オルタナティブ・ブログ > 山岡週報 >

メディアプランナーのつぶやき。ITおよび製造業のマーケティングについての考察。ときどきマンガとアニメ。

「会社とはなにか。なんのために働いているのか。誰のために生きているのか」 - 直木賞受賞作『下町ロケット』読了

»

直木賞受賞作『下町ロケット』読了。読みながら一喜一憂した。

企業に務めているからこそ分かる悩み、喜びがあった。また、製造業に関わるメディアにいる人間として、ここに出て来るような技術力のある中小企業は良く取材しているので想像しやすい。しかし、そうでない企業も沢山ある。本書でも、随所でカネの厳しさなどが書かれている。夢と現実が良く描かれている作品であった。

Photo_3 

本書の主人公、下町の製造業の社長を務める佃航平は、自社が開発した技術をめぐって大企業との綱渡りの戦いをする。そんななか、自分の考えと相容れない若手社員との軋轢が生じ、苦悩する様子も描かれる。

「会社とはなにか。なんのために働いているのか。誰のために生きているのか――。
佃が突きつけられているのは、会社経営における、まさに本質的な問題だ。」 (本書より抜粋)

経営者というのは孤独なものだと聞いたことがあるが、そうした悩みは、正直なところまだ自分には本当に理解出来てはいないかもしれない。社長の佃の言動よりも、経理や営業部門の社員の描写に共感を抱く部分が多々あった。なるべく経営視点を持って働きたいと思っているのだが、知らず知らずのうちに少し今の立場に甘えていたのかもしれない。上記の問いをされた際に、果たして自分は、相手の目を見据えて答えられるだろうか。

それにしても、下町のロケット開発の話というから技術に関する話が中心かと思いきや、カネに関する記述がやたら詳しい、というか熱の入っている話だったように思う。銀行の融資による資金繰りや、企業買収、特許関連の知財に関する価値やその戦略などなど。それもそのはず、著者プロフィールを見ると、銀行出身者の方であった。

過去にやっていた仕事をいまの仕事にも活かすという点では、本書の主人公の佃が、研究員時代の知識と功績を活かしていま製造業の経営者をやっているという姿に通じるものがある。このような「過去の仕事が、未来の仕事に繋がる」という話を見聞きするにつけ、一つ一つ現在を積み上げていくのが大事だなと思う次第である。

■宇宙開発関連の記事をピックアップ
さて、自分がいま働いているのはITや製造業に関する「メディア」なので、宇宙開発関連の記事はどれだけあるのだろうとちょっと検索してみた。すぐに下記のキーワード一覧がヒットする。

「宇宙開発」最新記事一覧 - ITmedia Keywords
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/kw/space_development.html

うん、結構あるな。。とりあえず3つほどピックアップしてみる。

・「システムデザイン・マネジメントのススメ:失敗からの脱却――日本の宇宙開発はなぜ成功し続けるのか」 - ITmedia エグゼクティブ 2010年01月27日
http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1001/27/news007.html

ロケットの相次ぐ打ち上げ失敗など、2000年前後の日本の宇宙開発は実に厳しい状況が続いていました。ところが一転、ここ5年間は連戦連勝の成果を収めています。その背景には一体何が隠されているのでしょうか。

・「再検証「ロボット大国・日本」(4):「超小型衛星を日本のお家芸に」~月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(前編)」 - @IT MONOist 2011年08月02日
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1108/02/news001.html

「宇宙開発」というと、国(宇宙航空研究開発機構:JAXA)や大企業だけのものと思っていないだろうか。答えは「ノー」だ。数トンにもなる大型衛星ならともかく、最近の「超小型衛星」と呼ばれる新しいタイプの衛星は大学やベンチャーによるものが多く、既に何機もが宇宙に飛び立っている。その最前線で活躍中の東北大学・吉田和哉教授に、宇宙ロボットの最新状況を聞いた。

・「再検証「ロボット大国・日本」(5):「協力しないかと言われたら『Why not?』ですよ」~月面レースに挑む研究者、東北大・吉田教授(後編)」 - @IT MONOist 2011年08月16日
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1108/16/news004.html

東北大学・吉田和哉教授へのインタビュー【後編】。前回の「超小型衛星」に続き、今回は民間初となる月面無人探査コンテスト「Google Lunar X PRIZE」への挑戦、そして「月面ローバー」の開発について紹介する。

1番目の記事は宇宙開発の歴史を振り返りつつ、システムをマネジメントするということについて述べられている。2番目、3番目は、東日本大震災による原発事故から、日本は本当に「ロボット大国」なのだろうか?というところから始まった連載記事のうちの2つである。ちなみに、2007年には「ロボット関連技術を宇宙開発に JAXAが研究者や産業界に参加を呼びかけ」というニュース記事が、新卒から担当していた@ITに掲載されていた。そこから4年経ったいま、自分が立ち上げに関わった@IT MONOistで、上記のようなロボット×宇宙開発の具体的なインタビュー記事が載ることには少し感慨深いものがある。

実は、自分も、本書の主人公と同じく宇宙開発に携わってみたいと思ったことがある。中学の頃の話だ。よくあるような宇宙への憧れではなく、地球環境保全のためには人類をある程度宇宙に送り出した方がいいと考えていたのだ。中学卒業時のレポートでは、「宇宙基地における食物栽培」をテーマにしたのを今でも覚えている。ただ、そうした研究が自分の生きているうちには然程進展しないだろうという想定をし、飽きっぽい自分の性にも合わなさそうだという結論を出した。後悔はしていないが、未だに「宇宙開発」というキーワードには反応する。

いまの仕事で宇宙開発に直接関わる案件は無いが、近いところに居るのは確かだ。いつか関わる日が来るかもしれないその時に、いま自分が積み上げているものが何かの役に立つのであれば、それは幸せなことだと思う。

Comment(3)