プレミアムモルツの成功から見る、営業、マーケティング、広報の違い
夏も過ぎて、ビールの季節も終わりか、と思うと、クリスマスシーズンや年末年始、忘年会新年会と、なんか理由を付けてお酒を飲むのが飲み助の可愛いところ。暖かい部屋で、冷えたビールも美味いものだ。
最近のビール戦争のトピックスとしては、サントリーのプレミアムモルツの売り上げがめざましい成長をしたことが上げられる。詳しくは、たとえばこのサイトにまとまって書いてある。私の知り合いの女性も、「ビールはプレミアムしか飲まないの。」なんて言ってた。
まず、市場調査をしていて、この「プレミアム」ビール市場は、行けるぞ、と思った(ないしは思い込んだ)。マーケティングの一部の人たちだろう。それを、トップに話し、マーケティング戦略を組んで、推進し始めた。マーケティングはサントリーさんの大得意分野だ。
モンドセレクションも取り、テレビCMでは、「最高の週末」や「プレミアムなうまさ」「プレミアム、いきます」などのキャッチコピーもあたり、谷沢永吉、竹下結子のCMもうまい。だけど、こんなCMはサントリーなら当たり前。他のビール会社のCMとどの程度違いがあるだろう。
商品そのものはどうか。サントリービールは、カールスバーグ直系のピルスナータイプのビールだ。ザーツのホップとカールスバーグの伝統を引くサントリーの酵母はうまく相応生かしているように思える。いわゆる「カールスバーグ・ピルスナー」のゴージャスなやつ、と言えるだろう。深みあるのにさっぱりしている。ちなみに、カールスバーグは世界最古(600年続いている)のビール会社「シュパーテン社」の酵母を使っており、直系である。
いままでのこの「プレミアム」ビールのトップだった「ヱビス」は、じつはビアスタイルが異なる。ヱビスは「ドルトムンダー」と言われる、ラガータイプでは、濃いもので、アロマやホップ感が押さえられているが、しっかりとしたビールだ。ピルスナーに比べると、がぶ飲みするより、ゆっくりとビール本来の味を楽しむものだ。名前のとおり、ドイツのドルトムント近辺で作られるもので、ヱビスは、日本にありながら、ある種、ドルトムンダーらしい、美味しいビールだと思う。
日本人の味覚としては、あっさりさっぱりが喜ばれるので、プレミアムモルツが流行ったのか。そうでもないと思われる。
マーケティングの先見性と努力はあったが、最後に営業の猛烈な努力があったからだと思う。普通なら、プレミアムも置いて欲しいし、普通のモルツも店頭に置いて欲しかっただろうに、とにかく、店舗や飲食店に、普通のモルツを引っ込めても良いから、プレミアムモルツを置いてくれるように、営業努力した。今回は、絶対にサントリーの営業さんたちの努力が報われたのだと思う。
もちろん、営業とマーケティングの戦略の合致、お互いの信頼、集中がこのすばらしい成果を生んだのだと思う。さてでは、広報はどこにいるのか。よく、広報をマーケティングの一部と思っている人にはよくこれを見て欲しい。これが広報の仕事だ。
ここには、宣伝はない。いかにサントリーという企業を理解して貰うか、いかに正確なニュースソースを提供できるか。それが広報の使命である。そして、プレミアムモルツが成功したことを、正しい数値で示している。
ここでは、工場の人について触れなかったが、カールスバーグ・ピルスナーとドルトムンダーの所を読んでいただければ、その重要性は充分伝わるだろう。このように、営業、マーケティング、広報がそれぞれ求められる仕事をしっかり行い、お互いに信頼し、徹底的に進めていくことこそ、成功に向かうための第一の鍵である。
私信:小林麦酒君、間違ってないよね。ドイツ系ビールのことなら、小林君のホームページを見て下さい。