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IT組織はビジネスの重要パートナーとしてITによる価値提供できる組織へ

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ガートナージャパンは2025年2月12日、IT組織がビジネスにおける重要なパートナーとしてITによる価値を提供できる組織へ変革することが急務であると提言しました。

Gartner、IT組織はビジネスの重要パートナーとしてITによる価値を提供できる組織への変革が急務であると提言

ビジネス部門のリーダーは、業務アプリケーションとデータ活用を通じて、単なる効率化や最適化を超えた成果を求めています。その一方で、ノーコード/ローコード開発プラットフォームの進化やSaaSの普及により、ビジネス部門主導での業務改革が一般化しており、IT部門の役割は変化しています。

このような状況の中で、IT部門の存在意義や価値の証明が難しくなり、多くのITリーダーが「ITでビジネスに貢献したいが、良い方法が分からない」といった課題を抱えています。Gartnerが2024年9月に実施した調査では、「経営層から十分に信頼されている」と自己評価したIT部門の割合は13.3%、「業務アプリケーション利用者から信頼されている」と答えた割合は9.7%にとどまりました。

開発標準の刷新が鍵:2028年までの課題

Gartnerのシニアディレクターアナリスト、一志達也氏は、

日本企業の人材不足は量的・質的に深刻化し、生産性変革を阻んでいます。アプリケーションとソフトウェア・エンジニアリングのリーダーは、最新技術の進化に遅れず、既存システムを刷新しながら、ビジネスの変化や成長に柔軟に対応することが求められます

と指摘しています。

Gartnerの2025年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイによると、76%の企業が2025年までにローコード/ノーコード開発プラットフォームを導入予定と回答しています。また、2024年6月に実施した別の調査では、ソフトウェア開発における生成AIの本格導入が進んでいることが明らかになりました。

しかし、Gartnerのディレクターアナリスト、関谷和愛氏は

多くの大企業では、革新的な開発技術の真価を発揮させるための開発標準の刷新が進んでいません。生産性向上の恩恵を最大限に享受するには、ツール導入だけでなく、開発プロセスや規約、メトリクスなどの開発標準を抜本的に見直す必要があります

と述べています。

「2025年の崖」克服に向けたアプリケーション刷新の課題

日本企業の多くは、過度なカスタマイズによる技術的負債を抱えたレガシー・アプリケーションの刷新に取り組んでいます。Fit to Standardのアプローチを採用し、標準機能を活かした導入を進める企業も増えていますが、エンドユーザーの要望により形骸化するケースも少なくありません。

Gartnerのバイスプレジデントアナリスト、本好宏次氏は、

Fit to Standardを適切に実践するには、ビジネスの差別化領域にカスタマイズを絞り込むことが重要です。しかし、実際に経営目線で『記録システム』と『差別化システム』を明確に峻別できる企業は限られます

アプリケーションを刷新すれば技術的負債がなくなるわけではなく、ビジネス戦略と連動しなければ新たな負債を抱える可能性が高い。Gartnerのペース・レイヤ・アプリケーション戦略を活用し、Fit to Standardの対象を記録システム中心に絞り込むこと、プロジェクトスコープを適切にコントロールし、品質・コスト・納期(QCD)を担保することが重要です

と述べています。

今後の展望

Gartnerの分析によれば、2028年にかけてビジネス戦略と密接に連動したパッケージ・アプリケーションの刷新を進め、技術的負債を低減できる日本企業は20%にとどまると予測しています。今後、日本企業が競争力を維持するためには、IT部門と経営層が連携し、開発標準の刷新、技術の適応、戦略的なアプリケーション投資を推進する必要があります。

開発標準の刷新を先送りすることで、新たな技術の恩恵を十分に享受できず、結果としてビジネス需要に対応できないリスクが高まります。企業は、IT部門を単なるシステム管理部門としてではなく、ビジネスの成長を支える戦略的パートナーとして位置づけ、積極的なIT投資を行うことが不可欠です。

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