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少子高齢化を解決した長野県の小さな村

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公務員が住民のために猛烈に働くのは当たり前ですが、ただでさえ人員が減っている上に、合併による意思疎通やセクショナリズムによって、なかなか思うように働けていない役場がほとんどです。このような構造的課題に対して、安易な公務員叩きの論調に終わっているケースも少なくなく、地元住民も役所に文句を言う会議を繰り返すばかりで生産性のない時間を過ごすことがほとんどで、公務員のモチベーションを保つことが難しい職場環境になってきています。

2011年10月1日時点での人口は4066人だが、そのうち0~19歳の若い世代は879人で総人口の21.4%を占める。日本全体では0~19歳が総人口に占める割合は17.8%だから、下條村の方が若い。交通が不便な山間地にあって農業以外にめぼしい産業がない。農業にしても山間地のため大規模な農園をつくることができない。

そんな典型的な中山間地域にあるにもかかわらず若い人たちが住み着く。そして特殊出生率は2.04人(2003~2006年の平均値)と2人を超えている(日本全体では2010年に1.39)。日本全体が下條村になれたら、少子高齢化問題は解決することになる。ある意味、下條村は現代の奇跡と呼べるかもしれない。

しかし、実際には奇跡でも何でもない。当たり前のことを当たり前にやった結果なのである。本当に若い夫婦のためになる政策をきちんと練って実行に移せばいまの日本でも特殊出生率は2.0人を超えることができる。別に奇をてらった政策など必要ないことを下條村は証明している。


長野県下條村は平成の大合併には乗らず、集落単位での共同体意識を高める施策を打ち、道路補修事業なんかは自分たちでやってもらうようなコストカットを実践していったことで、次世代育成に必要な原資を確保した、全国でも稀有な自治体です。数十年後には更新が必要となるような下水道整備なども、なるべく分散化した合併浄化漕にすることで運営コストを削減し、また名誉職の意味合いが強い教育長などの人件費の高いポストを空席にするといったアイディアが秀逸ですね。

●役所の職員の数を60人から34人に減らす
●退職などで必要な欠員ができた場合は民間から人材を採用
●村を走る幹線道路以外の道路は住民が自分たちで道路を造る(資材支給事業)
●国や県が推進する下水道整備をやめた(合併処理浄化槽に)
●平成の大合併に乗らず小さくても独立の道を選択

 以下は子育て支援策だ。

●国の補助金を断って独自で造った村営住宅
●村営保育園の整備
●教育長の欠員(「特殊出生率2.04の下條村が教えるいじめ対策」)
●子供議会の設立


これらの自治体に共通するのは、リーダーシップのある首長がトップダウンで様々な施策を展開しつつも、現場との距離感を密接にすることでやる気のある人材には大胆に権限移譲して同時に人材育成を進めているところです。そのためには、ある程度目に見える範囲での組織規模が最適であり、下條村のように40人以下になるとトップの目が行き届きやすいということなのでしょう。


人口の自然増を可能にした小さな村の取組みは、全国から注目されています。定住促進を政策に落とし込む自治体も増えてきていますが、下條村の真の強みを理解していないケースも散見されます。まず隗より始めること、それによって自治体も大きく変わるのです。


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