オルタナティブ・ブログ > 山岡週報 >

メディアプランナーのつぶやき。ITおよび製造業のマーケティングについての考察。ときどきマンガとアニメ。

Appleがスマートスピーカー市場に参入、「音声AI」の競争激化

»

Appleがスマートスピーカー市場に本格参入すると発表し、「音声AI」の話題が盛り上がっています。

▼Apple、スマートスピーカー「HomePod」発表 Siri搭載

「米Appleは6月5日(現地時間)、同社の音声アシスタント『Siri』を搭載したスマートスピーカー『HomePod』を発表した。12月に米国、英国、オーストラリアで発売する。価格は349ドルから。米Amazon.comの『Amazon Echo』、米Googleの『Google Home』が先行するスマートスピーカーの分野に参入する」(記事抜粋)

アイティメディアの記事では「Siri」が搭載されるというタイトルが付けられていますが、日経新聞など他のメディアでは「AppleがAIスピーカーを発売」という見出しが並んでいます。

確かにSiriは、音声アシスタントのAIなので表現としては間違っていません。メディアごとの読者属性が異なることや、"AI"と付けた方が記事として注目してもらえるという意図も分かります。しかし、今回発表されたHomePodが、新たに開発されたAIを搭載したものではなく、AppleがこれまでiPhone/iPadなどで培ってきた技術が応用されたものであるという点を見誤ってはなりません。

apple.PNG
Appleのリリースでも「AI」というワードは入っておらず、「音質と知性」と表現しています。

ちなみに、この発表からさかのぼって約5カ月前の2017年1月末には、(Appleに買収される前の)「Siri」の共同創業者で、AppleにおけるSiriの責任者を務めるトム・グルーバー氏が、GoogleやFacebookが立ち上げた人工知能普及団体「Partnership on AI」の創立メンバーとして参加するというニュースもありました。

▼Apple、GoogleらのAI(人工知能)普及団体に参加

この創立メンバーには、音声AI領域に対し先行して製品を市場投入したAmazonやGoogleが当然のように参加しており、お互いに市場競争を図りながらも、健全な市場を築いていこうという意思を感じます。

先日は、ハンバーガーチェーンのバーガーキングがGoogleの音声認識アシスタントを狙って、米国のテレビCMで「OK Google、ワッパーって何?」という音声を放送し、Gooogle端末を起動させたという奇抜なプロモーションもありました(数時間後にはGoogleが対応し、このCMの音声にだけ反応しないように対策)。こんな広告施策が成立し話題になるのも、音声認識AIが普及し、機能しつつある表れかもしれません。

▼バーガーキングが「OK Google」使うテレビCM放映 Googleが数時間後に介入

こうした米国勢に対して、日本からも今年(2017年)はいろいろと動きが出てくるものと思われますが、正直まだこれからという状況です。日本勢が先行する米国勢に対して正面から対抗するのか、あるいは個別の機能や用途に特化した形で対抗するのか分かりませんが、いずれにせよ相当のエネルギーを要する戦いとなるでしょう。

▼LINE、AI基盤「Clova」発表 スマートスピーカー発売へ

▼自作ロボが自然な声で応答 ヤマハの技術採用、AI向け会話モジュール発売

現在のスマートスピーカー市場は「居間」がメインターゲットになっていますが、今後は家電だけでなく、自動車、そしてロボットなどに広がるでしょう。そうしたときに、「プラットフォーム」として何か1つの音声認識AIが覇権を握るのか、それとも個々に併存していく形になるのか、気になるところです。

apple2.PNG

「攻殻機動隊」ファンとしては、「タチコマ」のような愛らしいAIが普及するとうれしいいのですが......。

【関連記事】
▼「Alexa」絶好調 Amazonが先頭を走る音声認識AI市場、他社はどうする?

▼「Siri」と「AI」の関係を整理する

▼攻殻機動隊「タチコマ」リアル再現、8分の1サイズで発売 音声認識でおしゃべり、"並列化"も

Comment(0)