書籍紹介 9 :「日本再興戦略」落合陽一
落合と言えば我々世代で思い出すのは、落合 博滿と落合 信彦。 両者とも破天荒で枠に収まらない人物であるが、落合陽一は落合信彦のご子息とのこと。落合信彦はいくつか読んだが、一種のきな臭さ(ロバート・ケネディの選挙参謀 務めてたり、CIAとの太いコネクションがあったり、石油で一発当てたりとか)がありながらも扱う題材のスケールの大きさに魅了されていたことも。特に「2039年の真実」ではJFK暗殺についての謎を綿密な(?)独自取材を積み重ね、その闇を暴き出していますが、インターネットが商用化されていなく情報が少なかった時代には貴重な作家でした。ちなみにアサヒ・スーパードライの初代キャラクターでしたね。(アサヒも当時はチャレンジャーだったので起用したのでしょうが、大胆な起用だったことを覚えています。)
おっと、彼の話ではなく彼の息子、落合陽一の本でした。
私のマーケティング・アプローチは「社会課題」に顧客や社会のニーズを見出し、その課題をマーケティングで解決することで持続可能なビジネス成長を促進し、持続可能な社会を築く、いわばマーケティング3.0的なアプローチをしているのですが、そうすると社会課題を研究するうちにどんどん悲観的にならざるを得ない状況に陥っています。特にベストセラーにもなった「未来の年表」は日本に於ける人口減少が巻き起こす様々な事象を予測しているですが、とても楽観的に考えることができないくらいの日本の未来です。ワークショップなどでその題材を議論しながら、楽観的な未来にするために企業はどうなっていきたいかなどを議論するのですが、なかなか楽観的な未来を描けていない状況です。
この本はそんな状況に希望を与えてくれた本です。彼が描く「希望の国のグランドデザイン」(本書帯コピーより)は、多くの示唆を与えてくれます。欧米追随型のイノベーションをやめ、地域分権(かつての日本のシステム)を推進することで活力をもたらし、教育や民主主義をアップデートし、むしろ人口減を日本が生まれ変わるいいきっかけ(人類史上稀有なチャンス)と捕まえ、テクノロジーとAIを駆使した少子高齢化時代のビジネスモデルを作り出し、それを輸出していくことを提言しています。
彼のアプローチは、まず自分を知る=日本とは何か、から始まります。ここ数年のグローバル・リーダー企業のアプローチも自社の存在意義=Purpose、Valueを再定義、再認識することから始まっており、カオス、コモディティの時代において、競合他社とのポジショニング争いより、己を知ることこそが最良の戦略と言われています。彼は日本は本来「ブロックチェーン的な国家」であり、明治以降の欧米に追随した中央集権型国家から明治以前の国家統治、すなわち自律分散型の地方分権システムに戻すべきだと唱えています。
- 下記は刺激的な文章・小見出しです。
- 沖縄県が沖縄トークンを発行すればいいのです。
- イノベーティブな日本の宗教
- とくにこれから重要になるのが。「百姓的な」生き方です。
- 普通が一番だと思っているのが、一番の間違いなのです。
- 「デジタルネイチャー」は、.....コンピューターによって定義されうる自然物と人工物の垣根を超えた超自然のことです。
- 日本だからこそ持てる 機会化自衛軍
- 民主主義をアップデート
- 新しい時代に磨くべき能力とは....ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です。
- センター試験をやめよ
- 幼稚園にはいかなくてよい
- MBAよりアート
- 士農工商を復活せよ
- 近代的人間からの卒業
- 人類のよさは、モチベーションだ。
彼は最後にこう締めくくっています。
「ポジションを取れ。批評家になるな。フェアに向き合え。手を動かせ。金を稼げ。画一的な基準を持つな。複雑なものや時間をかけないと成し得ないことに自分なりの価値を見出して愛でろ。あらゆることにトキメキながら、あらゆるものに絶望して期待せずに生きろ。明日と明後日で考える基準を変え続けろ」
日本の再興に向けて、大胆に、多用性を持って考え、行動優先で、若い人がどんどんチャレンジする機会を作らなければいけませんね。