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共創でマーケティングを変える!

書籍紹介 1:「ネクスト・マーケット」C.K.プラハラード

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これまでも記事中で様々な書籍を紹介してきましたが、今後書籍紹介という形で私がこのエンゲージメント・マーケティングを研究、推進する上でインスパイアされた本を紹介していきます。

第一弾はこのブログではおなじみ、プラハラードがBOP(Bottomo Of the Pyramid)について書いた本です。

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ネクスト・マーケット The Fortune at the Bottomo of the Pyramid

彼は「コア・コンピタンス経営」や「コ・クリエーション」などで高名な経済哲学者とでも言えるインド出身の学者ですが、10年前に書かれた彼の書籍は、現在の資本主義の限界を予言し、持続可能な手法を説いています。このブログでも数回紹介した「コ・イノベーション経営」は顧客との共創、顧客の経験を取り込むことでのイノベーションを提言しており、昨今の共創経営の流れを予言していました。

このネクスト・マーケットでは、それまでマーケットの潜在性として見向きもされなかった貧困層マーケットを、むしろ今後の潜在マーケットとして目を見るべきだと主張したものです。従来のような慈善的なアプローチではなく、あくまでもビジネスの可能性としての視点で論じています。

2009年あたりから本格的にグローバル企業が取り組み出したCSV、すなわち社会的な課題を共創でビジネス化し、社会課題解決とビジネス・ゴールを「持続的に」達成する経営、マーケティングアプローチの最良のテキストとも言えます。

第一部ではBOPビジネスの考え方や手法を説明、第二部では12のケーススタディを例示してます。ポーターの場合はアカデミックな論をでない感じがするのですが、この書ではすでに実践されているケースを深く分析、説明しています。昨年の9月に設定されたSDGsでは2030年前でに解決すべき17の社会課題を明確化し、国と民間が協力して解決するイニシアティブが立ち上がり、すでにユニリーバなどの大手グローバル企業がこの目標を取り上げ、ビジネスでの課題に取り組み、持続可能な社会をつくる活動を経営戦略に掲げていますが、この本は「社会課題とビジネス開発」という、まさに今世界が取り組んでいる課題を10年も前に取り上げているのです。

この本の中でもユニリーバの事例が取り上げられています。ユニリーバのインド子会社ヒンドゥスタン・リーバ・リミテッド(HLL)がインドでの衛生問題(下痢性疾患)の解決を彼らの石鹸を絡めて解決していく手法が取り上げられています。ポイントは下記です。

  • 販促と社会課題解決をテーマにしたマーケティング「健康教育を持って石鹸市場を拡大する」
  • 国連、国、地域行政、NGOとの共創
  • 中期的なビジネス視点
  • 地域の人々を巻き込み、能動的な協力者として共創
  • 共有価値を創るマーケティング

HLLは「健康問題という社会課題をテーマにし、公共機関を巻き込みチャネルとして、健康問題の解決策として製品を売る」マーケティングを実行し、結果的には、一企業では資金的、体力的、ノウハウ的にはなし得ない成功を収めたと言えます。(その後の結果については勉強不足ですが)

このケーススタディには今後持続可能な世界を築いていくための企業活動手法のレシピが書かれています。

著者のプラハラードは惜しくも68歳という若さで亡くなっており、今生きていればという思いで残念です。

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