物理的に授業に関われない方もいます。お馴染みサイボウズの中村龍太さんもその一人です。
たとえば龍太さんなんかは、
こういった物を生徒に提示して、どのように課題や解決方法を探るべきかをサテライト授業の形で講義されたそうです。
私はこの図だけ見た時は英語で書かれてるし、いまいちわからない......と思ったのですが、
授業後に松嶋先生がkintone上に噛み砕いた解説を掲載してくださっていたので、理解できました。
こうやって学校から帰ったあとも授業の内容が確認できたら復習ができて、より講義の内容が定着しますよね。
そう、今回のkintone活用法の最大の特徴は、kintoneをコミュニケーションツールとして活用している点なのです!
これまではExcelやAccessの応用のような活用のされ方を紹介してきましたが、今回の中心はこちらの「ディスカッション」ツールです。
このように、kintoneによって離れたところにいる「メンター」も授業の様子がわかり、いつでも生徒の質問に答えられる環境が生まれたわけです。
2、活動記録としての活用法
生徒達は授業の最後に業務日誌を書いていました。
毎回、授業終わりに一人ずつ自分の言葉でその日の活動や学んだことをkintone上に記録しているのです。
この記録は本人はもちろん、「メンター」の方々も確認でき、情報共有ができます。
kintoneを使ってみてよかった点を生徒さんたちに聞いてみたときも、「授業の内容やプレゼン資料をいつでも確認できたことがよかった」とおっしゃっていました。
kintoneを使えばいちいちメールに添付して送り合うことなく
プレゼン資料や議事録を簡単に管理することができるし、
いつでも確認することができるんですね!
今までこれ程多くの方が同時にkintoneを使用して確認しあっている事例は取材してこなかったので、以上の2点は私が今回新たに便利だと感じたkintoneの活用法でした。
○kintoneによって教育現場はどのように変わったのか?
私の学生の頃、何かプレゼンをするとなれば模造紙に文字を書き込んだり、写真を貼ったりして黒板の前に立って発表するということが中心でした。
グループで話し合う時は、基本的に授業内で机を突きあわせて話し合い、授業内でまとまらなかった時は放課後残ってやはり直接話し合う。たいてい大体の方向性だけを決めて時間が足らなくなるので具体的に模造紙のデザイン案をどうするか、文章をどうするか、といったことを考えるのは代表の1,2人が行う。残りのメンバーは具体的にまとめられたプランを元に模造紙に書き写す係に回る。
......という流れだったように思います。
私はこんなブログを書いていることからも分かるように、昔から文章を考えることが好きでした。しかし残念ながら団体行動は苦手だったので、特に主張することなく提示されたものをただただ黒マジックで模造紙に書き写す係に回されていました。それがまたつまらないものだから腐ってますます非協力的になっていたことをよく覚えています。
時代は変わって、今は直接の話し合いだけでなく、様々なツールを用いて意見交換ができるようになりました。そのツールの一つが、kintoneです。
萩商工高等学校の生徒はkintoneでいつでもどこからでも進捗状況の確認やコメントができるようになりました。
プレゼン資料となるイラストを描いたり文章を作成したりするのは代表の一人、二人でも、それを見た他のメンバーが素早く容易に修正点を指摘したり意見を言えたりできるというのはkintoneがもたらした大きな変化だと思います。
また学校といえば、先生と生徒の関係だけの授業......といった印象がありませんでしたか? 少なくとも私はそういうものだと思っていました。
でもこの学校の生徒たちは、kintone上で、先生と生徒の枠を超えた交流している。実際にその授業に参加できてない萩Loveのメンバーや県外の有識者が「メンター」としてアドバイスしている。
kintoneによってもたらされた、教育現場における新しい挑戦を目の当たりにしたのです!
○おわりに
高校生に取材するのは今回が初めてだったわけですが今回特に感じたのは、若いとエネルギッシュで色々な発想を持っていて面白いということです!
kintoneでのトークを見てから取材へ行ったのですが、
はじめはどのチームも学校の休み時間のようなゆるいトークから始まっていて、
だんだんと自分の考える日本や世界の問題といった大きな問題を挙げあうようになり、
自分達に関わる身近な問題を挙げるようになって、
最終的にそれぞれチームごとのテーマを決定していったこの流れが面白かったです。
まあ実際に取材してみたら、離れたところでkintoneを使って会話をしていたわけではなく、授業内でkintoneを使ってのコミュニケーションを楽しみながら議事録的に活用していたということなのですが。
それでも書き込んでいるのはIT企業の社員さんでも飲食店の店員さんでもなく、高校生なわけで。彼らが選び、考えて入力している言葉を読むのはとても新鮮でした。
kintoneの新たな活用事例を学ぶとともに、どのチームも等しく応援したくなるような、高校生のエネルギッシュな活動模様を垣間見る取材となりました!