震災からの創造的復興によって、日本漁業を立て直す
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絶望的な日本漁業について、世界三大漁場である三陸での創造的復興を通して、再び地域の基幹産業としての地位を取り戻すべく説いた本。また魚介類への放射性物質汚染についても解説がある。
日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)
これまで農林業はいろいろ勉強していたが、漁業はまったく手つかずのままで、漠然と衰退産業という認識でいた。実際、EEZ=排他的経済水域の設定による漁場の制限や、70-80年代でのマイワシの豊漁期といった複合的要因によって、日本の沿岸漁業の設備投資と海洋資源のバランスがおかしくなったことに構造的原因があると理解できた。
岩手・宮城で100以上もある漁港を整備して、大きな漁船を買った漁業者にとって、これらの設備投資を回収するためには、EEZによって限られた日本近海における漁獲高を維持するほかなく、結果的に早い者勝ちで稚魚の小魚を底引き網でさらっていくという“焼畑漁業”が主流となっていった。
今回の震災において、漁港や漁船の設備が壊滅的打撃を受けたことは、これらの構造的原因をゼロベースで再構築しなおす契機になるとも言える。漁業資源の持続的管理を徹底し、高付加価値化を図っていくことで日本の漁業は儲かる産業に生まれ変わるであろう。
年収100万円の年金漁師ではなく、将来を担う若手漁業者がイニシアティブを取って、旧態然とした浜のしきたりを変革していくという流れは、漁業だけではなくすべての第一次産業に共通するものだ。暖流と寒流がぶつかる奇跡の海から、日本の漁労文化がつくられてきた歴史がある。実際に三陸の海の幸を食べる機会が増えて、漁業を一気に身近に感じるようになってきた。
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