エンゲージメント・マーケティング事例:The Guardian Membership
今回は英国の新聞「The Guadian」の新たな試み「The Guardian Membership」を取り上げます。
ガーディアンは1821年創刊で、現在の発行部数は26万3,907部(2011年4月4日-5月1日平均)とのこと。wikipediaより デジタルでは「theguardian.com」を発行しており、2014年3月末期には前年比25%増の7000万ポンド(約214.6億円)現代ビジネスよりを上げており、デジタル化の波に乗り切れず経営に悩む新聞業界では成功している数少ない例です。新聞や雑誌業界でのデジタルでのビジネスモデルは、1)広告モデル、2)有料閲覧モデルに大別されますが、優良なコンテンツは万人がみる権利があるとのオープン・ジャーナリズムを標榜する彼らは、有料閲覧モデルの代わりにメンバーシップモデルを取り入れました。新聞紙の購読、デジタルモデルにつぐ、第三のビジネスモデルです。それは、ガーディアン・ファンとともにガーディアンを創って行くモデルです。まさにエンゲージメント・マーケティングの手法を取り入れたのです。
The Guardian Membershipとよばれるメンバーシップモデルの概要は下記です。
MembershipはFriend(無料)、Partner(135£/年)、Patron(540£/年)に分かれており、その内容は主に彼らが主催するイベントへの優先参加などの、リアルなコミュニティ的な内容になっています。Patronの概要には「ガーディアンのミッションをサポートする」と書かれており、まさにミッション達成への参加というエンゲージメントが示されています。
ガーディアンという新聞はもはや情報を提供する情報媒体だけでなく、同じ価値観を共有する発行者とその読者とのコミュニティになりつつあるわけです。こうなると競合との競争ではなく、顧客との共創軸になるので、プラハラードのいうところのイノベーション軸がソリューション空間から経験空間に入った事になるので、事業継続性の広がりが促進されます。
C.K.プラハラード著「コ・イノベーション経営」
私が勤務していたアメリカン・エキスプレスも「Membership」という概念を大切にしています。カード券面には、「members since xxxx(xxxxからのメンバー)」が表記されており、単なる会員(カスタマー)とは違う意味を持たせています。
この概念をうまく表現したアメリカン・エキスプレスの広告があります。
彼らはここで「We don't have Customers, We have Membership.」と宣言しています。Membershipは(昔の)ゴルフ場の会員権のニュアンスが近いです。すなわち、ただの会員ではなく、よりよいクラブであり続けるために会員自らが運営にも携わり、ルールを設定し、会員同士のコミュニティを形成しています。「参加」がキーワードになります。「Customer(顧客)」には商品やサービスを提供し、「Membership」には参加を促し、一緒によりよいものにしていく、というニュアンスがあります。
エンゲージメント・マーケティングに重要なキーワードとしての「Membrship」を大胆に取り入れたガーディアン社の取り組みに今後も注目して行きたいと思います。
ちなみに弊社メンバーズも今年(2014年)にMissionをあらため、「Membershipでマーケティングを変え、心豊かな社会を創る」(Vision 2020)を制定し、エンゲージメント・マーケティングを推進する決意表明をしました。